異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

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冒険者ギルド編 ~悪魔茸の脅威~

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「おい、お前の仲間はいたか?」

「この辺りのはずだ、遠くには行かないはずだから」

「ラビ、周囲の警戒頼む」
「ああ、任せておいてくれ。・・・それより、あまり長居はしない方が良さそうだ」



採取隊、残り2人を捜索しながら撤退準備。
34階層へと戻る階段の場所はわかっている。早くそちらへ移動したいが、まだ生きているだろう残2人を回収する必要がある。…これ以上犠牲を増やすのはゴメンだ。

途中、1人を回収した。あと1人が見つからない。先に上階へと抜ける可能性はあるだろうか。



「ゼノ、時間切れだ。がこちらに近づき出してる」

「・・・仕方ねえな、撤退する」

「そんな!何があったか知りませんが、マイクを置いていくなんて!おい、お前もなんとか言えよ」
「・・・」

「教えてやれ、が近付いてるのか」



俺の言葉に、ボソボソと仲間に真実を告げる。
もう1人も事情は知っているのか、分かりやすいほど顔色を無くす。



「そんな、まさか、ジョイドが」
「見たいなら見てみろよ。俺はもう見たくない」

「悠長な事を言っている暇はない。あいつ1人ならまだしも、他を呼ばれたら為す術はない。ラビ、行けるか」

「大丈夫、階段はすぐだ。早く行ってくれ、僕は殿を引き受けるから」

「いいのか」

「イザとなったら抜かしてでも逃げるよ」

「わかった、おい付いてこい。急ぐぞ」



*******************



32階層まで上がった。
だが、その先の階段の前に、奴らが、いる。

紫色のキノコ。その周囲を狼型の魔物が2体。そして、ふらりふらりと揺れる革鎧の男が1人と、採取隊の女が1人。
魔物も、人も。どう見ても生きてはいない。



「万事休す、か・・・」

「この人達だけでも逃がせるかな?そうすればこっちも動けるし、一気に引き離せる」

「アレをこっちに寄せて、先に逃がして挟み打つか」

「それしかないね」

「逃がして、くれるのか」
「いいのか、それで」

「むしろ引き止めてアンタらが殺られでもしたら、向こうに仲間が増えちまうだろ。なら逃がした方がこっちにとってはいい。魔物避けを忘れるなよ。どの程度効くかわからんが」



2人を逃がすのは俺が、引き寄せるのをラビが。
さっきから囮ばかりやっているラビ。…何か考えがあるんだろうが、すこし犠牲的になりすぎやしないか?

とはいえ、ここで追及する時間はない。
もし今後機会があったら問い質す事にするか。

ラビが先に弓で攻撃。奴らを引き付ける。
その隙に階段へ走り、採取隊の2人を上がらせる。



「行け!もし騎士に会ったら助けを求めろ!」

「すまない、先に行く!」
「もし騎士に会ったら伝える!無事で!」

「さて、こっちもやるか。ラビだけに任せる訳にもいかねえな」



振り返れば、階段へ逃げたこちらに気付いてキノコと生ける屍リビングデッドの2人がこちらへ来る。
狼型の魔物はラビの方にじゃれついているようだ。



「・・・参ったなこりゃ。と殺り合うにゃ命がいくつあっても足りねえよ」



エンジュからもらった聖水を剣にかける。残った雫を奴らの方へ振りかければ、歩みが止まる。…お?効き目、ありそうだな。さすがはタロットワークだよ。

キノコを注視しつつ、動きの鈍い2人を相手に。さすがに冒険者だったものは斧を振り回してくる。もう1人は採取隊だったからなのか、ふらりふらりと動くだけ。
…それでもかすり傷でももらおうものなら、どうなるかわからない。
隙を見て、女の方は首を落とせば動かなくなる、が。さすがに後味が悪い。もう1人も仕留めたいが、キノコが邪魔をする。

どれだけ睨み合っていたのか、ふいにキノコが凍りつく。



「なんだあ!?」

「っ、引け!」



掛けられた声を認識した瞬間、頭で考えるよりも先に体が動いた。、と直感的に判断。
その次の瞬間、衝撃波と呼ぶべき魔法刃が生ける屍リビングデッドへと飛んだ。はね飛ばされた奴に近づき、首を落とす。

ちゃりん、と冒険者証タグが転がった。



「お見事」

「援護があったからだ、礼を言う」

「いや、君の剣技が優れていたからだよ。瞬時に引いてくれたしね。オルガ、悪魔茸デビルマタンゴを。グランツは奥にいる人を助けに行ってくれ」

「了解っ」
「了解」



俺の横をスっと通り過ぎていく後姿。
ああ、近衛騎士だな、あいつらも助かったか。ラビも助かるだろう。

どっと疲れが出る。なんとか堪え、助けてくれた声の主を確認。
…おい、嘘だろ。近衛騎士副団長自ら?



「君は・・・冒険者、じゃないね?見覚えがある」

「はっ、王国騎士団第3中隊第2小隊小隊長、ケリー・クーアンです。現在はレディ・タロットワークの要請に従い、任務中です」

「なるほど。君『タロットワークの騎士』か。エンジュ様は一緒ではないのかい?女性2人と中に入っていたけれど」

「私は別働隊です」

「なるほど、君は最下層から来たわけじゃない、か。の火種を消しに来たのかな」

「ここまで来る間に、遭遇しましたか」

「ああ。・・・冒険者でもないを2体、ね。見たところ、ここにも2体か。あと何人いるか知っているかい?」

「先程2人逃がしましたが、それとは別に2人ですか?」

「ああうん、そうだね、別だよ。彼等と会ったから急行したんだ。彼等については他の騎士が保護し、話を聞いている。でもここに君達がいる、という事しか話さなくてね」

「・・・そうですか。彼等の話を全てだとするとあと2体います。上でないとすると、下にいる恐れが」

「その様だね。まあ下からは『獅子王』がエンジュ様と上がってくるだろうから、話は聞けるかもしれないね。・・・と、話をすれば、ほら」



********************



「あん?ありゃカイナスか?」



すとん、と私を降ろす『獅子王』。
併走して来たキャズとディーナも少し辛そうだ。

回復持続飴キャンディスを差し出し、食べさせる。私は魔力回復持続飴マナ・キャンディスを。
さっきまで護法剣セイクリッドセイバー出てたから割りと魔力が減ってる。…放っておけば回復するけど、一応ね。

『獅子王』にも食べさせていると、シオンにケリーが近付いて来た。ケリーも消耗した顔。



「ご苦労様、ケリー。大丈夫?」

「さすがに疲れましたね、悪魔茸デビルマタンゴは覚悟してましたが、まさか生ける屍リビングデッドとは思ってませんでしたよ」

「そちらもご苦労様、副長さん。隠し部屋の事を聞いて入ってきてくれたのかしら」



少し先からグランツさんがもう1人伴って歩いてくる。
シオンの後ろには、さっき会ったリューゼさんも。
きっと報告して、3人で入って来てくれたんだろうな。



「はい、そうです。隠し部屋の方はこちらで把握し、封鎖しました。破壊とまでは行きませんが、入らないようにと魔法でロックしてきました。
その後、入り口ホールでこちらから逃げてきた人がいましたので。最速で降りてきました」

「かなり、早かったのではない?」

「そうですね、討伐よりも先へ進むことを重視してきましたので」

「おいカイナス、あそこに転がってるのでか?」
「いや話によるともう1体─────」



その時、上からがさり、と音がした。
私の真横、そこにザシャ、と何かが降りる。

はい!来ました!見ちゃいけないけど見ないと始まらないやつPart2!!!

Part1?そりゃさっきの蜥蜴さんですよ!



「っ!」
「エンジュ様!」

「いやぁっ!」
「っ!!!」
「っ、くそ!」



全員こっち見てるーーー!!!
ヤバいやついるーーー!!!

横を見た瞬間、目の前に腕が振り上がり──────



「Gwyoooooo!!!」

「えっ?あれ?」



ヤバい、やられ─────と思った私の視界に、が目に入る。
私の護法剣セイクリッドセイバーの黒バージョンの様なものが、幾本も現れ、生きた屍リビングデッドを中空へと縫い止めていた。



「・・・うわ、エグっ」

「エンジュ、エンジュ様!?無事なの!?っていうか何したのよあんた!」

「違う違う違う私じゃないって!」

「エンジュ様、その腕輪ブレスレット、光ってませんか?」



またも問い詰めるキャズ。しかしこれは私じゃない。そんな時間も考えもなかったし。否定していれば、ディーナが腕輪が光っていると指摘してきた。

左腕。付けていた魔法具ガードブレスが光っている。
…あ、なるほど、これか。

前に付けていたものとは別の物で、今回はセバスが『渾身の作です』と渡してきたものだ。
また危ないものを持たせて…これ人間相手でもこんな感じに迎撃するの?過剰防衛じゃないの?

空に縫い止められた生ける屍リビングデッドは、シオンが首を落として焼いている。カラリ、と足元に冒険者証タグが転がる。
…冒険者さん、だったか。これはキャズに渡すべきかな…

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