異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

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近衛騎士団編 ~予兆~

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「そういえば、空を飛べる魔法ってないの?」

「また唐突に来ましたねエンジュ様」



各地で増えた魔物の被害。
討伐隊を組むべく、魔術研究所からも有志の魔術師を派遣する為、希望者の選抜をしている。

ゼクスさんに頼まれた後、各塔の管理者宛に通達をした所、思っていたよりもやる気の返事が次々と届いた。
各塔で希望者を募り、まとめて情報をもらっている。

そこから私とイスト君で内容を確認し、誰と誰を組ませて…など決めている最中にふと思った。

各塔の希望者は、かなり素養が高い魔術師が多く、得意な魔法や持っている属性などが詳しく記された報告書が出されている。
イスト君曰く『自分アピールですね、こういう時でもなければ他の塔に自分の能力を公開しませんし。魔術師は自分の力試しをする場があまりないですから、こういう時に張り切るんですよ』との事。
いっそ、騎士団みたいに順位戦…とは言わないが、自分の力試しのための場を設けるのもありではなかろうか。

そんな中、ふと思った。
飛べる魔法使える人っていないのか?と。



「だって、魔女っ子といえばホウキで空飛ぶでしょ?」

「・・・すみません、エンジュ様の頭の中で何が起こっているのか僕には分かりませんが、知っている限りでは飛んでる人は見ません」

「イスト君、試した事ある?」

「さすがにないですが・・・あ、キリが昔挑戦していたような」

「えっ、飛べる?」

「いえ、何か補助がないと・・・と言っていた気がします」



うーん、物語とかだと、ビューンと飛んでるイメージ。
 某龍の珠の漫画だと、自分で飛んでるわよね?でも有名なアニメ映画のお届け物屋さんの子はホウキで空飛んでたし。

やっぱりホウキ?ホウキがないとダメ?
ロッドとかで代用できないかしら?

イスト君と話していたが、それ以上の代案は出ず。
各塔の希望者の報告書を見ても、それらしい記述はなかった。タロットワーク塔にいなくても、他の塔でいたりしそうだけどねえ。



********************



「・・・という事があってね、セバス」

「・・・なるほど、かしこまりました。
つまりエンジュ様は空を飛んでみたい、と」

「さすがセバス、言わなくても通じるわね」

「エンジュ様に慣れてきましたよね私達」
「もう2年はお近くにいますからね」



そこで諦めたように言わないでください、2人共。
ターニャもライラも、もう私が言う事にあまり驚きもせず、さくっと受け止める空気になってきている。

『そこはもうエンジュ様ですから』

という一言でまとめるのはやめて欲しい。



「ネイサムが残した魔法書とかにないかしら、記述」

「ない・・・とは言いきれませんね。
王配ネイサムはエンジュ様と同様、異世界から来た人です。エンジュ様が気にしたように、空を飛べないか?と思ってもおかしくありませんし」

「私としてはホウキじゃなくても、ロッドとかで行けるんじゃないかと」

「御用意致します」

「ん?ホウキを?ロッドを?」

「もちろん両方です」



ターニャ達に合図をするセバス。
2人とも別の方向に散ったということは、取りに行ったんだろうな。
私はセバスに促され、庭へ出ることに。

庭へ出て少し経つと、ターニャとライラがそれぞれホウキとロッドを持ってきた。何そのロッド。立派過ぎない?



「お待たせしましたぁ」

「・・・どこから持ってきたのそのロッド。やたら気合い入ってない?」

「これは当家の武器庫からですよ?」

「なんか凄いものがたくさんありそうな所ね」

「それはもう。タロットワークが集めに集めた様々なものが」
「ターニャが入ると散らかされるのが難点ですね」



どうやら本当に凄いものがたくさんある武器庫。
手に負えないものとかありそう。

ターニャが持ってきたロッドは、120cmくらいはあるだろうか。でもRPGとかでよく見る感じ。
ハリー〇ッターの世界だと短いものを持っているけど、やっぱりこの世界のロッドっていうと長いのかしら。

そこはセバスによれば、使用する人間の好みだそうだ。
携帯には短いものの方が便利だし、魔法の扱いやすさを補助する観点から言えば、初心者は長いものの方が望ましいとか。



「ホウキの代わりに、と仰っていましたので長い物をお持ちしましたが、長すぎますか?」

「いいえ、そう考えるとある程度の長さあった方がいいわよね。・・・縮んだりとかしないわよね?」

「いえ、出来ますよ。熟練者の魔術師ならばできるでしょう。形態変化トランスフォームの魔法を応用すれば可能です」



形態変化トランスフォームとは、いわゆる変装に使ったりする魔法らしい。それ以外にも、応用として今言ったように、装備を変化させる事も可能のようだ。

本人の熟練度、想像力などに左右されるので、あまり使用する者もいない魔法のひとつらしい。
私が使う能力値解析ステータススキャンの魔法と同じ。あの魔法も他でカバー出来ちゃうから、あまり使う人がいないって聞いている。
…私としては使い勝手はいいのだけどね。



「はてさて、できるかどうか・・・」

「どうするおつもりで?」

「え?いや、漫画やアニメでは・・・えーと、映像作品では跨って浮いてたんだけど」



よいしょ、とホウキを受け取り跨る。
気分は魔女っ子さんです。

で、どうしろと言われてもわからないのだが。
ていうかあの赤いリボンの女の子は勝手にふわっと飛んでたよね?

…はい、ここで皆さんお分かりですね?
もちろん、飛べました。そうです、イメージが物を言うのです。
バランス感覚としては、自転車のような感じ。浮いてる感覚はブランコ。一生懸命ペダルを漕ぐ…ようなイメージをすると進む始末。



「わー!凄いですよエンジュ様!」
「まさか本当に飛べるとは」

「流石はエンジュ様です」

「自分でもいけると思ってなかった・・・けど、楽しいかも」



ふよふよふよ、と低速で飛び、降りる。

ターニャやライラもホウキに跨り試すが、サクッと飛べはしなかった。やっぱり漫画やアニメの力は偉大。



「ではこちらもお試しください、エンジュ様」

ロッド・・・だと、跨るより横乗りの方が良さそうよね」



何かの漫画で横乗りしてた魔女っ子さんがいたっけ。
その方が見栄えはいいわよね…できると今後使えそうだし。
さすがに街中かっ飛ばすことはなくても、外で逃げるのに役立ちそう。私が走るよりは早そうだし。
車の免許は持ってて、原付の運転もしていたし、体感では40キロくらいの速さなら耐えられそう。

漫画やアニメだと、周囲に風の結界張って安全確保してたわよね?練習すれば60キロや80キロは頑張れるかな?高速道路だと思えば!
…ただ、高さに耐えられるかどうかよね。

なんて事を考えながらロッドに横乗りするイメージ。
ふわり、と浮きました。…何でもできるなこの世界。自重しないとやらかすだけだわ、これ。

浮いてセバスと目線を合わせるくらいの高さに。
こちらもバランス感覚的には自転車。
…もしかして、自転車に乗れればこれできるのかも。こちらの世界で自転車って見ないわよね?



「驚きですね、こんなにすんなりと」

「セバス、自転車って知ってる?」

「・・・じてん、しゃ、ですか?三輪の物は街で見た事もありますが」

「二輪の物はない?」

「二輪ですか?・・・そうですね、昔サーカス団の演し物で見た事がある気がしますが、街中にはないですね。それが何か」

「この浮いてる感覚、バランスの取り方がその二輪の自転車に近いのよ。だから、乗りこなせれば同じように飛べるかなと」

「・・・なるほど。エンジュ様はその二輪の自転車にお乗りになった事があるのですね?」

「というか、私にとって手軽な移動手段のひとつだったわ」



ふむふむ、と考え込むセバス。
ターニャやライラはさっきからホウキで飛ぼうとしているが、少し浮いては戻るを繰り返している。

それを見ていたセバスは、私を振り向き宣言した。



「・・・これを習得せずしてタロットワークの執事を名乗れませんね。すぐにも手に入れ、会得してみせます」

「えっ、方法あるんですかセバスチャン様!」
「私達も会得してみせます」

「アッハイ」



セバスの宣言通り、翌日には自転車が3台届いた。
実演として私が邸内の広い廊下を乗り回せば、次の日には皆乗りこなしていた。…身体能力の差よ。

もちろんその数日後には、ホウキで空飛ぶメイドがいたとかいないとか…

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