異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

文字の大きさ
65 / 197
近衛騎士団編 ~予兆~

64

しおりを挟む


「うわうわうわ!すげー美味そう!」
「おいオルガ、先に挨拶だろ」

「オルガ?君は俺に恥をかかせるつもりなのかな?」

「あっすんません副長」



シオンが連れて戻って来たのは、私も会ったことのある2人。



「オルガ・リューゼと申します。改めましてご挨拶させていただきます、レディ・タロットワーク」
「ご無沙汰しております、ジェイク・グランツと申します。同席を光栄に思います、レディ・タロットワーク」

「こちらこそよろしくお願いします、エンジュ・タロットワークです」

「2人は俺の腹心なんです。目をかけている2人で」

「そうなのね。前にも迷宮ダンジョンで会った2人よね?どうぞ掛けて。好きなだけ食べてちょうだい、感想もお願いね」

「はい、いただきます」
「ありがとうございます、レディ」

「それと、食事の間は敬語はなしね?普段通りにどうぞ」

「エンジュ様、そこまでは。お前達、レディに対する礼儀を忘れない程度にな」

「了解です!」
「では少しだけ崩させてもらいますね、エンジュ様」



********************



リューゼさんとグランツさん。

グランツさんは前にアリシアさんの所へ行った時にお世話になったっけ。あの頃…2年半前と比べてさらに男前になった感じ。いいわよね、30手前くらいの男の人って、20代の頃の経験がそのままジワジワと魅力が出てきて格好よくなると思うわけ、個人的に。

リューゼさんは順位戦を見に行った時に見たきり。あの時特に話したりしなかったし、遠目に確認しただけだったものね。
27~8くらいかしら。でも少し少年っぽい感じ。25前後に見えるかな?



「エンジュ様、グランツがお気に召しましたか?」

「あら、バレちゃった?残念、私があと10若かったら口説きにかかってたわ」

「そんな、恐れ多いですね。私は今のエンジュ様も十分お迎えする準備はできますよ?」

「あら素敵、今度お誘いしようかしら?」

「あ、ずるいなグランツ。俺はダメですか?エンジュ様」

「リューゼさんはもっと若作りしないと、私が隣じゃ浮いちゃうわよ」

「あ、俺のことは『オルガ』でいいですよ~エンジュ様。そう呼んでくれたら嬉しいっす」
「では私の事も『ジェイク』でお願いします、エンジュ様」

「あらまあ」
「お前達、俺すら名前で呼んでもらえてないのに、図々しくないか?」

「あら、副長さんにはお相手がいると思って遠慮してたのよ?気遣いがムダって事なの?」

「ではその気遣いは無用ですので、私達のことは名前でお願いします」
「女性に名前で呼ばれるなんて母親以外でいませんから」
「私達には光栄ですよ、エンジュ様」



この人達、揃いも揃って恋人の1人も…いない…だと?
何してるのこの人達?さすがに夜のお相手の1人や2人はいるわよね?



「・・・貴方達、揃いも揃って恋人の1人もいないの?」

「それを言われるとキツイっす」
「出会うきっかけがなくてここまで来てます」

「そう言われると、訓練ばかりさせてる俺の問題にもなるんだが?オルガ、君、寄ってきている女の子たくさんいるだろう」

「それがデートに行くと離れて行っちゃうんですよねえ」

「どこに連れてってるの?」

「え、森とかですかね」

「・・・ピクニック、って事?」

「いや、いい所を見せようと思いまして、軽く魔物討伐とか」

「それはアウトね」
「お前何やってんだよ」
「オルガ?君、デートの意味知ってるよね?」



私、ジェイクさん、シオンの順でダメ出し。
対するオルガ君は『え?なんすか?』と分かっていない。ダメだこれ、キリ君と同じパターンの子だ。1から順に教えていかないとダメな子だ。



「ジェイクさん?貴方オルガ君にデートの前に何かアドバイスしなかったの?」

「いえ、相談に来ましたが、場所は考えてる!と言ってましたので・・・私としてはこの口調が受け入れられなかったのかな、と思っていました」

「ああ、お相手は貴族のお嬢様だったの?」

「えーと、確か子爵令嬢でしたかね」
「オルガ、彼女は伯爵令嬢だよ」

「あっ、そーだったっけ?すいません、俺、平民上がりなんで貴族の家をきちんと覚えてないんですよ。でもタロットワークは別格ですよ!」
「オルガ、そこは威張る所じゃないからな」

「大変ねえ副長さん」
「そうなんですよ・・・これでも良くなった方で。エンジュ様、名前で呼ぶの忘れないでくださいね」



そうか、まだ『副長さん』て呼ばなきゃ、とどこかでストッパーかけてるんだよね。シオン、て呼ぶの少し抵抗がある。『コーネリア』ではない、と線引きしている私としては。

机の上の料理は減っていくが、ナットが更に増やしてくるのであまり減らない。しかしオルガ君もジェイク君もどんどん食べているので頼もしい。
ふとシオンを見ると、シオンもなかなか食べるみたいでサクサクお腹にしまっている。…ジェイクさんは筋肉質なガッチリ系だけど、シオンもオルガ君も細マッチョなのによくそんなに入っていくなあ?



「ああ、すみません。食べ過ぎですかね」

「ううん、皆そんなに食べるものなのね、特にオルガ君は細身なのによく入るわね」

「俺、燃費いいんですよね。いつもはここまで食べないんですけど、これすごく美味しいからいくらでも」
「オルガはこう見えてかなり大食いなんですよ。魔力に変換してる、なんて本人は言ってますけど」

「訓練で規定の量だけ、というのでも足りるようにしてはいますが、待機中の時は割と食べますね。騎士団の皆がそうかもしれません」

「なるほどね。・・・デートの時はセーブした?」

「してません!」
「それもだな」

「まあ今後の注意点は見えてきたわね。・・・ジェイクさんは?見る限り女に困らなさそうに見えるけど」

「お褒め頂き恐縮です、エンジュ様。しかしもう30の大台に来ましたからね、若い令嬢はなかなか」

「近寄ってこない訳ではないわよね?」

「まあ、そうですが」
「もったいないよなあ、ジェイク。この間の人なんか凄い良さそうな感じじゃなかったか?」



オルガ君曰く、『すごくセクシーでいい女』だったそうで。なにそれすごく聞きたい、と思った私。
シオンは顛末を知っているのか、笑って料理を食べていた。



「貴方は見た事あるの?シオン」

「ええ、こちらにも挨拶に来ましたので」

「えっ、副長にも会いに来たんですか?」

「ああ、君のだと言ってね。これは上手くかわさないと危ないな、と思ったよ」
「え、なんすかそれ。ヤバい女だったんですか?」

「・・・お相手の女性は未亡人、だったんですが。かなり手強い方でして」



どうやら、ジェイクさんが捕まりそうになったのは、伴侶の男性に先立たれた女性だったらしい。元は平民の高級娼婦だった方で、伴侶とした方は伯爵家のご年配の男性。
けれど正式な婚姻を結んでいたので、現在は『伯爵夫人』ではあるようだ。

割とこういった関係は多くて、『高級娼婦』というのも需要はある。国王陛下自らが、王妃陛下の選んだ高級娼婦を寝台に呼んでいるくらいなのだから。
そこには『貴族の既婚者同士で不倫するくらいなら、高級娼婦で性欲を発散させる方がまだマシ』という考えがある。
この世界は割とそこの性生活については緩めの考え方で、夜会時に隠れて愛し合う、なんて事もある事らしい。

さすがに王宮主催の夜会ではないが、貴族同士の夜会ともなれば、そういったもある事のようで、愛人と正妻がバチバチ!なんて事もあるそうだ。
それだけではなく、跡継ぎができない、という悩みもその辺りで解決を図る…なんていう事もあるそうで。

ちなみに、団長さんはキャロルさんという愛人がいるが、彼女は高級娼婦ではなく、下級貴族のお嬢様だ。
とある夜会で見初め、手を付けてしまったらしいのだが、そこの所は詳しく聞いたわけではないのでわからない。
この事についてはアナスタシアが全面的に認めているので、軋轢は起きていない。



「ちょっと恐怖を感じましたので、穏便にお引き取り頂きました」

「お疲れ様です」

「エンジュ様、お知り合いで素敵な女性はいませんか?」
「あっ、俺も紹介してくださいエンジュ様!」

「えっ?そんなことしなくても順位戦?で見かけた可愛い子にでもアタックすればいいんじゃなくて?」

「あそこに来る令嬢は若くて気が引けます」
「俺としては平民だと楽なんですよねえ」

「シオン?アントン子爵令嬢を狙ってるのはこの2人ではないの?」

「あ、それは向こうに置いてきてますよ?じゃないと話が進みませんからね」



オルガ君もジェイクさんもアントン子爵令嬢には目を向けていなかった。年齢を気にするのかしら?

オルガ君はアントン子爵令嬢のお友達に追いかけられているようだが、なんか性格が合わないと言って逃げている。
…ん?キャズとかいいんじゃない?歳下だけど躾けてくれそう。キャズが。



「オルガ君?歳下は好き?」

「え、誰かいますか」

「ギルドの受付嬢なんだけど。見たことある?」

「あー!あの美人ですか?ちょっと勝気そうな」

「あの子で良ければ紹介するわよ?強い方だし、周辺の魔物討伐とかも一緒に行ってくれると思うわ。1度一緒に行ってみたら?案外気が合うかも」

「いいっすねー!俺、一緒に戦える子とか考えた事なかったけどそういうのもいいかも」
「確かに、オルガには合いそうですね」

「ジェイクさんには・・・大人しめな子がいいのかしら?ちょっと知り合いにでも聞いてあげるわ、いい子がいるかもしれないし」
「エンジュ様?ちなみにどなたに聞く予定で」

「え?王妃様と王太子妃様」

「え?」
「そんな所に繋がりがあるんですか?」

「私、お2人の専属薬師もしてるから。とはいえ基本的には王宮内に侍医がいるからそこまでじゃないけど。あの2人ならいい子を選んでくれそうだし。冒険者でもいいなら、キャズに聞いてあげる」



とても喜んでいる2人。
こんな所で女性を紹介する事になるとは。
しかしキャズにいい人を紹介する、と言っていたのでこれで約束は守れそうだ。オルガ君じゃなくてジェイクさんがいいと言うかもしれないし、オルガ君が別の冒険者の子を見初める事もあるかもしれない。

しおりを挟む
感想 537

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...