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第二章
彼の演技はどこまで?②
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翌日、土曜日。今日は、三条さんと私の両親に挨拶をしに行く日だ。
私の実家は、都心から電車で一時間半ほどのベッドタウンにある、住宅街の中の一軒家だ。
父母との約束の時間は午前十一時。三条さんに伝えると、車の方が早く着きそうだからと言われ、三条さんの運転で向かうことになった。
十時頃に家を出れば、充分間に合うということで、今日は遅めに朝ごはんを食べようということになっている。
しかし、私がベッドから出たのは午前七時。しかも、一睡も寝られなかった。
昨夜は夕食後、いつも通りに皿洗いをし、三条さんの後にお風呂をいただいた。そのままいつも通りにお風呂を洗って部屋に戻ったのだけれど、頭の中は三条さんのことでいっぱいだった。
『可愛いな、杷留』
夕飯前のあの一場面が、頭から離れなかったのだ。
頬に感じた大きな手の温かな感触。ストレートな言葉に、唐突な名前呼び。それになにより、あの甘い空気。
彼は練習だと言ったけれど、思い出すだけで頬が火照り、思考がそればっかりになってしまう。
だったら早く寝ようと早々に布団に潜ったのだが、それで一週間前の、あの朝のことを思い出してしまった。
あの朝。おそらく夜の間に彼に抱かれたのだろう、朝。私は、この部屋に、三条さんと互いに産まれたままの姿でいたのだ。
三条さんが普通にしてくれているおかげで、すっかり頭の隅に追いやることのできていた記憶が、ここにきて怒涛のように思い出されてしまう。それなのに、あの夜のことだけは、未だにすっぽりと頭から抜けてしまったままだ。
『可愛いな』
彼のあの甘い響きを想像したら、あの夜のことを思い出せるかもしれない。
そう思って必死にあの日のことを思い出そうとしたけれど、今更思い出したところで結婚してしまったのだから意味はないと、すぐにやめた。
ため息を零し、目をつむった。
だけど、一度考え始めてしまった三条さんとのあの夜の様子が脳内にちらついて、一人で勝手に恥ずかしくなっては眠れなくなってしまう。
それで、気がついたら、日が昇っていた。
父母に結婚の報告をしに行く。そんな日に、一睡もしていないなんて。
そう思ったけれど、今寝たら確実に寝坊をしてしまうだろう。
せっかくだから、朝の準備に時間をかけてみよう。
そう思って、私は体を起こした。
***
「早苗、起きているか?」
それから、おおよそ一時間後。部屋のノック音と共に、三条さんの声が聞こえた。
「はい、起きてます」
そう言い、扉を開ける。
すらりとした細身のノータックパンツ、白いシャツにグレーのニットを合わせた私服姿の三条さんがいた。
彼は、私の姿を見下ろし、目を見張る。
「あの……、やっぱり、変ですかね?」
固まってしまった彼に、思わずそう小声で訊いてしまった。
いつもはぱぱっと済ませてしまうメイクだが、今日は時間をかけたナチュラル風メイク。髪型もネットで調べて、できそうなものを色々試しながら後方でまとめ髪にしてみた。
服装は、あの水漏れでも無事だった、水色のミディアム丈ワンピースだ。首元はボウタイをリボンのように結ぶデザインで、シフォン素材のふわっと軽い感じが気に入っている。
仕事に来ていくには少しカジュアルすぎて、なかなか着る機会のなかったものだ。
お洒落を心がけたけれど、これから行くのは自分の実家だ。気合を入れ過ぎてしまっただろうか。
三条さんが何も言わないので、不安になる。
『そんなことをする暇があるのなら、少しでも寝ろ』
心の中で、三条さんが言う。
だけど、目の前の現実の彼は、ふっと優しく口角を上げて、そっと口を開いた。
「やっぱり可愛いな、杷留」
「え……」
彼の言葉に、思考が一瞬停止した。それから、徐々に頬が熱くなる。
ドクドクと胸を叩く心臓の音が早くなり、動けないでいるとしばらく彼と見つめ合う形になってしまった。
だけど、昨夜のことを思い出した。これは、きっと――。
「また練習ですか? 無駄にドキドキしちゃったじゃないですか」
恥ずかしさをごまかすように、慌ててそう紡ぐ。
だけど、語尾につけようとした『悠互さん』は、とっさには言えなかった。
やっぱり、異性を、しかも会社の上司を名前で呼ぶのは、照れくさいし抵抗がある。
恥ずかしさにうつむいた私の頭に、三条さんはぽすんと大きな手を置いた。
「朝食ができたから呼びに来たんだ。もう、食べられそうだな」
彼はそう言うと、私の頭から手をのけてダイニングへ去ってしまう。私は乗せられていた彼の手の感覚を確かめるように、一度頭を撫でつけた。
え、なんで、頭に手を――?
これも、彼の言う〝練習〟なのだろうか。
私は混乱したまま、だけど気恥ずかしさと収まらない胸の早まりを押さえつけるように、もう一度自分の頭を撫でつける。
ほっと一息ついてから、私はダイニングへ向かった。〝練習〟なら、きっと今日ですぐ終わるはずだ。
ダイニングに行くと、相変わらず美味しそうな朝食が湯気を立ててそこに乗っていた。
今日は、和食だ。白ご飯にわかめのおつゆ。メインは鮭で、豆とひじきの和え物が添えてある。
「今日も美味しそうですね」
そういうと、三条さんは「そうか?」と目線をこちらに投げる。だけど、すぐにふいっと逸らされてしまった。
食事を終えると、私は皿を下げてすぐに洗い始めた。
まだ出発までは時間があったけれど、何もしないでいると、しかも同じ空間に三条さんがいると思うと、どうしてもそわそわして落ち着かなかったのだ。
だけど、皿洗いなどすぐに終わってしまう。最後の皿を洗い終わり、蛇口の水を止めると、ダイニングに座ってタブレットをチェックしていた三条さんがこちらを振り向いた。
「終わったか」
「はい」
答えると、彼は顔で、先ほどまで私の座っていた自分の前の席を指し示す。
もうご飯は終わったのに、なんだろう。そう思いながら、私は手を拭くと、彼の前に腰かけた。
「これを」
三条さんは言いながら、私に赤色の小箱を差し出す。首を傾げていると、彼はその蓋を外した。
「え⁉」
思わず目を見開き、三条さんの顔と見比べる。
そこには、大小ふたつのリング が収められていたのだ。
小さい方には、大きいほうにはない小さなダイヤが埋め込まれている。
だけど、同じように曲線を描いたシルバーのそれは、見紛うことなくペアリングである。
「着けて欲しい。早苗のご両親に会うんだ、一応、夫婦だからな」
「でも……」
私たちはまがいものの夫婦だ。ほとぼりが冷めたら離婚する。それなのに、お揃いのアクセサリーなんて。
「形だけでも。早苗のご両親を安心させるためにも、あったほうがいいだろう。指輪も買えない男が結婚相手だなんて思われたら、しかもそんなやつが職場の上司だと早苗のご両親に知れたら。早苗は、今の仕事にすら苦言を呈されるかもしれない」
「でも、本当にいいんですか?」
「ああ。そんなに高価なものでもないが」
彼はそう言うと、大きい方を取って自分の左手薬指に、なんの躊躇もなく嵌める。
両親への挨拶が終わったら、丁寧に磨いてから返そう。私はそう心に決め、彼の嵌めたものとお揃いのそれを自分の左手薬指に嵌めた。
思ったよりもひんやりと、重い。
私がこれから両親にするのは、みせかけの夫婦の挨拶。
嘘をつくような後ろめたさが急に襲ってきて、気が重くなった。
私の実家は、都心から電車で一時間半ほどのベッドタウンにある、住宅街の中の一軒家だ。
父母との約束の時間は午前十一時。三条さんに伝えると、車の方が早く着きそうだからと言われ、三条さんの運転で向かうことになった。
十時頃に家を出れば、充分間に合うということで、今日は遅めに朝ごはんを食べようということになっている。
しかし、私がベッドから出たのは午前七時。しかも、一睡も寝られなかった。
昨夜は夕食後、いつも通りに皿洗いをし、三条さんの後にお風呂をいただいた。そのままいつも通りにお風呂を洗って部屋に戻ったのだけれど、頭の中は三条さんのことでいっぱいだった。
『可愛いな、杷留』
夕飯前のあの一場面が、頭から離れなかったのだ。
頬に感じた大きな手の温かな感触。ストレートな言葉に、唐突な名前呼び。それになにより、あの甘い空気。
彼は練習だと言ったけれど、思い出すだけで頬が火照り、思考がそればっかりになってしまう。
だったら早く寝ようと早々に布団に潜ったのだが、それで一週間前の、あの朝のことを思い出してしまった。
あの朝。おそらく夜の間に彼に抱かれたのだろう、朝。私は、この部屋に、三条さんと互いに産まれたままの姿でいたのだ。
三条さんが普通にしてくれているおかげで、すっかり頭の隅に追いやることのできていた記憶が、ここにきて怒涛のように思い出されてしまう。それなのに、あの夜のことだけは、未だにすっぽりと頭から抜けてしまったままだ。
『可愛いな』
彼のあの甘い響きを想像したら、あの夜のことを思い出せるかもしれない。
そう思って必死にあの日のことを思い出そうとしたけれど、今更思い出したところで結婚してしまったのだから意味はないと、すぐにやめた。
ため息を零し、目をつむった。
だけど、一度考え始めてしまった三条さんとのあの夜の様子が脳内にちらついて、一人で勝手に恥ずかしくなっては眠れなくなってしまう。
それで、気がついたら、日が昇っていた。
父母に結婚の報告をしに行く。そんな日に、一睡もしていないなんて。
そう思ったけれど、今寝たら確実に寝坊をしてしまうだろう。
せっかくだから、朝の準備に時間をかけてみよう。
そう思って、私は体を起こした。
***
「早苗、起きているか?」
それから、おおよそ一時間後。部屋のノック音と共に、三条さんの声が聞こえた。
「はい、起きてます」
そう言い、扉を開ける。
すらりとした細身のノータックパンツ、白いシャツにグレーのニットを合わせた私服姿の三条さんがいた。
彼は、私の姿を見下ろし、目を見張る。
「あの……、やっぱり、変ですかね?」
固まってしまった彼に、思わずそう小声で訊いてしまった。
いつもはぱぱっと済ませてしまうメイクだが、今日は時間をかけたナチュラル風メイク。髪型もネットで調べて、できそうなものを色々試しながら後方でまとめ髪にしてみた。
服装は、あの水漏れでも無事だった、水色のミディアム丈ワンピースだ。首元はボウタイをリボンのように結ぶデザインで、シフォン素材のふわっと軽い感じが気に入っている。
仕事に来ていくには少しカジュアルすぎて、なかなか着る機会のなかったものだ。
お洒落を心がけたけれど、これから行くのは自分の実家だ。気合を入れ過ぎてしまっただろうか。
三条さんが何も言わないので、不安になる。
『そんなことをする暇があるのなら、少しでも寝ろ』
心の中で、三条さんが言う。
だけど、目の前の現実の彼は、ふっと優しく口角を上げて、そっと口を開いた。
「やっぱり可愛いな、杷留」
「え……」
彼の言葉に、思考が一瞬停止した。それから、徐々に頬が熱くなる。
ドクドクと胸を叩く心臓の音が早くなり、動けないでいるとしばらく彼と見つめ合う形になってしまった。
だけど、昨夜のことを思い出した。これは、きっと――。
「また練習ですか? 無駄にドキドキしちゃったじゃないですか」
恥ずかしさをごまかすように、慌ててそう紡ぐ。
だけど、語尾につけようとした『悠互さん』は、とっさには言えなかった。
やっぱり、異性を、しかも会社の上司を名前で呼ぶのは、照れくさいし抵抗がある。
恥ずかしさにうつむいた私の頭に、三条さんはぽすんと大きな手を置いた。
「朝食ができたから呼びに来たんだ。もう、食べられそうだな」
彼はそう言うと、私の頭から手をのけてダイニングへ去ってしまう。私は乗せられていた彼の手の感覚を確かめるように、一度頭を撫でつけた。
え、なんで、頭に手を――?
これも、彼の言う〝練習〟なのだろうか。
私は混乱したまま、だけど気恥ずかしさと収まらない胸の早まりを押さえつけるように、もう一度自分の頭を撫でつける。
ほっと一息ついてから、私はダイニングへ向かった。〝練習〟なら、きっと今日ですぐ終わるはずだ。
ダイニングに行くと、相変わらず美味しそうな朝食が湯気を立ててそこに乗っていた。
今日は、和食だ。白ご飯にわかめのおつゆ。メインは鮭で、豆とひじきの和え物が添えてある。
「今日も美味しそうですね」
そういうと、三条さんは「そうか?」と目線をこちらに投げる。だけど、すぐにふいっと逸らされてしまった。
食事を終えると、私は皿を下げてすぐに洗い始めた。
まだ出発までは時間があったけれど、何もしないでいると、しかも同じ空間に三条さんがいると思うと、どうしてもそわそわして落ち着かなかったのだ。
だけど、皿洗いなどすぐに終わってしまう。最後の皿を洗い終わり、蛇口の水を止めると、ダイニングに座ってタブレットをチェックしていた三条さんがこちらを振り向いた。
「終わったか」
「はい」
答えると、彼は顔で、先ほどまで私の座っていた自分の前の席を指し示す。
もうご飯は終わったのに、なんだろう。そう思いながら、私は手を拭くと、彼の前に腰かけた。
「これを」
三条さんは言いながら、私に赤色の小箱を差し出す。首を傾げていると、彼はその蓋を外した。
「え⁉」
思わず目を見開き、三条さんの顔と見比べる。
そこには、大小ふたつのリング が収められていたのだ。
小さい方には、大きいほうにはない小さなダイヤが埋め込まれている。
だけど、同じように曲線を描いたシルバーのそれは、見紛うことなくペアリングである。
「着けて欲しい。早苗のご両親に会うんだ、一応、夫婦だからな」
「でも……」
私たちはまがいものの夫婦だ。ほとぼりが冷めたら離婚する。それなのに、お揃いのアクセサリーなんて。
「形だけでも。早苗のご両親を安心させるためにも、あったほうがいいだろう。指輪も買えない男が結婚相手だなんて思われたら、しかもそんなやつが職場の上司だと早苗のご両親に知れたら。早苗は、今の仕事にすら苦言を呈されるかもしれない」
「でも、本当にいいんですか?」
「ああ。そんなに高価なものでもないが」
彼はそう言うと、大きい方を取って自分の左手薬指に、なんの躊躇もなく嵌める。
両親への挨拶が終わったら、丁寧に磨いてから返そう。私はそう心に決め、彼の嵌めたものとお揃いのそれを自分の左手薬指に嵌めた。
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