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第二部
42話…※
しおりを挟む「…ごめん、無理させた。身体平気…?」
上がった息を整えつつ眉を下げ、申し訳なさげに訊ねる櫻井に静香は上気した顔のまま頷く。
「…大丈夫、凄く気持ち良かったので」
そう正直に言うと口元を覆い、「そっか、俺も気持ち良かった」と照れ臭そうに告げてくれた。自身の屹立をそっと引き抜くと、また別の刺激が身体を走りぞわぞわする。彼は手早くタオルケットを自分に被せるとベッドの反対側を向きゴムを外し、ゴミ箱に放り投げる。
静香はフワフワとしたどこか現実味のない心持ちで天井を見上げていた。全身が怠いし喘ぎ過ぎて喉も痛い。少し身体を動かすだけで腰が痛んだが、それらを軽く凌駕する幸福感が全身を包んでいた。多分、自分には一生縁がないと思っていたものがこれほどまで心を満たすものだとは知らなかった。途中、顔から火が出るような言葉を口走り、自分から強請る行為もしてしまった。今も思い返すだけで枕に突っ伏して叫びたくなる。
と、ここで櫻井がいつまで経っても隣に戻って来ないことに気づく。チラリと確認すると彼はまだベッドの反対側に座っていて、何やら云々唸っている。どうしたのかという心配する気持ちと、全部を曝け出した相手の体温を感じられないことへと寂しさからタオルケットに体を包んだままゆっくりと背後に忍び寄る。彼に気づかれることなく、後ろから覗き込んだ静香は思わず「え…」という声を上げてしまう。当然弾かれたような勢いで櫻井がこちらを向いた。ついさっきまでの暴力的なまでの色気は少しばかり鳴りを潜め、情けない顔になっているがそれでも陶酔した独特の雰囲気を纏っている。
何故声を上げたかと言うと、今さっき欲望を放ったはずの櫻井の分身が萎えることなく天を向いていたからだ。確かにほぼ同時に達したはずだが、もしかして2人同時に幻覚でも見ていたのかと馬鹿なことを考えてしまう。達すればこれは萎えると調べたのだが、ネットの情報を鵜呑みにしてはいけなかったのか。
「え…寝たんじゃないの」
「いや寝てませんけど、あの、それ…」
流石にドクドク脈打つそれを直視できず細目で見ながら聞くと、何とも情けない上擦った声が返って来た。
「あー…うん、何か一回だけじゃ収まらなかったみたい…です」
それは所謂。
「…絶倫」
ボソッと呟くと慌てて反論する。
「違うから、偶々だから。というか静香のイッた顔死ぬほどエロくて可愛すぎたのが…いや…俺が悪いな、うん」
死ぬほど恥ずかしいことを言われた気がしたが、反応していたら話が進まないから無視する。目下の課題はそれをどうするか、であろう。そのままでは眠れないはずだ。
「それ…どうするつもりだったんですか」
「…静香が寝た後かシャワー浴びている時にこっそり処理しようと思ってた、まあバレたけど。なのでこれ見なかったことにしてほしっっ!!!」
そこで「もう一回」と迫らないところがらしいというか、いじらしいというか。静香は割と体力はある方なので、あと一回くらいはいけるかもしれない。それに行為中自分は櫻井に頼りきりで、されるがままだった。せめてこれくらいは力になりたい。明日は休みだし一日中ベッドから出られなくても問題は然程ない。しかし静香に無理をさせたがらない櫻井はこちらから申し出ても拒否する可能性が高い。ふむ、どうしようかと考えていたのだが…。
「…あ」
気持ちが先走り、無意識に脈打つそれを右手で触っていた。血管が浮き出ていてビクビクと震えており、グロテスクな見た目をしていたが不思議とそうとは思わなかった。櫻井は目を見開き驚いている。そして、頬に薄っすらと赤みが差し始めていた。
「…ごめんなさい」
「謝る前に手を離して欲しいんだけど?」
「…」
聞こえないフリをして目を逸らす。
「おいこら、聞こえないフリすんな。え、何で離さないの?そんなモノ触らなくていいよ」
「男性は触られると嬉しいと聞いたんですが…」
「いや…本音を言えば触って欲しいけど…そもそも人に触らせるものじゃないし、見た目グロいし抵抗感とかあるだろ?」
「あー、いえ、好きな人のだと思うとそういうの一切ないですね」
サラッと本心を告げると見事にヒットしたらしく、口元を手で覆うと顔を真っ赤にし悶えていた。
「…本当いい加減にしてくれよ…」
何やら怒りを内包した声で呻いている。この隙に、ネットで調べた朧げな知識を元に櫻井の隣に移動すると、それを両手で包んだ。その時の櫻井の驚愕に染まった顔は忘れられない。
「静香さん、何をされているんですか」
「何って、このままだときついですよね、したことないんで下手だと思いますけど、手助けを」
「いや遠慮し…っ…ぁ…」
両手で優しく上下に擦ると櫻井は右手で自分の口を覆い、左手で静香の肩を押している。眉間に皺を寄せ身体がピクピクと揺れており、その反応から不快ではないのは分かった。ド素人が少し触っただけで気持ちよさそうなので、上手い下手関係なく男性はこうされると気持ちいいらしい。
ネットで齧った知識を頼りに抵抗する気力を無くした櫻井の顔を見ないように扱き続け、そろそろかと思ったその瞬間。がし、と凄い力で手首を掴まれ暴発寸前のそれから手を離した。思わず顔を上げると、荒い息を吐き頬を上気させた櫻井と目が合った。その瞳はギラギラと輝いており背筋がゾクリと震えた。同時に身の危険も感じる。あ、マズいと思うがもう遅い。彼は唸る様に言う。
「俺さ、辞めろって言ったよな。無理させたくないからさっさと処理しようと思ったのに…気が変わった。まだ足りない、付き合って」
そのまま静香に噛み付くようにキスをし、押し倒した。
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