片道切符の異世界転移

藍上おかき

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夜の諏訪湖は不気味な雰囲気

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 日が傾き茜色の空は急速に暗くなり、車窓から眺める諏訪湖はそこになにもないような空間だけがあるかのように黒く染まり不気味な雰囲気。

ただ、そこがなにもない空間であることを否定しているのが、水面にうつりこむ町並みの灯り。
 
 時期的なものもあるかもしれないけど、特に10月が過ぎ11月を迎える頃には日が沈むのがホントに早い。

暖房の効いている温かく快適な車内。 一見すると普通の車に違いないけど中はひろびろした八人掛けの明るい客室にあたし一人。

フロントガラスにうつるこのご時世には珍しい女性の運転手。
色白の線の細い栗色の長い髪の美人。


  つい、先程までの凄く楽しかった時間も思い出に変わりはじめ揺れるバスの中。
 
 助手席のすぐ後ろに座り



八人掛けのワゴン車、真後ろの広々とした車内にはあたし一人しかいない。

 フロントガラスの向こう側、バスの前をスルスルと流れる車列、すぐ橫の車窓からは途絶える事のない車列を挟んだその向こう側。

そこになにもなかったかなのように大口を開けているような巨大な空間。

 湖面に反射する街の灯りがなければ不気味な印象しか残らない諏訪湖。

  明るい時間帯なら綺麗な湖面を眺望できるけど、この時間帯は帰宅ラッシュの時間。
 
 神秘的な諏訪湖の眺望も薄汚れた現実の車列が打ち消すと同時、不気味な印象を和らげている。

 ここにくるまでに幾度も信号機による停車があったけど、それでもこのまま順調にいけば一時間もかからずにカゴメ湯のバス停に到達するはずだった。



『こちらFM放送局、道路交通情報をお伝えします! 道路交通情報センターの益田さん!』

 
 『はい、こちら道路交通情報センターの益田です。 現在国道20号線塩尻バイパスより抜ける塩尻方面への入り口からゆっくり流れていますが5キロの渋滞、反対側も塩尻峠からおかやバイパスもゆっくり流れています。

 下諏訪おかやバイパスも順調にながれていますが、こちらは下諏訪駅前より渋滞が発生してます。
『以上道路交通センターの益田でした』



 と、運転手が道路情報を確認するためにラジオをつけた。

 だけどラジオの道路情報を聴いてもあたしにはちんぷんかんぷんで全くわからないのはいうまでもない。

 道路の情報なんてスマホを使えば簡単なのに、わざわざラジオをつける意味がわからない。


『情報センターの益田さん、ありがとうございました。 どちら様も安全運転にはお気をつけて』

 と、一通りの情報を聴いてラジオをオフ。

 ゆっくりゆっくりと流れていた車列。だけどそれはそこで終わる。

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