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2部
108話 夜明けとともに去りぬ
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聖剣は意志を持ち、どれだけ離れていても、所有者の呼び声一つで飛んでくる。
あまりに過剰な力であるため、オクトは平常の戦闘に置いては周囲の被害を考慮し、鉄の剣を使用している。
その彼女が、聖剣を解禁した。すなわち……。
「それほど危険な相手と言うわけか……!」
ナルガの視線の先には、斬撃の余波で抉れた大地と、粉砕された樹木が転がっている。久しぶりに聖剣の力を目の当たりにしたが、たった一振りで甚大な被害が出ていた。
通常の相手ならば、その一撃で粉々になっている。なのに怪物には、一切の傷がついていない。
「そんな馬鹿な、聖剣を使ったんだぞ?」
オクトも驚愕し、目を見開いている。怪物は腹をさすると、意に介さずにハローへの攻撃を再開した。
あくまで狙いは俺だけか、なら!
ハローは二人とエドウィンに目配せし、自身を囮にした作戦にシフトした。攻撃は二人に任せ、ハローは銃を主体に距離を取り、エドウィンに回復してもらいながら戦った。
二人の勇者に、魔王四天王。大層な肩書を持った三人がかりの攻勢を、怪物はたった一人で跳ね返し続ける。ハロー達がいくら攻撃しても、怪物に有効打は与えられない。
このままではじり貧だ、エドの支援があっても、俺が持たない!
「これ、使って!」
少年の声にハローは、咄嗟に右手を突き上げた。
丁度収まる剣の鞘。ハローは怪物の攻撃を避けると、顔面に剣を振り抜いた。
『ぐああっ!?』
剣が兜を貫き、黒い液体を噴出させる。初めて攻撃が通用した。
しかし浅い。ハローはすぐさま追撃をいれるべく、剣を振り下ろしたが、なぜか空振りしてしまった。「えっ?」とハローは刀身を見て、息を呑んだ。
『うぐ……こしゃくな……!』
怪物はよろめき、顔に手を当てた。すると森に、薄明りが差し込んでくる。
夜明けを迎えたようだ。すると怪物は苦しみだし、姿が蒸発していった。
『くそ、ここまでか……だが!!! つぎはころしてやる!!!! おまえと、そいつ!!!! りょうほうころしておれは!!! このよからきえなければならないんだ!!!』
怪物は消え去り、エドウィン達は安堵の声を漏らした。かつてない敵だった、過去を振り返っても、あれほどの化け物は記憶にない。
「な、なんだったんだあれは……? お前ら、全員無事か?」
「ええ、私達は。ですが先代が」
「俺は問題ない。その子の方が心配だ」
剣を納め、ハローは追われていた少年を見やった。
服はボロボロで、靴も壊れている。全身泥だらけの少年の頬を撫でると、指先が汚れた。
「怪我はないかい?」
「うん……へい……き……」
限界が来たのか、少年は気絶した。ナルガは少年を支え、おんぶした。
「ともあれ、診てやらねばならんな。エドウィン、診療所を開けてくれ」
「へいへい。ったく、なんだってんだよあれは……おいハロー?」
「うん、すぐに行くよ」
剣を握りしめ、ハローは村へ戻った。
聖剣でも傷つかなかったのに、どうしてこんな剣は通用したんだろう。
あまりに過剰な力であるため、オクトは平常の戦闘に置いては周囲の被害を考慮し、鉄の剣を使用している。
その彼女が、聖剣を解禁した。すなわち……。
「それほど危険な相手と言うわけか……!」
ナルガの視線の先には、斬撃の余波で抉れた大地と、粉砕された樹木が転がっている。久しぶりに聖剣の力を目の当たりにしたが、たった一振りで甚大な被害が出ていた。
通常の相手ならば、その一撃で粉々になっている。なのに怪物には、一切の傷がついていない。
「そんな馬鹿な、聖剣を使ったんだぞ?」
オクトも驚愕し、目を見開いている。怪物は腹をさすると、意に介さずにハローへの攻撃を再開した。
あくまで狙いは俺だけか、なら!
ハローは二人とエドウィンに目配せし、自身を囮にした作戦にシフトした。攻撃は二人に任せ、ハローは銃を主体に距離を取り、エドウィンに回復してもらいながら戦った。
二人の勇者に、魔王四天王。大層な肩書を持った三人がかりの攻勢を、怪物はたった一人で跳ね返し続ける。ハロー達がいくら攻撃しても、怪物に有効打は与えられない。
このままではじり貧だ、エドの支援があっても、俺が持たない!
「これ、使って!」
少年の声にハローは、咄嗟に右手を突き上げた。
丁度収まる剣の鞘。ハローは怪物の攻撃を避けると、顔面に剣を振り抜いた。
『ぐああっ!?』
剣が兜を貫き、黒い液体を噴出させる。初めて攻撃が通用した。
しかし浅い。ハローはすぐさま追撃をいれるべく、剣を振り下ろしたが、なぜか空振りしてしまった。「えっ?」とハローは刀身を見て、息を呑んだ。
『うぐ……こしゃくな……!』
怪物はよろめき、顔に手を当てた。すると森に、薄明りが差し込んでくる。
夜明けを迎えたようだ。すると怪物は苦しみだし、姿が蒸発していった。
『くそ、ここまでか……だが!!! つぎはころしてやる!!!! おまえと、そいつ!!!! りょうほうころしておれは!!! このよからきえなければならないんだ!!!』
怪物は消え去り、エドウィン達は安堵の声を漏らした。かつてない敵だった、過去を振り返っても、あれほどの化け物は記憶にない。
「な、なんだったんだあれは……? お前ら、全員無事か?」
「ええ、私達は。ですが先代が」
「俺は問題ない。その子の方が心配だ」
剣を納め、ハローは追われていた少年を見やった。
服はボロボロで、靴も壊れている。全身泥だらけの少年の頬を撫でると、指先が汚れた。
「怪我はないかい?」
「うん……へい……き……」
限界が来たのか、少年は気絶した。ナルガは少年を支え、おんぶした。
「ともあれ、診てやらねばならんな。エドウィン、診療所を開けてくれ」
「へいへい。ったく、なんだってんだよあれは……おいハロー?」
「うん、すぐに行くよ」
剣を握りしめ、ハローは村へ戻った。
聖剣でも傷つかなかったのに、どうしてこんな剣は通用したんだろう。
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