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10 暴露
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「福原さんは妹さんと親しいみたいだから、彼女に話してみたら? 家に一人でも理解者がいるとだいぶ気が楽だよ」
「理解して貰えると思えない」
晴也の言葉に、晶は僅かに眉を顰めた。
「ハルさんはたまにそうして悪い方に決めつける、話してみないとわからないだろ?」
「話して悪い方に転べば俺実家に出禁になる」
晶はうーん、と視線を落とす。
「……ちょっと考えさせて、続きはまた夜にでも……ハルさん、福原さん、次はいつ遊びに行こう?」
え、と晴也は戸惑いを隠し切れなかった。
「遊園地は寒いから暖かくなってからにしよう、水族館がいい? こないだの映画館は1月は『巴里のアメリカ人』を演ってるよ」
言いながら晶は、少し離していた手をまた伸ばしてきて、今度は晴也の指をきゅっと掴んだ。晴也はびくりとなって、思わず手を引っ込めた。代わりに顔が熱くなる。
どうしてこいつは、こんなにストレートに気持ちを表現してぶつけてくるんだ。そんな風にされるのが初めての晴也は、どう振る舞えばいいのかわからない。
「困らせてる?」
晶は軽く覗き込んでくる。晴也はちょっと、と答えた。
「あの、嫌な訳じゃない……から」
晴也の小さな声に、晶は蕩ける笑顔になった。何がそんなに嬉しいんだよ。
ふと窓の外に視線を移した時、よく知る顔が通りかかって、晴也と目が合った。何処かで昼を食べていたらしい早川だった。
彼は晴也が誰かと喫茶をしていることに興味を持ったらしく、店に入って来た。そして晴也の向かいに座っていた人物を見て、一瞬顔をこわばらせた。少なくとも晴也にはそう見えた。
晶は晶で、これも一瞬目を細めたが、そこには晴也に見せる、尻尾を振るような喜びのニュアンスは含まれていなかった。何なら舌打ちのひとつでもしかねない空気である。
二人の男は、同時にああ、と言いながら笑顔になる。そして新年の挨拶を交わしたが、ややわざとらしくて晴也には笑えた。
「福原さんがコーヒーを買うとおっしゃるので、じゃあご一緒にと誘いました……ちょうど良かった、新年会の店の話をしてたんです」
晶は営業スマイルを浮かべる。早川もつられたように笑いを見せた。
「そうですか、でも福原は基本的に飲み会NGですから店を知らないのでは……」
そのようでした、と晶は言った。
「木許がはりきって店を探しています、リクエストがありましたら是非」
「ありがとうございます、ただ今はちょっと時間が無いですね、昼の始業時間が」
早川は腕時計を見ながら言った。晴也は残念に思いつつ、コートを羽織りながら立ち上がる。
「じゃあ吉岡さんにお任せしていいですね?」
「はい、帰ったらメールします、日程と希望のメニューと、アレルギーがもしあればお伝えください……人数は10名くらい見ておきましょう」
晶も立ち上がって、てきぱきと言う。晴也は仕事モードで、お世話かけます、と彼に言った。
3人で店を出て、晴也の会社のビルの前で、晶と別れた。エレベーターに乗ると、早川が半笑いで言う。
「吉岡さんって福原のこと隙あらば捕まえてるよな、もしかしてちょっとホモっぽいのかね」
「だったとしても俺あの人好きだしいいです」
晴也は早川の揶揄に対し、白けた気持ちで言い放つ。ガチであいつホモで俺のこと好きみたいだけどな。早川がえっ? と訊き返す。
「言ってるでしょ、あの人は俺を馬鹿にしない」
「別に俺だっておまえを馬鹿にしたことはないぞ」
「それに俺、吉岡さんみたいな綺麗な顔は目の保養で大好きです」
早川は晴也のらしくない放言に、あ然としている。エレベーターが4階に着くと、先に降りてトイレに向かう。その時、コートのポケットの中でスマートフォンが震えた。
「早川さんマジハルさん狙い(ゲイの確信笑)。新年会は絶対ハルさんの隣には座らせてやらねぇww」
晶からのLINEは、冗談なのか本気なのか判断しかねた。しかしあいつらは何故お互いに相手に微妙な反感を抱いてるんだ? 晴也にはさっぱりわからなかった。
「理解して貰えると思えない」
晴也の言葉に、晶は僅かに眉を顰めた。
「ハルさんはたまにそうして悪い方に決めつける、話してみないとわからないだろ?」
「話して悪い方に転べば俺実家に出禁になる」
晶はうーん、と視線を落とす。
「……ちょっと考えさせて、続きはまた夜にでも……ハルさん、福原さん、次はいつ遊びに行こう?」
え、と晴也は戸惑いを隠し切れなかった。
「遊園地は寒いから暖かくなってからにしよう、水族館がいい? こないだの映画館は1月は『巴里のアメリカ人』を演ってるよ」
言いながら晶は、少し離していた手をまた伸ばしてきて、今度は晴也の指をきゅっと掴んだ。晴也はびくりとなって、思わず手を引っ込めた。代わりに顔が熱くなる。
どうしてこいつは、こんなにストレートに気持ちを表現してぶつけてくるんだ。そんな風にされるのが初めての晴也は、どう振る舞えばいいのかわからない。
「困らせてる?」
晶は軽く覗き込んでくる。晴也はちょっと、と答えた。
「あの、嫌な訳じゃない……から」
晴也の小さな声に、晶は蕩ける笑顔になった。何がそんなに嬉しいんだよ。
ふと窓の外に視線を移した時、よく知る顔が通りかかって、晴也と目が合った。何処かで昼を食べていたらしい早川だった。
彼は晴也が誰かと喫茶をしていることに興味を持ったらしく、店に入って来た。そして晴也の向かいに座っていた人物を見て、一瞬顔をこわばらせた。少なくとも晴也にはそう見えた。
晶は晶で、これも一瞬目を細めたが、そこには晴也に見せる、尻尾を振るような喜びのニュアンスは含まれていなかった。何なら舌打ちのひとつでもしかねない空気である。
二人の男は、同時にああ、と言いながら笑顔になる。そして新年の挨拶を交わしたが、ややわざとらしくて晴也には笑えた。
「福原さんがコーヒーを買うとおっしゃるので、じゃあご一緒にと誘いました……ちょうど良かった、新年会の店の話をしてたんです」
晶は営業スマイルを浮かべる。早川もつられたように笑いを見せた。
「そうですか、でも福原は基本的に飲み会NGですから店を知らないのでは……」
そのようでした、と晶は言った。
「木許がはりきって店を探しています、リクエストがありましたら是非」
「ありがとうございます、ただ今はちょっと時間が無いですね、昼の始業時間が」
早川は腕時計を見ながら言った。晴也は残念に思いつつ、コートを羽織りながら立ち上がる。
「じゃあ吉岡さんにお任せしていいですね?」
「はい、帰ったらメールします、日程と希望のメニューと、アレルギーがもしあればお伝えください……人数は10名くらい見ておきましょう」
晶も立ち上がって、てきぱきと言う。晴也は仕事モードで、お世話かけます、と彼に言った。
3人で店を出て、晴也の会社のビルの前で、晶と別れた。エレベーターに乗ると、早川が半笑いで言う。
「吉岡さんって福原のこと隙あらば捕まえてるよな、もしかしてちょっとホモっぽいのかね」
「だったとしても俺あの人好きだしいいです」
晴也は早川の揶揄に対し、白けた気持ちで言い放つ。ガチであいつホモで俺のこと好きみたいだけどな。早川がえっ? と訊き返す。
「言ってるでしょ、あの人は俺を馬鹿にしない」
「別に俺だっておまえを馬鹿にしたことはないぞ」
「それに俺、吉岡さんみたいな綺麗な顔は目の保養で大好きです」
早川は晴也のらしくない放言に、あ然としている。エレベーターが4階に着くと、先に降りてトイレに向かう。その時、コートのポケットの中でスマートフォンが震えた。
「早川さんマジハルさん狙い(ゲイの確信笑)。新年会は絶対ハルさんの隣には座らせてやらねぇww」
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