夜は異世界で舞う

穂祥 舞

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11 風雪

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 晴也は化粧を落として、時間をかけて風呂に入り、少しだけ落ち着きを取り戻した。そして今更、晶と早川をルーチェに放置して出てきたことが心配になった。まさか殴り合いなんかしていないとは思うが。
 やや上の空で肌の手入れをして、洗面所を出ると、ダイニングテーブルに置いていたスマートフォンがぷるっと震える音がした。さっきまで一緒にいた誰かだろうと、髪を拭きながら気を重くして首を伸ばすと、晶からのメッセージが画面に光っていた。

「一回帰ってからそっち行く」
「近くのコイパに着いたら連絡するよん」

 一つ目のメッセージは1時間前、二つ目のメッセージは今来たようだ。晴也は思わずえっ、と言った。

「車がイカれるぞ馬鹿、家でゆっくり寝ろ」

 晴也は返事を打ち込み、送信した。ベランダ側の窓に向かいカーテンを細く開けると、雪は本降りになっている。コインパーキングに車を一晩置いておくのも良くないし、雪の中運転するのは危険だ。
 晴也はスマートフォンを洗面台に立てて髪を乾かしたが、返事は無かった。
 雪になるとやはり寒かった。暖房の温度を上げ、1時をだいぶ過ぎたのを確認して、晶を待つしか仕方がないと諦める。

「もうすぐマンションに着くから」

 メッセージが来た。晴也はそれを見て、自分の胸の内がざわめくのを感じる。彼の顔を見たいけれど、何を言えばいいかわからない。まずは謝るべきだろう。
 ほどなくしてインターフォンが鳴り、びくりとなった。モニターに映るのは確かに晶である。どうぞとしか言えずロックを外すと、彼は遅くにごめん、とひと言言って自動ドアをくぐった。
 金曜の夜だというのに辺りが静かで、再度鳴ったインターフォンがやたらに大きく響いた。晴也は静かに鍵を開けて、ドアを押す。そこには頭や肩に白いものを乗せ、マフラーに半分顔を埋めたくそダンサーが立っていた。冷えた空気が晴也を襲う。

「ありがとう、起きて待っててくれて」

 晶の言葉に答えず、晴也は彼を玄関に入れて、近所迷惑にならないようそっと扉を閉め、鍵を回した。

「これは車に雪が積もるかな」

 晶は肩の雪を軽く払いながら言った。

「……車に良くないだろ」
「ああ、俺のマンションの立駐も屋根無いから一緒だよ」

 晴也はリビングに入ってきた晶が、暖かくてほっとしたような様子なのを見て、自分まで肩の力を抜く。

「……風呂入る? 先に温かいものでも飲む?」

 晶から微妙に距離を取る自分をやや情けなく思いながら訊くと、シャワー浴びて来た、と笑顔で返して来た。

「えっと……紅茶でも淹れるよ」

 晴也はキッチンに入り、やかんに水を入れた。マグカップを2つ出していると、晶がこちらにやって来て、紅茶のティーバッグを出してくれる。
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