32 / 150
毒菫 五
しおりを挟む
アベルは敷き布を握りしめて、下肢を打つアーミナの言葉の鞭に耐えた。
貴族だからと言って苦労がなかったわけではない。だが、今ここでそんなことを言うのは虚しいだけだし、宦官の色子風情に己の家庭の事情を言うのは、アベルの貴顕の身としての誇りがゆるさない。
「本当に、綺麗だ……。遠い国に降るという雪みたいな色だ……」
うっとりとした口調で呟くや、エリスは褥の上に乗ると、そっとアベルの臀部を両手で撫ではじめた。
「あっ……、よ、よせ!」
触れてきた、あたたかな人肌の感触にアベルの背がふるえる。
カイもまた褥のうえで膝を突くようにすると、手にしていた小瓶をかたむける。
「ん……んん」
背にしたたる液体が、小蛇のようにアベルの背でのたうつ。その微妙な感触がこそばゆく、アベルはのけぞった。
「は……ああ……」
背に広がるしたたりは、エリスとアーミナの手によって、腰へ、足へ、手へと、ひろげられていく。
「まずは尻を徹底的に揉むんだ」
カイの冷ややかな声にしたがって、臀部に二人の手が伸びる。
「うっ!」
どちらがどちらの手かわからないが、臀部の左側を強く揉まれ、アベルは四肢をこわばらせた。直観で、それはアーミナの手だと悟る。ぎゃくに、右側の臀部はやさしく揉まれる。だが、いくら丁寧に扱われても、その手はアベルにとっては鞭より過酷なものだった。
「はぁ……ああ……」
油にまみれた四つの手で、本当に文字通り、徹底的に揉まれた。時折り手は背にも伸び、太腿や、足をさすり、両の胸にまで伸びてくる。
「い、いやだ!」
昨夜散々いじられた場所をまた襲われ、アベルは首を振らずにいられない。それを寝台に下りて横から見ていたカイが、冷静に指示を出す。
「胸は今日はいい。尻と……太腿あたりを揉んでやれ」
カイの口調は厳しいものとなっており、感情を失くしたように冷たく響く。
アベルは敷き布を引き裂かんばかりに握りしめ、全身を震わせはじめた。
「おやおや。尻を揉まれて感じはじめたみたいだな。本当に淫乱なお貴族様だな」
アーミナの声が針となって鼓膜に突き刺さる。
「素質があるのはいいことだよ。たまにまったく無い奴隷がいるけれど、そうなると苦しいばかりで、結局最後には自害してしまったじゃないか」
貴族だからと言って苦労がなかったわけではない。だが、今ここでそんなことを言うのは虚しいだけだし、宦官の色子風情に己の家庭の事情を言うのは、アベルの貴顕の身としての誇りがゆるさない。
「本当に、綺麗だ……。遠い国に降るという雪みたいな色だ……」
うっとりとした口調で呟くや、エリスは褥の上に乗ると、そっとアベルの臀部を両手で撫ではじめた。
「あっ……、よ、よせ!」
触れてきた、あたたかな人肌の感触にアベルの背がふるえる。
カイもまた褥のうえで膝を突くようにすると、手にしていた小瓶をかたむける。
「ん……んん」
背にしたたる液体が、小蛇のようにアベルの背でのたうつ。その微妙な感触がこそばゆく、アベルはのけぞった。
「は……ああ……」
背に広がるしたたりは、エリスとアーミナの手によって、腰へ、足へ、手へと、ひろげられていく。
「まずは尻を徹底的に揉むんだ」
カイの冷ややかな声にしたがって、臀部に二人の手が伸びる。
「うっ!」
どちらがどちらの手かわからないが、臀部の左側を強く揉まれ、アベルは四肢をこわばらせた。直観で、それはアーミナの手だと悟る。ぎゃくに、右側の臀部はやさしく揉まれる。だが、いくら丁寧に扱われても、その手はアベルにとっては鞭より過酷なものだった。
「はぁ……ああ……」
油にまみれた四つの手で、本当に文字通り、徹底的に揉まれた。時折り手は背にも伸び、太腿や、足をさすり、両の胸にまで伸びてくる。
「い、いやだ!」
昨夜散々いじられた場所をまた襲われ、アベルは首を振らずにいられない。それを寝台に下りて横から見ていたカイが、冷静に指示を出す。
「胸は今日はいい。尻と……太腿あたりを揉んでやれ」
カイの口調は厳しいものとなっており、感情を失くしたように冷たく響く。
アベルは敷き布を引き裂かんばかりに握りしめ、全身を震わせはじめた。
「おやおや。尻を揉まれて感じはじめたみたいだな。本当に淫乱なお貴族様だな」
アーミナの声が針となって鼓膜に突き刺さる。
「素質があるのはいいことだよ。たまにまったく無い奴隷がいるけれど、そうなると苦しいばかりで、結局最後には自害してしまったじゃないか」
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる