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公開初夜 七
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「おおっ!」
白い楕円形の物体が、アベルの身体から完全に外に出て褥の上に落下した瞬間、広間に喝采がわいた。
アベルは消え入りたさに、褥に顔をうずめたが、腰を下ろすことは尚ゆるされず、そこにエゴイの湿った手を感じた。
「よく出来た。いい子だ。……アベル、可愛いぞ……。おまえが、こんなに可愛かったとは……」
エゴイの声は演技ではなく、真摯なもので、それだけにいっそうアベルはいたたまれない。
「も、もう、止めてくれ……た、たのむから、もう止めて」
だが、エゴイは別のことに気がかかっているようで、返された言葉はアベルの哀訴を完全無視したものだった。
「……おまえ、さっき遂ったのか?」
声にはやや幾分、驚きが込められている。
アベルは今一度、褥に顔をうずめる。
「遂ったんだな。そうか……。本当に、すっかり身体は開花しているのだな。これなら、大丈夫だな」
エゴイの指が布の上から前方をまさぐりはじめ、アベルを怯えさせた。
「あっ、よせ!」
アベルは濡らしているのを知られてたくなく身をよじったが、そうなると、いっそう尻が突き上げられる形になってしまう。
「公爵、この香油をお使いください」
カッサンドラがいつの間にかすぐ間際まで近づいてきており、紅玻璃の小瓶を差し出す。エゴイは当然のごとくそれを受け取り、準備をしだした。
アベルは嗅ぎなれた香油の匂いを感じながら、絶望的な想いで、ただ待つしかない。
(エゴイは……慣れているのだ)
彼は、禁忌の行為だというのに、まったく抵抗もなく、平然と象牙の淫具に油をしたたらせている。使い方も手順も、すでに知り尽くしているようだ。
彼はアベルが思っていた以上に世慣れており、世間知らずのアベルが知らなかった世界についても、とっくに知っていたのだ。
アベルはこれから行われることを想像して、顔を伏せた。今までににも散々恥ずかしい想いをさせられてきたが、異国の宦官や側室にされるのと、同国人の友人にされるのとでは、行為にともなう羞恥感がまるでちがう。
「卵のせいで、すっかりほぐされているな。……いいか、入れるぞ」
言うや、アベルの返事も待たず、エゴイは手を動かし、固い物体の存在をアベルに思い知らせてきた。
「あふぅっ!」
柔かな蕾は、だが、やはり蕾であり、けっして女体に備わる花びらのように完全に開花することはない。
白い楕円形の物体が、アベルの身体から完全に外に出て褥の上に落下した瞬間、広間に喝采がわいた。
アベルは消え入りたさに、褥に顔をうずめたが、腰を下ろすことは尚ゆるされず、そこにエゴイの湿った手を感じた。
「よく出来た。いい子だ。……アベル、可愛いぞ……。おまえが、こんなに可愛かったとは……」
エゴイの声は演技ではなく、真摯なもので、それだけにいっそうアベルはいたたまれない。
「も、もう、止めてくれ……た、たのむから、もう止めて」
だが、エゴイは別のことに気がかかっているようで、返された言葉はアベルの哀訴を完全無視したものだった。
「……おまえ、さっき遂ったのか?」
声にはやや幾分、驚きが込められている。
アベルは今一度、褥に顔をうずめる。
「遂ったんだな。そうか……。本当に、すっかり身体は開花しているのだな。これなら、大丈夫だな」
エゴイの指が布の上から前方をまさぐりはじめ、アベルを怯えさせた。
「あっ、よせ!」
アベルは濡らしているのを知られてたくなく身をよじったが、そうなると、いっそう尻が突き上げられる形になってしまう。
「公爵、この香油をお使いください」
カッサンドラがいつの間にかすぐ間際まで近づいてきており、紅玻璃の小瓶を差し出す。エゴイは当然のごとくそれを受け取り、準備をしだした。
アベルは嗅ぎなれた香油の匂いを感じながら、絶望的な想いで、ただ待つしかない。
(エゴイは……慣れているのだ)
彼は、禁忌の行為だというのに、まったく抵抗もなく、平然と象牙の淫具に油をしたたらせている。使い方も手順も、すでに知り尽くしているようだ。
彼はアベルが思っていた以上に世慣れており、世間知らずのアベルが知らなかった世界についても、とっくに知っていたのだ。
アベルはこれから行われることを想像して、顔を伏せた。今までににも散々恥ずかしい想いをさせられてきたが、異国の宦官や側室にされるのと、同国人の友人にされるのとでは、行為にともなう羞恥感がまるでちがう。
「卵のせいで、すっかりほぐされているな。……いいか、入れるぞ」
言うや、アベルの返事も待たず、エゴイは手を動かし、固い物体の存在をアベルに思い知らせてきた。
「あふぅっ!」
柔かな蕾は、だが、やはり蕾であり、けっして女体に備わる花びらのように完全に開花することはない。
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