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第4部
[67] 4部3章/1 「あいつが俺のものであることには変わりない。」
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【4部3章】
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一つ目。小さなバーが、炎に呑まれた。
深夜二時。営業を終えた静寂の中、裏手の非常口を蹴破って現れた暗殺部隊は、一切の逡巡なく標的を処理した。銃声、三発。悲鳴、わずか一秒。生存者、無し。
二つ目。次に崩されたのは、雑居ビルの一室にある探偵事務所だった。表向きは失踪人調査。だが実態は、仏田家から逃れた異能者たちを匿う、レジスタンスの隠れ家であった。
暗殺者たちは漆黒の装束に身を包み、真昼の喧騒に紛れて突入した。術式による攻撃に、声を上げる暇すら与えられず、若者たちは内臓を焼かれ、もがくこともなく床に崩れ落ちた。
机上には、写真があった。奴隷として売られる予定だった異能者たちの、拘束前の記録。いずれも志朗の命により、「荷」として取り扱われた者たちだ。彼らの現在の所在は不明。
その中に、長い白髪と長耳を持つ青年がいた。静かな眼差し。名は、シキ。
志朗は歯を噛みしめた。冷たく、短く、次の指示を吐き捨てる。
「全拠点を洗え。R号と繋がりがある、それだけで十分だ。街の連中が何を言おうと関係ない。正義を気取る奴が一番たちが悪い。片っ端から潰せ」
都市も、地方も関係なかった。次々に血が流され、痕跡が消されていった。
だがそれでも、シキは見つからなかった。
証言すら得られず、どの拠点にも彼の足跡はなかった。まるで最初から存在しなかったかのように、エルフの痕跡だけが完璧に消されていた。
部隊の兵たちの間に、焦燥が走る。報復と制圧の痕ばかりが増えていく中で、肝心の「最も欲しいもの」はどこにもいない。
志朗は夜ごと部下を集め、苛立ちを露わにした。机を拳で叩き、声を荒らげ、怒りがじわじわと沈殿していく。彼の眼差しには冷静さはない。焦燥とも喪失ともつかぬ、ひび割れた執着が、黒い水のように滲んでいた。
三つ目。誰にも気づかれぬまま、また一人の命が断たれた。舞台は、学習塾を装った小さな部屋。そこは逃亡者を一時的に保護する中継地だった。そのオーナーは、背中から一刺し。音もなく崩れ落ちた。翌朝、部屋に残された血は、清掃業者によって「漏水処理」として綺麗に磨き落とされていた。
四つ目。繁華街の裏通りで、人が忽然と姿を消した。元教員であり、異能の子供を匿っていた人物だった。防犯カメラの映像は削除され、警察の記録には「駆け落ちの可能性」とだけ雑に記されていた。
五つ目。老舗の印刷所の地下にあったR号の連絡拠点が、爆破された。死者、五名。新聞は沈黙を守り、ローカル紙の隅に「老朽化によるガス漏れ火災」の五行記事が載ったのみだった。それを読んで真実に気づく市民はいない。いや、気づいたとしても、誰も口には出さない。
都市の静寂は、仏田家によって買われていた。
大手メディアの幹部には、料亭で封筒が渡される。警察上層部には、名もなき団体から季節の贈答品が届き、黙してそれを受け取る。行政機関には、助言者の肩書きを持つ仏田家の人間が潜り込み、あらゆる動向に睨みを効かせていた。
夜のニュース。キャスターは、柔らかな笑みで締めくくる。
「本日も、特に大きな事件はありませんでした」
報じられなかった死者たちは、名前も顔も、社会から抹消される。それこそが、志朗の操る仏田家の「力」だった。
闇の奥で、志朗は報告を受ける。彼にとってそれは、もはや日常でしかない。
「次は?」
一言問えば、部下は即座に新たなリストを差し出す。ターゲットの顔、住所、交友関係、そして処理後の隠蔽計画まで――全てが、最初から整っていた。
そして、志朗は命じる。
「消せ」
波紋一つ生まぬまま、表の世界は平穏を装い続ける。その裏で、一つ、また一つ、レジスタンスの灯火が、確実に、冷酷に、闇へと呑み込まれていく。
レジスタンスの一員は、その半年を超える激闘を、終わりの見えぬ沈黙の中で過ごしていた。
六件目――古書店、全焼。
七件目――シェアアトリエにて失踪者、二名。
八件目――雑居ビルの階段からの転落死。事故として処理。監視カメラは、なぜか全て故障していた。
いずれも、かつての仲間だった。
その名を、誰も口に出せなくなっていた。
名前を呼べば、世界から消えてしまう。そんな予感が確信へと変わっていくほどに、死は日常へと近づいていたからだ。
彼らは、居場所を転々と変えた。通信は暗号化し、顔を覆い、通りを足早にすり抜ける。
だが、殺し屋たちは誤らなかった。姿を隠すことはできても、逃げ切ることはできなかった。
敵は都市そのものに根を張っていた。名も、姿も持たぬまま、街の機構そのものを喰らい、血を流すたびに音すら立てなかった。
九件目――レジスタンスの内部に、裏切り者がいた。
彼は捕らえられたのち、ただ一言だけを遺した。「家族を人質に取られていた」と。そしてその夜、拳銃自殺。
雨の日も、風の日も、失われていくのは、記録されぬ人々ばかりだった。
ニュースにはならず、新聞にも載らず、葬式もない。都市の騒音に紛れて、名もなき死者たちは吸い込まれていく。
「……また、一人、消えたな」
吸血鬼の男が、独り言のように呟いた。
「これで何件目だ。なんでおかしいと思わないのか。人間が、燃えて、転がって、殺されてるのに、誰も騒がない。……黙って見てるだけかよ」
その言葉に、誰も返さなかった。
沈黙は部屋を満たし、喉を締めつける。正義は語られることを許されず、もはや祈ることしか残されていなかった。
彼らは、ある作戦会議室にいた。テーブルの上には広げられた地図。赤いピンが各地を穿ち、それは全て、かつて仲間たちが潜んでいた拠点だった。今はもう、どこにもいない。
集まった者たちの眼差しに、激情はなかった。怒りは鈍り、悲しみは風化していた。
残るはただ、音もなく降り積もる、静かな覚悟だけだった。
「……また一人、やられたんだね」
青年がゆっくりと黒の帽子を取り、黙礼した。
「まさか、あの避難先まで狙われるとは思わなかったよ。現場には血の跡しかなかった。連れて行かれたのか、それとも……」
狭い室内に、再び沈黙が降りた。
窓は無い。換気扇の低い唸りと、書類が擦れるかすかな音だけが、虚空を切り裂いていた。
「どうする?」
別の男が言った。痩せ細った頬に影を宿し、その眼差しは鋭く、同じ部屋にいる『唯一の人間』を見据えていた。
「このままだと俺たちもそのうち、飼い慣らされる日が来るぞ」
「……そうだねえ。そうなりたい?」
「まさか。そうなる前に、死んでまたやり直すしかないだろ……。それより、『あいつ』の居場所は大丈夫か。もし情報が漏れたら、終わりだぞ」
「……だねえ。少し移ってもらうしかないかな。せっかく自由にしてあげたのに、外に出せないのは可哀想だけど……仕方ない。あの子が、今一番狙われている」
だが、その前に。まず、生き延びること。それだけは決して手放してはならぬ原則だ。
己を殺すことすらも作戦の一部と化した世界で、彼らはなおも抗い続ける。名もなき正義の断片として、都市の闇の中を、なおも生きようとしていた。
◆
志朗は数日間、自宅である高層マンションに戻らなかった。
シキがいないのなら、戻る理由が無かった。
広すぎるリビングには、誰の気配もない。丁寧に磨かれたガラス窓に映るのは、歪んだ自身の影のみ。
無人の空間に背を預けても、返ってくるのは冷たい静寂だけだった。惨めになるだけの場所に、帰る意味はなかった。志朗はオフィスに籠り、終わりのない作業に身を沈めた。
それでも、どうしても帰宅せざるを得ない事情ができたある夜。志朗は一人で自室のドアを開けた。
当然のように、シキの姿は無い。欠けているのは、家具の一つや私物ではない。この部屋の空気から、温度が、意味が、まるごと剥ぎ取られていた。
志朗は窓辺に立ち、夜の街を見下ろす。遠ざかる車列、点滅する信号、街灯に浮かぶ人影。その全ての中に、無意識に彼の面影を探している。
(どこにいる)
何度も部下を動かした。情報を買い、施設を襲い、誰かを沈めもした。どれほどの血が流れたか、もはや正確には思い出せない。
それでも、彼はどこにもいなかった。
怒りが焦燥を蝕み、焦燥が孤独を増幅させる。この感情に名前を与えたとして、受け止めてくれる者などいない。
命令に従い、忠誠を誓う者たちは無数にいるが、そのさらに奥にある剥き出しの痛みには、誰ひとり触れてこなかった。
(会いたい。そう思うのは、愚か者のすることかもしれない。それでも)
胸の奥から、呟くような声が、どうしようもなく溢れてくる。
(早く、会いたい。会いたくてたまらないんだ)
窓に映る自分の顔が、ゆらりと揺れた。
(……せめて……生きていてくれ……)
表情はあまりに弱く、あまりに惨め。それでも志朗は、誰にも見せることのない祈りを都市の夜に落としていた。
◆
座敷の中央。漆塗りの黒い座卓を挟み、志朗と燈雅が向かい合っていた。
息を潜めたような静寂の中、燈雅の隣に控える護衛が、盃に淡く酒を注ぐ。
手際に迷いはない。受け取った燈雅は盃に口を寄せ、吐息とともに淡く揺れる香を含んだ後、あくまで穏やかに言葉を継いだ。
「……最近の志朗は、随分派手にやってるらしいじゃないか。オレは慎重に動けと言った筈だよ。今年は火種を撒くな、控えろとね。覚えてるか?」
志朗は、すぐには答えなかった。
一拍の沈黙。背筋を正し、硬質な声音で応じる。
「R号はうちの資産を次々に奪っている。調整済みの異能個体、魔種との交配体。何年もかけて育ててきた計画が、奴らの手で崩されつつある。被害は、億単位じゃ済まない。……見過ごせる段階はもう過ぎてる。だから制裁が必要だ。徹底的に叩き潰さなければ」
言葉は抑揚なく、それでいて熱を孕んだ弾丸のようだった。
用意された論理。だが混ざる感情の気配を燈雅は逃さない。口元を歪め、小さく苦笑にも似た吐息を漏らす。
「私情を挟むなよ、志朗」
声は静かだった。
静けさは重みを孕み、空気を震わせる。
「お前の執着は分かってる。分かってるから、これまでは黙ってきた。けれど焦りに任せて暴れれば、取り返しのつかないことになる。……それはただの愚か者のすることだ」
志朗の眉が、僅かに動いた。反論の言葉は浮かばない。
現当主の目は、冷たい。深海の底に沈む石のように、どこまでも届かぬ視線をしている。
あの目を向けられた者が戻ってきたことはない。志朗自身、それを知っている。
「朱指を動かしすぎだ。部隊長が直接、オレに進言してきた。お前を通さず、直接オレに、だぞ。……制裁は必要だ。だが、こちらの消耗も看過できない。仏田家は無限ではない。お前に任せていたとはいえ、これは消耗戦だ。持たない」
盃を口に運ぶ燈雅の所作は、先ほどと変わらない。
味わうこともせず淡々と卓へと戻し、一息、淡く応える。
「とはいえ、鬼になってくれたお前には感謝している。R号以外の連中は一斉に尻尾を巻いた。外部への威嚇として十分だった。今後も、対外の調整はお前に任せる。勇み足だけは直すべきだ。抑えの利かない獣は、美しくない。不格好は、仏田家に似合わない」
声音に怒気は無い。柔らかな、どこまでも冷静な口調。
だがその言葉は、じわじわと志朗の胸の奥へと爪を立てていく。
「……分かってる。もう少し、やり方を考えるよ」
低く絞った声。抑えられた音だった。底に渦巻く熱までは隠しきれなくても。
激情の火種は、まだ胸奥で燻り続けていた。
燈雅は眉を上げると、笑いさえ浮かべぬまま淡々と言う。
「ペットが盗まれて癪に障るのも分かるよ。十年以上も愛着を込めて可愛がってきたものを奪われたら、オレだって腹が立つ」
志朗の瞳が揺れた。その揺らぎを、燈雅は逃さない。
「そうだ。新しい子を宛てがおうか。最近、大山から推薦されたエルフがいてね。まだ若い。耳は少し短いが、従順で可愛い。お前の好みにも合いそうだったよ」
言葉の隙間に、うっすらと笑みが滲む。
志朗は顔を上げ、即座にそれを吹き飛ばすように言い放つ。
「――いらねえ」
「そうか」
「欲しいのはエルフでも、奴隷でもない。代わりのきくものじゃないんだ。……もう俺には、奴隷は必要ない」
私情を挟むな。そう叱責された直後に、剥き出しの私情で返す。
どこまでも未熟で、どこまでも誠実。燈雅は肩を竦め、呆れたような吐息を漏らしながら微笑んだ。
自分が何に縋っているのか。志朗自身、もう分かっていた。
シキはただの所有物だった。そういう風に扱ってきた。名前を与え、檻に閉じ込め、飼い慣らし、それを愛と呼んでいた。
けれど、シキが従っていたのは愛でも信頼でもない。ただ、抗っても無駄だと知っていたからだ。
そうだ。シキの父を殺し、母を奪い、そして、彼自身を汚した。そんな関係に絆も信頼もある筈がない。
間違えたまま、戻れない。
それでも――会いたい。
償いもできず、癒しも与えられず、それでも傍にいてほしいと願ってしまう。
どれほど醜く身勝手な祈りかは、百も承知だ。
「……欲しいものが代替できないと言うのは、贅沢な苦しみだね」
燈雅は誰に向けるともなく、呟く。
「……あいつが戻ってきたら、自由にしてやるつもりだった」
「ほう」
「ああ、元から首輪を外してやるつもりだったんだ。……そろそろ、自由にしてもいいと、思っていたところなんだ」
「そうだったのか」
「けど……あいつが俺のものであることには変わりない。俺が、あいつを自由にする。首輪を外すのは俺だ。……誰かに勝手に解放されるなんて、許さねえ」
口にした瞬間、その矛盾に自分でも気づいているそれでも言葉にせずにはいられなかった。
「好きな子に振り回されると、苦労するな」
燈雅の声はからかいとも激励ともつかない。それに志朗は、目を細めた。
「兄貴は、そういうの……無いのかよ」
怒りでも嫉妬でもなく。ただ人としての共鳴を求めた、淡い問い。燈雅は短く黙し、笑う。
「……いないよ。そういう相手なんて。最初から作らないのが一番だ。誰かを持てば、弱くなる」
言葉は軽く、笑みもたやすかった。
その奥に志朗ですら感づくほどの、微かな痛みが滲んでいる。
押し殺した何かを抱えながらなお笑ってみせる姿。志朗は言葉を返さなかった。そのまま席を立つ。
「次の仕事がある。戻る」
背を向けたまま、部屋を出て行った。
障子の向こうへと弟の背中が消えたのち、燈雅はぽつりと呟く。
「お前は、もっと冷たく育つと思っていたんだがね」
声音には、感情が無い。どこか深く乾いた余韻だけが残されていた。
◆
高層ビルの谷間を縫い、黒塗りの車が滑っていく。志朗を乗せたそれは、無言のまま郊外へと向かっていた。
窓を閉めきった車内には、重たい熱気と沈黙だけが満ちていた。
行き先は、郊外の拘置所。名目上は「更生施設」。その実態は遠い昔に役割を終えていた。施設の中枢は仏田家の管理下にあり、法務省の一部、刑務官、判事に至るまで金と血で繋ぎ止められていた。
到着を告げるように鉄の門が開く。事前通達は済んでいる。
曖昧な言葉が低く告げられる。
「死刑囚、移送」
耳に馴染む言い回しだが、意味ははっきりしている。国家が処分すべきとした存在を、闇の側が「利用価値あり」と判断した。償いも悔恨ももはや不要。人としての終わりは、ただ「素材への変換」という名の工程へと差し替えられる。
「どうぞ、こちらへ」
出迎えたのは、拘置所内に潜り込んでいる仏田家の職員だった。
志朗は応じず、顎を動かすだけで通り過ぎる。
案内された先の小部屋には、目隠しと猿轡、そして手枷足枷で拘束された男が一人、椅子に縛りつけられていた。
全身が小刻みに震えていた。声も出せず何が起きているのかも分からない。本能的な恐怖だけが彼を支配していた。
志朗は顔を一瞥する。知らない顔だった。どこかで罪を犯し、どこかで見捨てられ、今ここにいる。その人生の全てが、志朗にとっては他人事だった。
「生きていれば価値はある。そんなことを教えてくれたのは、誰だったか」
皮肉まじりの独白が落ちる。
死刑囚は何の抵抗もなく担ぎ上げられ、再び別の車へと運ばれていく。
行き先は、超人類能力開発研究機関。あらゆる倫理と法が薄められ、魔術的実験と人体操作が黙認された中枢の地。そこでは名前も過去も捨て去られた者たちが、素材として管理されていく。
器にされ、胎動にされ、兵器の核に変えられていく。魂がどれほど壊れようと、誰も咎めはしない。人間ではなく、魔術の構成要素として再定義されるだけだった。
志朗は、その一連の移送と処理の流れを無言で見届ける。その胸に、かすかな麻痺が広がっていた。
(俺は、仕事をしている。ちゃんと、家のために)
命を喰らわせることで金が生まれ、家が潤う。
白衣の研究者たちは、数日かけてこの新しい素材を観察し、壊し、組み替えるだろう。
やがてそれが、売れる成果になる。確かな利益になる。
(寄り道してようが、俺は役目を果たしてる。誰がどう思おうと、これが俺だ)
この手で何人を犠牲にしても。何人の人生を塗り潰しても。志朗の手帳に書かれるのは、数字と達成率だけだった。
人間を、糧にする。
その一線を越えることなど、もはや今更だった。
胸の痛みは、不思議とない。シキの異能が心労を吸い上げていたわけではない、と離れてみて分かった。
最初から志朗は、命を奪うという行為に、致命的なほど迷いがなかっただけだ。
不義であれ、外道であれ、正道から外れていようと……踏みしめてきた足跡を辿れば、答えはすでに明らかだった。
志朗は、生まれついての“鬼”だった。
父と同じ、鬼畜の血と性を持つ者だったのだ。
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一つ目。小さなバーが、炎に呑まれた。
深夜二時。営業を終えた静寂の中、裏手の非常口を蹴破って現れた暗殺部隊は、一切の逡巡なく標的を処理した。銃声、三発。悲鳴、わずか一秒。生存者、無し。
二つ目。次に崩されたのは、雑居ビルの一室にある探偵事務所だった。表向きは失踪人調査。だが実態は、仏田家から逃れた異能者たちを匿う、レジスタンスの隠れ家であった。
暗殺者たちは漆黒の装束に身を包み、真昼の喧騒に紛れて突入した。術式による攻撃に、声を上げる暇すら与えられず、若者たちは内臓を焼かれ、もがくこともなく床に崩れ落ちた。
机上には、写真があった。奴隷として売られる予定だった異能者たちの、拘束前の記録。いずれも志朗の命により、「荷」として取り扱われた者たちだ。彼らの現在の所在は不明。
その中に、長い白髪と長耳を持つ青年がいた。静かな眼差し。名は、シキ。
志朗は歯を噛みしめた。冷たく、短く、次の指示を吐き捨てる。
「全拠点を洗え。R号と繋がりがある、それだけで十分だ。街の連中が何を言おうと関係ない。正義を気取る奴が一番たちが悪い。片っ端から潰せ」
都市も、地方も関係なかった。次々に血が流され、痕跡が消されていった。
だがそれでも、シキは見つからなかった。
証言すら得られず、どの拠点にも彼の足跡はなかった。まるで最初から存在しなかったかのように、エルフの痕跡だけが完璧に消されていた。
部隊の兵たちの間に、焦燥が走る。報復と制圧の痕ばかりが増えていく中で、肝心の「最も欲しいもの」はどこにもいない。
志朗は夜ごと部下を集め、苛立ちを露わにした。机を拳で叩き、声を荒らげ、怒りがじわじわと沈殿していく。彼の眼差しには冷静さはない。焦燥とも喪失ともつかぬ、ひび割れた執着が、黒い水のように滲んでいた。
三つ目。誰にも気づかれぬまま、また一人の命が断たれた。舞台は、学習塾を装った小さな部屋。そこは逃亡者を一時的に保護する中継地だった。そのオーナーは、背中から一刺し。音もなく崩れ落ちた。翌朝、部屋に残された血は、清掃業者によって「漏水処理」として綺麗に磨き落とされていた。
四つ目。繁華街の裏通りで、人が忽然と姿を消した。元教員であり、異能の子供を匿っていた人物だった。防犯カメラの映像は削除され、警察の記録には「駆け落ちの可能性」とだけ雑に記されていた。
五つ目。老舗の印刷所の地下にあったR号の連絡拠点が、爆破された。死者、五名。新聞は沈黙を守り、ローカル紙の隅に「老朽化によるガス漏れ火災」の五行記事が載ったのみだった。それを読んで真実に気づく市民はいない。いや、気づいたとしても、誰も口には出さない。
都市の静寂は、仏田家によって買われていた。
大手メディアの幹部には、料亭で封筒が渡される。警察上層部には、名もなき団体から季節の贈答品が届き、黙してそれを受け取る。行政機関には、助言者の肩書きを持つ仏田家の人間が潜り込み、あらゆる動向に睨みを効かせていた。
夜のニュース。キャスターは、柔らかな笑みで締めくくる。
「本日も、特に大きな事件はありませんでした」
報じられなかった死者たちは、名前も顔も、社会から抹消される。それこそが、志朗の操る仏田家の「力」だった。
闇の奥で、志朗は報告を受ける。彼にとってそれは、もはや日常でしかない。
「次は?」
一言問えば、部下は即座に新たなリストを差し出す。ターゲットの顔、住所、交友関係、そして処理後の隠蔽計画まで――全てが、最初から整っていた。
そして、志朗は命じる。
「消せ」
波紋一つ生まぬまま、表の世界は平穏を装い続ける。その裏で、一つ、また一つ、レジスタンスの灯火が、確実に、冷酷に、闇へと呑み込まれていく。
レジスタンスの一員は、その半年を超える激闘を、終わりの見えぬ沈黙の中で過ごしていた。
六件目――古書店、全焼。
七件目――シェアアトリエにて失踪者、二名。
八件目――雑居ビルの階段からの転落死。事故として処理。監視カメラは、なぜか全て故障していた。
いずれも、かつての仲間だった。
その名を、誰も口に出せなくなっていた。
名前を呼べば、世界から消えてしまう。そんな予感が確信へと変わっていくほどに、死は日常へと近づいていたからだ。
彼らは、居場所を転々と変えた。通信は暗号化し、顔を覆い、通りを足早にすり抜ける。
だが、殺し屋たちは誤らなかった。姿を隠すことはできても、逃げ切ることはできなかった。
敵は都市そのものに根を張っていた。名も、姿も持たぬまま、街の機構そのものを喰らい、血を流すたびに音すら立てなかった。
九件目――レジスタンスの内部に、裏切り者がいた。
彼は捕らえられたのち、ただ一言だけを遺した。「家族を人質に取られていた」と。そしてその夜、拳銃自殺。
雨の日も、風の日も、失われていくのは、記録されぬ人々ばかりだった。
ニュースにはならず、新聞にも載らず、葬式もない。都市の騒音に紛れて、名もなき死者たちは吸い込まれていく。
「……また、一人、消えたな」
吸血鬼の男が、独り言のように呟いた。
「これで何件目だ。なんでおかしいと思わないのか。人間が、燃えて、転がって、殺されてるのに、誰も騒がない。……黙って見てるだけかよ」
その言葉に、誰も返さなかった。
沈黙は部屋を満たし、喉を締めつける。正義は語られることを許されず、もはや祈ることしか残されていなかった。
彼らは、ある作戦会議室にいた。テーブルの上には広げられた地図。赤いピンが各地を穿ち、それは全て、かつて仲間たちが潜んでいた拠点だった。今はもう、どこにもいない。
集まった者たちの眼差しに、激情はなかった。怒りは鈍り、悲しみは風化していた。
残るはただ、音もなく降り積もる、静かな覚悟だけだった。
「……また一人、やられたんだね」
青年がゆっくりと黒の帽子を取り、黙礼した。
「まさか、あの避難先まで狙われるとは思わなかったよ。現場には血の跡しかなかった。連れて行かれたのか、それとも……」
狭い室内に、再び沈黙が降りた。
窓は無い。換気扇の低い唸りと、書類が擦れるかすかな音だけが、虚空を切り裂いていた。
「どうする?」
別の男が言った。痩せ細った頬に影を宿し、その眼差しは鋭く、同じ部屋にいる『唯一の人間』を見据えていた。
「このままだと俺たちもそのうち、飼い慣らされる日が来るぞ」
「……そうだねえ。そうなりたい?」
「まさか。そうなる前に、死んでまたやり直すしかないだろ……。それより、『あいつ』の居場所は大丈夫か。もし情報が漏れたら、終わりだぞ」
「……だねえ。少し移ってもらうしかないかな。せっかく自由にしてあげたのに、外に出せないのは可哀想だけど……仕方ない。あの子が、今一番狙われている」
だが、その前に。まず、生き延びること。それだけは決して手放してはならぬ原則だ。
己を殺すことすらも作戦の一部と化した世界で、彼らはなおも抗い続ける。名もなき正義の断片として、都市の闇の中を、なおも生きようとしていた。
◆
志朗は数日間、自宅である高層マンションに戻らなかった。
シキがいないのなら、戻る理由が無かった。
広すぎるリビングには、誰の気配もない。丁寧に磨かれたガラス窓に映るのは、歪んだ自身の影のみ。
無人の空間に背を預けても、返ってくるのは冷たい静寂だけだった。惨めになるだけの場所に、帰る意味はなかった。志朗はオフィスに籠り、終わりのない作業に身を沈めた。
それでも、どうしても帰宅せざるを得ない事情ができたある夜。志朗は一人で自室のドアを開けた。
当然のように、シキの姿は無い。欠けているのは、家具の一つや私物ではない。この部屋の空気から、温度が、意味が、まるごと剥ぎ取られていた。
志朗は窓辺に立ち、夜の街を見下ろす。遠ざかる車列、点滅する信号、街灯に浮かぶ人影。その全ての中に、無意識に彼の面影を探している。
(どこにいる)
何度も部下を動かした。情報を買い、施設を襲い、誰かを沈めもした。どれほどの血が流れたか、もはや正確には思い出せない。
それでも、彼はどこにもいなかった。
怒りが焦燥を蝕み、焦燥が孤独を増幅させる。この感情に名前を与えたとして、受け止めてくれる者などいない。
命令に従い、忠誠を誓う者たちは無数にいるが、そのさらに奥にある剥き出しの痛みには、誰ひとり触れてこなかった。
(会いたい。そう思うのは、愚か者のすることかもしれない。それでも)
胸の奥から、呟くような声が、どうしようもなく溢れてくる。
(早く、会いたい。会いたくてたまらないんだ)
窓に映る自分の顔が、ゆらりと揺れた。
(……せめて……生きていてくれ……)
表情はあまりに弱く、あまりに惨め。それでも志朗は、誰にも見せることのない祈りを都市の夜に落としていた。
◆
座敷の中央。漆塗りの黒い座卓を挟み、志朗と燈雅が向かい合っていた。
息を潜めたような静寂の中、燈雅の隣に控える護衛が、盃に淡く酒を注ぐ。
手際に迷いはない。受け取った燈雅は盃に口を寄せ、吐息とともに淡く揺れる香を含んだ後、あくまで穏やかに言葉を継いだ。
「……最近の志朗は、随分派手にやってるらしいじゃないか。オレは慎重に動けと言った筈だよ。今年は火種を撒くな、控えろとね。覚えてるか?」
志朗は、すぐには答えなかった。
一拍の沈黙。背筋を正し、硬質な声音で応じる。
「R号はうちの資産を次々に奪っている。調整済みの異能個体、魔種との交配体。何年もかけて育ててきた計画が、奴らの手で崩されつつある。被害は、億単位じゃ済まない。……見過ごせる段階はもう過ぎてる。だから制裁が必要だ。徹底的に叩き潰さなければ」
言葉は抑揚なく、それでいて熱を孕んだ弾丸のようだった。
用意された論理。だが混ざる感情の気配を燈雅は逃さない。口元を歪め、小さく苦笑にも似た吐息を漏らす。
「私情を挟むなよ、志朗」
声は静かだった。
静けさは重みを孕み、空気を震わせる。
「お前の執着は分かってる。分かってるから、これまでは黙ってきた。けれど焦りに任せて暴れれば、取り返しのつかないことになる。……それはただの愚か者のすることだ」
志朗の眉が、僅かに動いた。反論の言葉は浮かばない。
現当主の目は、冷たい。深海の底に沈む石のように、どこまでも届かぬ視線をしている。
あの目を向けられた者が戻ってきたことはない。志朗自身、それを知っている。
「朱指を動かしすぎだ。部隊長が直接、オレに進言してきた。お前を通さず、直接オレに、だぞ。……制裁は必要だ。だが、こちらの消耗も看過できない。仏田家は無限ではない。お前に任せていたとはいえ、これは消耗戦だ。持たない」
盃を口に運ぶ燈雅の所作は、先ほどと変わらない。
味わうこともせず淡々と卓へと戻し、一息、淡く応える。
「とはいえ、鬼になってくれたお前には感謝している。R号以外の連中は一斉に尻尾を巻いた。外部への威嚇として十分だった。今後も、対外の調整はお前に任せる。勇み足だけは直すべきだ。抑えの利かない獣は、美しくない。不格好は、仏田家に似合わない」
声音に怒気は無い。柔らかな、どこまでも冷静な口調。
だがその言葉は、じわじわと志朗の胸の奥へと爪を立てていく。
「……分かってる。もう少し、やり方を考えるよ」
低く絞った声。抑えられた音だった。底に渦巻く熱までは隠しきれなくても。
激情の火種は、まだ胸奥で燻り続けていた。
燈雅は眉を上げると、笑いさえ浮かべぬまま淡々と言う。
「ペットが盗まれて癪に障るのも分かるよ。十年以上も愛着を込めて可愛がってきたものを奪われたら、オレだって腹が立つ」
志朗の瞳が揺れた。その揺らぎを、燈雅は逃さない。
「そうだ。新しい子を宛てがおうか。最近、大山から推薦されたエルフがいてね。まだ若い。耳は少し短いが、従順で可愛い。お前の好みにも合いそうだったよ」
言葉の隙間に、うっすらと笑みが滲む。
志朗は顔を上げ、即座にそれを吹き飛ばすように言い放つ。
「――いらねえ」
「そうか」
「欲しいのはエルフでも、奴隷でもない。代わりのきくものじゃないんだ。……もう俺には、奴隷は必要ない」
私情を挟むな。そう叱責された直後に、剥き出しの私情で返す。
どこまでも未熟で、どこまでも誠実。燈雅は肩を竦め、呆れたような吐息を漏らしながら微笑んだ。
自分が何に縋っているのか。志朗自身、もう分かっていた。
シキはただの所有物だった。そういう風に扱ってきた。名前を与え、檻に閉じ込め、飼い慣らし、それを愛と呼んでいた。
けれど、シキが従っていたのは愛でも信頼でもない。ただ、抗っても無駄だと知っていたからだ。
そうだ。シキの父を殺し、母を奪い、そして、彼自身を汚した。そんな関係に絆も信頼もある筈がない。
間違えたまま、戻れない。
それでも――会いたい。
償いもできず、癒しも与えられず、それでも傍にいてほしいと願ってしまう。
どれほど醜く身勝手な祈りかは、百も承知だ。
「……欲しいものが代替できないと言うのは、贅沢な苦しみだね」
燈雅は誰に向けるともなく、呟く。
「……あいつが戻ってきたら、自由にしてやるつもりだった」
「ほう」
「ああ、元から首輪を外してやるつもりだったんだ。……そろそろ、自由にしてもいいと、思っていたところなんだ」
「そうだったのか」
「けど……あいつが俺のものであることには変わりない。俺が、あいつを自由にする。首輪を外すのは俺だ。……誰かに勝手に解放されるなんて、許さねえ」
口にした瞬間、その矛盾に自分でも気づいているそれでも言葉にせずにはいられなかった。
「好きな子に振り回されると、苦労するな」
燈雅の声はからかいとも激励ともつかない。それに志朗は、目を細めた。
「兄貴は、そういうの……無いのかよ」
怒りでも嫉妬でもなく。ただ人としての共鳴を求めた、淡い問い。燈雅は短く黙し、笑う。
「……いないよ。そういう相手なんて。最初から作らないのが一番だ。誰かを持てば、弱くなる」
言葉は軽く、笑みもたやすかった。
その奥に志朗ですら感づくほどの、微かな痛みが滲んでいる。
押し殺した何かを抱えながらなお笑ってみせる姿。志朗は言葉を返さなかった。そのまま席を立つ。
「次の仕事がある。戻る」
背を向けたまま、部屋を出て行った。
障子の向こうへと弟の背中が消えたのち、燈雅はぽつりと呟く。
「お前は、もっと冷たく育つと思っていたんだがね」
声音には、感情が無い。どこか深く乾いた余韻だけが残されていた。
◆
高層ビルの谷間を縫い、黒塗りの車が滑っていく。志朗を乗せたそれは、無言のまま郊外へと向かっていた。
窓を閉めきった車内には、重たい熱気と沈黙だけが満ちていた。
行き先は、郊外の拘置所。名目上は「更生施設」。その実態は遠い昔に役割を終えていた。施設の中枢は仏田家の管理下にあり、法務省の一部、刑務官、判事に至るまで金と血で繋ぎ止められていた。
到着を告げるように鉄の門が開く。事前通達は済んでいる。
曖昧な言葉が低く告げられる。
「死刑囚、移送」
耳に馴染む言い回しだが、意味ははっきりしている。国家が処分すべきとした存在を、闇の側が「利用価値あり」と判断した。償いも悔恨ももはや不要。人としての終わりは、ただ「素材への変換」という名の工程へと差し替えられる。
「どうぞ、こちらへ」
出迎えたのは、拘置所内に潜り込んでいる仏田家の職員だった。
志朗は応じず、顎を動かすだけで通り過ぎる。
案内された先の小部屋には、目隠しと猿轡、そして手枷足枷で拘束された男が一人、椅子に縛りつけられていた。
全身が小刻みに震えていた。声も出せず何が起きているのかも分からない。本能的な恐怖だけが彼を支配していた。
志朗は顔を一瞥する。知らない顔だった。どこかで罪を犯し、どこかで見捨てられ、今ここにいる。その人生の全てが、志朗にとっては他人事だった。
「生きていれば価値はある。そんなことを教えてくれたのは、誰だったか」
皮肉まじりの独白が落ちる。
死刑囚は何の抵抗もなく担ぎ上げられ、再び別の車へと運ばれていく。
行き先は、超人類能力開発研究機関。あらゆる倫理と法が薄められ、魔術的実験と人体操作が黙認された中枢の地。そこでは名前も過去も捨て去られた者たちが、素材として管理されていく。
器にされ、胎動にされ、兵器の核に変えられていく。魂がどれほど壊れようと、誰も咎めはしない。人間ではなく、魔術の構成要素として再定義されるだけだった。
志朗は、その一連の移送と処理の流れを無言で見届ける。その胸に、かすかな麻痺が広がっていた。
(俺は、仕事をしている。ちゃんと、家のために)
命を喰らわせることで金が生まれ、家が潤う。
白衣の研究者たちは、数日かけてこの新しい素材を観察し、壊し、組み替えるだろう。
やがてそれが、売れる成果になる。確かな利益になる。
(寄り道してようが、俺は役目を果たしてる。誰がどう思おうと、これが俺だ)
この手で何人を犠牲にしても。何人の人生を塗り潰しても。志朗の手帳に書かれるのは、数字と達成率だけだった。
人間を、糧にする。
その一線を越えることなど、もはや今更だった。
胸の痛みは、不思議とない。シキの異能が心労を吸い上げていたわけではない、と離れてみて分かった。
最初から志朗は、命を奪うという行為に、致命的なほど迷いがなかっただけだ。
不義であれ、外道であれ、正道から外れていようと……踏みしめてきた足跡を辿れば、答えはすでに明らかだった。
志朗は、生まれついての“鬼”だった。
父と同じ、鬼畜の血と性を持つ者だったのだ。
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