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約束は守るべき?
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松葉づえを作ってやった時、お礼に何でもいうこと聞くとルウイが言うので。
願い事を口にした。
心情的には泣いて頼んだといっても過言でないかもしれない。
もう、あんな無茶はやめてくれ。
撤退するとか見逃すとか他人に投げるとか逃げるとか、そういう判断ラインを、もっとルウイの身の危険がない側に引いてくれ。
頼むから。自分の体潰してまで目的の達成を優先しないでくれ。
「了解、了解。前回痛くて懲りた、もうやらない!安全第一。約束します、誓いまーす!」
たった二週間前、ルウイは俺に抱きついてそういった。
一昨日。ルウイは杖なしで歩くようになった。まだ危なっかしくて、痛そうで、ゆっくりしか動けないけれど、リハビリと言い張ってルウイは散歩をする。
だから念を押した。
「特に怪我が治らないうちとか、危なそうなことからは距離をとれよ。絶対クビも頭も顔も指も突っ込むなよ。嘘ついたら監禁するぞ、本気だからな」
「大丈夫、大丈夫、約束だからね。猫の喧嘩からも逃げますとも!シンジテクダサイ」
ルウイは笑いながらそういって小指を絡めた。
そして、今日。
俺がつけた監視役から、散歩だったはずのルウイが馬に乗って立ち入り禁止の山に入ったと報告があった。
嫌な予感がして追いかけると、真っ青な監視役にルウイを見失なったと聞かされた。
立ち入り禁止の山中の川べりで、ルウイはセグアイの紋章が入った小舟を前に、3人の賊・・というか初めて賊だと認識したセグアイ王女の侍女たちともみあっており、派手な爆発音まで響いたという。
賊は3人だけではなかった模様で、護衛が近づこうとすると、横から出てきた男二人に目に滲みる煙幕を焚かれて遮られた。
視界が回復した時には小舟は出発しており、1人か2人はさらに山奥に入ったとみられる痕跡があったそうだ。
この時期は、出産・子育てシーズンの肉食獣が多いので、危険な山は入山禁止。1人で入る人間は基本的に餌認定だ。
川はもう少し下ると灌漑用の人工湖につながっていて、水の出口は3方向ある。左右の二か所は水門を閉めれば止まるが、中央は出水口とは名ばかりの巨大な滝だ。流れに沿っていたら灌漑用水の出口から真っ逆さまが普通で、水量の多いこの時期だと小舟レベルで流れに逆らえるか微妙なところ。
小舟は敵のものだったから、ルウイが敵を追っていたなら川へ入ったかもしれず、敵から逃げていたなら山に入ったかもしれない。
「申し訳ありません、ルウイさまがどちらに行かれたかわかりません。追っていたのか追われていたのかも分かりません」
どちらにせよ足の不自由なルウイの行くべき場所ではないが、どちらかと言えば山のほうが危険度は低い。追っ手にもよるが、ルウイはもともと動物の生態に詳しいので、子育て中の肉食獣を刺激しないで助けが来るまで隠れるくらいのことはできそうだ。
危険は避けると約束した。
猫の喧嘩からでも逃げるから信じろと言った。
だから。避けていい危険なら避けたかもしれない。
が、避けられないとふんだが最後、間髪入れずに攻撃に切りかえるよな、莫迦ヤロー。
山に入ったのはひとりかふたり。追手が一人しかいなくて逃げ回るルウイではない。どう考えてもほっとけない理由があって攻撃に出ている。
「山の方は適当でいい。それよりすぐに左右の出水口を閉めさせろ。中央の出水口には湖壁を修繕するときの大型船をだせ。俺はこのまま民家の小舟借りて川を下るから、拾いに来いと伝えろ」
「この時期は水量が多いので普通の小舟では危険です。流されます」
「だから大型船急がせろっつーの」
「せめてはじめから大型船に直接お乗りください」
「支流があるかもしれないだろーが!とにかくルウイは川だ。迎えに行く」
願い事を口にした。
心情的には泣いて頼んだといっても過言でないかもしれない。
もう、あんな無茶はやめてくれ。
撤退するとか見逃すとか他人に投げるとか逃げるとか、そういう判断ラインを、もっとルウイの身の危険がない側に引いてくれ。
頼むから。自分の体潰してまで目的の達成を優先しないでくれ。
「了解、了解。前回痛くて懲りた、もうやらない!安全第一。約束します、誓いまーす!」
たった二週間前、ルウイは俺に抱きついてそういった。
一昨日。ルウイは杖なしで歩くようになった。まだ危なっかしくて、痛そうで、ゆっくりしか動けないけれど、リハビリと言い張ってルウイは散歩をする。
だから念を押した。
「特に怪我が治らないうちとか、危なそうなことからは距離をとれよ。絶対クビも頭も顔も指も突っ込むなよ。嘘ついたら監禁するぞ、本気だからな」
「大丈夫、大丈夫、約束だからね。猫の喧嘩からも逃げますとも!シンジテクダサイ」
ルウイは笑いながらそういって小指を絡めた。
そして、今日。
俺がつけた監視役から、散歩だったはずのルウイが馬に乗って立ち入り禁止の山に入ったと報告があった。
嫌な予感がして追いかけると、真っ青な監視役にルウイを見失なったと聞かされた。
立ち入り禁止の山中の川べりで、ルウイはセグアイの紋章が入った小舟を前に、3人の賊・・というか初めて賊だと認識したセグアイ王女の侍女たちともみあっており、派手な爆発音まで響いたという。
賊は3人だけではなかった模様で、護衛が近づこうとすると、横から出てきた男二人に目に滲みる煙幕を焚かれて遮られた。
視界が回復した時には小舟は出発しており、1人か2人はさらに山奥に入ったとみられる痕跡があったそうだ。
この時期は、出産・子育てシーズンの肉食獣が多いので、危険な山は入山禁止。1人で入る人間は基本的に餌認定だ。
川はもう少し下ると灌漑用の人工湖につながっていて、水の出口は3方向ある。左右の二か所は水門を閉めれば止まるが、中央は出水口とは名ばかりの巨大な滝だ。流れに沿っていたら灌漑用水の出口から真っ逆さまが普通で、水量の多いこの時期だと小舟レベルで流れに逆らえるか微妙なところ。
小舟は敵のものだったから、ルウイが敵を追っていたなら川へ入ったかもしれず、敵から逃げていたなら山に入ったかもしれない。
「申し訳ありません、ルウイさまがどちらに行かれたかわかりません。追っていたのか追われていたのかも分かりません」
どちらにせよ足の不自由なルウイの行くべき場所ではないが、どちらかと言えば山のほうが危険度は低い。追っ手にもよるが、ルウイはもともと動物の生態に詳しいので、子育て中の肉食獣を刺激しないで助けが来るまで隠れるくらいのことはできそうだ。
危険は避けると約束した。
猫の喧嘩からでも逃げるから信じろと言った。
だから。避けていい危険なら避けたかもしれない。
が、避けられないとふんだが最後、間髪入れずに攻撃に切りかえるよな、莫迦ヤロー。
山に入ったのはひとりかふたり。追手が一人しかいなくて逃げ回るルウイではない。どう考えてもほっとけない理由があって攻撃に出ている。
「山の方は適当でいい。それよりすぐに左右の出水口を閉めさせろ。中央の出水口には湖壁を修繕するときの大型船をだせ。俺はこのまま民家の小舟借りて川を下るから、拾いに来いと伝えろ」
「この時期は水量が多いので普通の小舟では危険です。流されます」
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