異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

文字の大きさ
112 / 188

第112話 妖精

しおりを挟む
夕食後、魔物に関する研究を読んでいると目に留まる論文があった。

そこには”魔物の身体を構成する要素”と書かれていた。



『…そういえば魔石が核になってることくらいしか知らないな。』



読んでみると、どうやら魔素が関係しているとのことだ。



神聖魔法でフィールドの魔素を薄くする実験を行った結果、まず魔石が突然現れた。

そしてその魔石に吸い付くように魔素が集まり、身体が少しづつ構成されて出来上がっていったらしい。



『魔素か…ってことは世界中の魔素を神聖魔法で浄化したら魔物はいなくなるのか…?』



しかし、俺の疑問は浅はかだったようだ。

論文の最後に”ただし、魔素は浄化しても時間とともに発生するため、魔物の殲滅は見込めない”と書かれていた。



『まぁそう簡単にいかないのがこの世の中だよな。』



とりあえず生態研究より明日の支度をしようと思う。

”アイテムボックス”内を確認してみると、何故か所持金が増えていた。



『…え?あ、そうか。』



奴隷たちの屋敷に、俺の”アイテムボックス”に繋がる空間袋を置いてきていたのを失念していた。

契約通り、毎月所得の何割かを払ってくれていたのだろう。



奴隷の企業は最初、お金を稼ぐために始めたものだ。

しかし、今となっては俺一人でいくらでも稼げるので不要となってしまった。



『…まあ有用な人材を奴隷で終わらせるのはもったいないし経済が回るか。』



拠点作りにもなっているので、今後も継続することにした。

このように色々確認していると時間が過ぎ、眠りについた。



翌朝



「ダグラス、起きてる?」



「ああ。」



「入るわね。」



リヴェリアの部屋着姿はとても艶やかだった。

朝からいいものが見られた。



『…って俺は変態か!!』



脳内で自分に突っ込んでしまった。



「これから精霊の森に向かうの?」



「その予定だ。」



「じゃあこれを持っていくといいわ。」



そういうと、リヴェリアは巻物を渡してきた。



「…これは?」



「手紙よ。精霊の森は認められた者以外入れないの。場合によっては迎撃されるわ。」



「そうだったのか…」



もし知らずに行っていたら危なかった。

正直精霊たちの強さを知らないため、不安だ。



「それで、これは精霊の言語で書いた手紙なの。これを見せればきっと入れてくれるわ。」



「ありがとう。じゃあ行ってくる。」



「ええ。気をつけてね!!」



精霊の森は幻惑の森深部にあるのだが、幻惑の森全体に結界を展開することで方向感覚を狂わせてその存在を隠しているらしい。

精霊の森に近づけば近づくほどその結界の強度が上がり、更に感覚を狂わせるそうだ。



『俺なんかにたどり着けるか…?』



だいぶ不安だが、とりあえず行ってみないことにはわからない。

バフと風属性魔法を行使して超高速で飛び、数時間で幻惑の森の入り口に着いた。



『思ったより時間かからなかったな。』



そこは特に変わったところがない普通の森だった。

誰かに教えてもらわない限り、ここに精霊がいるとは思わないほど平凡だ。



『よし、行くか!』



一歩踏み出した瞬間、何か膜を通ったような感覚に襲われた。

おそらく今のが最初の結界だったのだろう。



『…もしかして”デバフ無効”の影響で無効化されて、普通に進んでいくだけで着くのでは?』



そのまま奥へと進んでいき、中間くらいに着いた頃、奇妙な事態が起こった。



「…出ていけ…この森から出ていけ…」



圧力のある低い声で誰かが警告を始めた。

ということは順調に精霊の森に近づいて来ているのだろう。



「…それ以上進んだら力尽くで追い出すぞ!!」



「待ってくれ!!少し話がしたい!!!」



攻略しに来たわけではないので、俺は対話を望んだ。



「お前と話すことなど無い!!!」



声の主がそう声を荒げて言うと、真正面から強い風が吹いてきた。



「ハイエルフの子から手紙を預かってるんだ!!!せめてそれを読んでからにしてくれ!!!」



「ハイエルフだと…!!!…分かった。今使いを出す…」



そう言うと、白い光の粒がふわふわと飛んできた。

真祖との戦闘後習得しまくったスキルの中に”精霊視”というものがあったので行使してみると、四つの羽が生えた小人のような女の子が飛んできていた。



「…妖精か?」



声を出すと、ばっちり目が合った。



「…っ!!おじいちゃん!!!!この人間私のことが視えてる!!!!」



「なんだとっ!!!」



視えないふりをした方がよかったのだろうか。

もしこれで反感を買っていたりしたら、二度とここへは来れなくなってしまうだろう。



「…お前、”精霊魔法”を使えるのか?」



「ああ。まだ精霊と契約はしていないがな。」



「そうか…なら最初に言って欲しかったぞ。」



「言葉も聞かずに武力で脅してきたのはそっちだろ…」



「うっ…すまなかった…」



声の主は思ったより話が通じるようだ。

それも、素直に謝罪ができるのは好印象だ。

この世界では基本的に態度がでかい人が多く、中には絶対に謝らない輩もいるのだ。



「気にしてないさ。それより、手紙はどうするんだ?」



「このまま進んで精霊の森に入ってくれ。中で読む。」



「分かった。」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...