156 / 188
第156話 様子見
しおりを挟む
「改めて、おいらはチェイス。これからよろしくお願いします!」
「ああ。」
「それで、どうやってコルムを殺すんですか…?」
「まずは人質にされてる魔狼族を保護して…それからコルムと俺とを結界を囲って一対一かな。」
「確かにそれなら被害も少ないですし確実ですね。」
「…そうか。」
グレイから聞いた魔狼族の特徴が頭から離れず、未だチェイスたちが何かを企てているのではないかと不安に感じる。
…できれば策略も何もなかったらいいのだが。
「チェイスたちは少しここで待っていてくれ。」
「わかりました。」
俺は一度第三者の意見を聞くべく、玉座に戻った。
「グレイ、影から出てきていいぞ。」
「はっ!」
「魔狼族との会話は頭に入っているな?」
「はい。」
「単刀直入に聞く。罠だと思うか?」
「いえ。体温の変化、呼吸の乱れ、視線の動き、どれを見ても正常でした。おそらく事実だと思われます。」
「演技だった可能性は低いか?」
「はい。しかし、ゼロとは言い切れません。申し訳ありません。」
「いや、良い。参考になった。」
吸血鬼族曰く、人間の血の味は体調だけでなく感情にも関係しているらしい。
美味しい血を判別するために日頃から人間観察を行っているため、洞察力が高いのだ。
「さて…グレイ、俺一人で突入しても大丈夫だと思うか?」
「恐れながら、以前説明しました通り魔狼族は油断なりません。ステータスが勝っていても負けると言う事例が相次いでいますので…」
「そうか…じゃあグレイはどういった構成がいいと思う?」
「そうですね…もし罠だった場合に備え、出来ることならアンデッド軍総員が欲しいところです。」
「なっ…!!」
いくらなんでもそれは過剰戦力じゃないか?
せいぜい俺と吸血鬼十人がいれば大丈夫だと踏んでいるのだが…
しかしグレイの顔には一切余裕の表情はなく、むしろ焦りや不安の色が見える。
「…そこまで危険視しているのか?」
「はい。…私めは以前吸血鬼を統括する身でした。何もが順風満帆に進み、生活に潤いが出てきた頃…魔狼族の襲撃を受けました。」
「っ…!!まさか資源が豊かになるのを狙って襲われたというのか?」
「…敵の魔狼族本人がそう言っておりました。」
ヴァルハラ帝国もちょうど人間との交流が生まれ、豊かになり始めた時期だ。
…まさか本当に罠なのか?
「ダグラス様、彼らと契約を結ぶのは如何でしょうか?そうすれば直接的な反抗はできなくなります。」
「…だがこちらも奴隷契約を結んでしまったらコルムと同じだ。」
「いえ、契約というのは名付けのことです。」
「…名付けにそんな効果があったのか?」
「はい。」
てっきり名付けとは個体ごとの判別を可能とし、能力を強化する物だと思っていた。
「そうだな…名付けはしておこうか。…でもやっぱりアンデッド軍を?」
アンデッド軍が外に出ると、ヴァルハラ帝国の警備が甘くなってしまう。
もし俺の結界が破られたら民たちは蹂躙されてしまう。
「ではダグラス様と吸血鬼軍でどうでしょうか?名付けの効果で大分戦力が上がっていますし…」
「そうしよう。…だが流石に守りながら戦うのは難しいぞ?」
「安心してください。危なくなったらすぐに”影移動”を行使してダグラス様の元に逃げますので。」
「わかった。…絶対に誰も死なせるな?」
「はっ!」
話がまとまったところで、俺は結界外の魔狼族達の元へ”転移”した。
「チェイス、他の魔狼族達にヴァルハラ帝国移住を少しでも早く知らせたい。そのためにお前らに名付けをしてもいいか?」
「なっ、名付けをして頂けるんですか?」
「ああ。ヴァルハラ帝国の民は全員名付けしてる。」
「すごいですね…わかりました!兄者達も良いですよね?」
「ああ!これで強くなってコルムに仕返しできるぜ!!」
これは名付けの効果を知らないのか…?
はたまた純粋に喜んでいるのか…?
俺は疑心暗鬼になってしまった。
とりあえずチェイス→チェイスのように、全員を同じ名前で名付けをし直し、俺の支配下に加えた。
「おぉ…!コルムに名付けされた時より力が強く…!!」
「コルムより俺の魔力量の方が多かったんだろう。」
「本当に力が溢れてくる…!!これならおいらたちだけでコルムを倒せそうだ…!!」
「流石にそれは危険だから俺に任せておけ。」
「分かりました!!おいら達は捕まってる魔狼族の保護ですよね?」
「ああ。よろしく頼むぞ。」
「お任せください!!」
チェイス達が素なのか演技なのか、やはりわからない。
魔狼族の集落に行ったら分かるか。
「出発は明朝だ。お前らは一度集落に戻って変化がないか見てきてくれ。」
「そうですね…わかりました!」
「気をつけてな。」
「はい!」
チェイス達と別れ、俺は玉座に戻った。
「さて…チェイス達を観察するか。」
これはグレイの提案で、裏切るかどうかを見定めるための作戦だ。
もしチェイス達が他の種族や魔狼族に接触したら黒、偵察だけしたら白だ。
『さて…どう出るか。』
「ああ。」
「それで、どうやってコルムを殺すんですか…?」
「まずは人質にされてる魔狼族を保護して…それからコルムと俺とを結界を囲って一対一かな。」
「確かにそれなら被害も少ないですし確実ですね。」
「…そうか。」
グレイから聞いた魔狼族の特徴が頭から離れず、未だチェイスたちが何かを企てているのではないかと不安に感じる。
…できれば策略も何もなかったらいいのだが。
「チェイスたちは少しここで待っていてくれ。」
「わかりました。」
俺は一度第三者の意見を聞くべく、玉座に戻った。
「グレイ、影から出てきていいぞ。」
「はっ!」
「魔狼族との会話は頭に入っているな?」
「はい。」
「単刀直入に聞く。罠だと思うか?」
「いえ。体温の変化、呼吸の乱れ、視線の動き、どれを見ても正常でした。おそらく事実だと思われます。」
「演技だった可能性は低いか?」
「はい。しかし、ゼロとは言い切れません。申し訳ありません。」
「いや、良い。参考になった。」
吸血鬼族曰く、人間の血の味は体調だけでなく感情にも関係しているらしい。
美味しい血を判別するために日頃から人間観察を行っているため、洞察力が高いのだ。
「さて…グレイ、俺一人で突入しても大丈夫だと思うか?」
「恐れながら、以前説明しました通り魔狼族は油断なりません。ステータスが勝っていても負けると言う事例が相次いでいますので…」
「そうか…じゃあグレイはどういった構成がいいと思う?」
「そうですね…もし罠だった場合に備え、出来ることならアンデッド軍総員が欲しいところです。」
「なっ…!!」
いくらなんでもそれは過剰戦力じゃないか?
せいぜい俺と吸血鬼十人がいれば大丈夫だと踏んでいるのだが…
しかしグレイの顔には一切余裕の表情はなく、むしろ焦りや不安の色が見える。
「…そこまで危険視しているのか?」
「はい。…私めは以前吸血鬼を統括する身でした。何もが順風満帆に進み、生活に潤いが出てきた頃…魔狼族の襲撃を受けました。」
「っ…!!まさか資源が豊かになるのを狙って襲われたというのか?」
「…敵の魔狼族本人がそう言っておりました。」
ヴァルハラ帝国もちょうど人間との交流が生まれ、豊かになり始めた時期だ。
…まさか本当に罠なのか?
「ダグラス様、彼らと契約を結ぶのは如何でしょうか?そうすれば直接的な反抗はできなくなります。」
「…だがこちらも奴隷契約を結んでしまったらコルムと同じだ。」
「いえ、契約というのは名付けのことです。」
「…名付けにそんな効果があったのか?」
「はい。」
てっきり名付けとは個体ごとの判別を可能とし、能力を強化する物だと思っていた。
「そうだな…名付けはしておこうか。…でもやっぱりアンデッド軍を?」
アンデッド軍が外に出ると、ヴァルハラ帝国の警備が甘くなってしまう。
もし俺の結界が破られたら民たちは蹂躙されてしまう。
「ではダグラス様と吸血鬼軍でどうでしょうか?名付けの効果で大分戦力が上がっていますし…」
「そうしよう。…だが流石に守りながら戦うのは難しいぞ?」
「安心してください。危なくなったらすぐに”影移動”を行使してダグラス様の元に逃げますので。」
「わかった。…絶対に誰も死なせるな?」
「はっ!」
話がまとまったところで、俺は結界外の魔狼族達の元へ”転移”した。
「チェイス、他の魔狼族達にヴァルハラ帝国移住を少しでも早く知らせたい。そのためにお前らに名付けをしてもいいか?」
「なっ、名付けをして頂けるんですか?」
「ああ。ヴァルハラ帝国の民は全員名付けしてる。」
「すごいですね…わかりました!兄者達も良いですよね?」
「ああ!これで強くなってコルムに仕返しできるぜ!!」
これは名付けの効果を知らないのか…?
はたまた純粋に喜んでいるのか…?
俺は疑心暗鬼になってしまった。
とりあえずチェイス→チェイスのように、全員を同じ名前で名付けをし直し、俺の支配下に加えた。
「おぉ…!コルムに名付けされた時より力が強く…!!」
「コルムより俺の魔力量の方が多かったんだろう。」
「本当に力が溢れてくる…!!これならおいらたちだけでコルムを倒せそうだ…!!」
「流石にそれは危険だから俺に任せておけ。」
「分かりました!!おいら達は捕まってる魔狼族の保護ですよね?」
「ああ。よろしく頼むぞ。」
「お任せください!!」
チェイス達が素なのか演技なのか、やはりわからない。
魔狼族の集落に行ったら分かるか。
「出発は明朝だ。お前らは一度集落に戻って変化がないか見てきてくれ。」
「そうですね…わかりました!」
「気をつけてな。」
「はい!」
チェイス達と別れ、俺は玉座に戻った。
「さて…チェイス達を観察するか。」
これはグレイの提案で、裏切るかどうかを見定めるための作戦だ。
もしチェイス達が他の種族や魔狼族に接触したら黒、偵察だけしたら白だ。
『さて…どう出るか。』
0
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる