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その後
49 息子の幸せを願う ユリウス騎士団長
しおりを挟むグレンジャー侯爵家当主でありながら、最愛の妻の腰にしがみつく私は、みっともなく泣きながら謝罪していた。
「私の一番はエルだ!」
「ふふ、ユリちゃん。……良くやったわ!」
妻のジュエルが笑顔で抱き寄せてくれたが、凄まじい力で、絞め殺されそうになっている。
「貴方の暴走のおかげで、私まで天使にエルママって呼んでもらえたんだからっ! きゃはっ!」
「……よ、よかったな? ゴホッ」
「だからって天使を独り占めしないでよ! 私だってヴィーちゃんを抱っこして、あのスベスベなお肌に頬擦りしたかったのにっ!」
「カハッ……す、すまないっ」
鳩尾を殴られ続ける私は、アルメリア王国の騎士団長なのだが、妻にはめっぽう弱い。
若かりし頃の私は、同じ騎士の道を歩んでいた気高いジュエルに惚れ込んでいた。
騎士仲間ではなく、一人の男として見てもらいたくて、友人のアドバイス通りに、政略結婚の相手がいると嘘をついて、ジュエルの気を引こうとした。
そして、一年間口を聞いてもらえなかった。
そう。私の若い頃は、好きな人を振り向かせたくて、息子のユーリと同じようなことをして、初恋の相手に心底嫌われていた。
「でも、エルが二人のことを事前に話してくれていたおかげで、私の助け舟によって二人は婚約したんだぞ? もっと褒めてくれても……」
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「そりゃそうよ。あの子はずーっとヴィーちゃんの王子様になりたかったんだから。それなのに、お姫様の方から婚約するって言わせたんだもの……」
はぁ、と二人で溜息を吐いたが、それでも息子と息子の初恋の相手が結婚すると報告を受けた私達は、素直に喜びを噛み締めていた。
「でも幸せそうで良かったわ。この前まで廃人になっていたユーリのあんな笑顔を見れて……」
「そうだな……。騎士団でも私の言うことすら聞かなくなっていたから、もうどうしたら良いのかわからなかったが。全て天使のおかげだ」
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「ヴィーちゃんのお披露目をしたら、きっと大騒ぎになるわね?」
「間違いなくな。あれだけの美貌で、これから大人になったらさらに色っぽくなって……。あぁ、パパとしては心配でたまらない」
「大丈夫よ、そこはヴィーちゃんの最強の騎士であるユーリが、体を張って守るから。……貴方と同じでね?」
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「ええ。ユーリが子供ながらに声高らかに宣誓したときには、貴方の面影が重なって、涙ぐんだわ……」
潤む茶色の瞳には、涙が光っていた。
優しく目尻にキスをした私は、愛する妻を優しく抱きしめる。
「あの二人なら、この先どんな困難が待ち受けていたとしても、笑顔で乗り切れるだろう」
「そうね……。とにかくヴィーちゃんが良い子すぎるから心配だけど……。そこは、腹黒いユーリがなんとかするでしょう」
「腹黒は誰に似たんだろうな?」
「……私じゃないわよ?」
「クククッ、そういうことにしておこう」
笑顔で笑い合う私達は、息子と息子の恋人の幸せを心から願っている。
そしてラブラブな二人に当てられた私達は、昔から変わることのないお互いの愛を確かめ合って、熱い夜を過ごすのだった。
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