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交際12日目 これはお礼になりますか
しおりを挟む暫く春のぽかぽか陽気を楽しんでいたが、だんだんと隣にいるシーナが気になってきた。
と言うか、さっきからちらちらとポーラールの手を盗み見られている気がしてならない。
「……弁当のお礼に手でも繋ぎまショーカ?」
女の子もよくやる仕草なのでそういうことなのかと思って言ってみたが、気恥ずかしさから少しふざけた口調になってしまった。
「いいのか?」
「いっすよ。」
シーナの地面に置かれた手に指を絡ませると、ほんの少しだけシーナの指に力が入った。
絡めた指をそのままに、再び二人で前を向き無言で景色を眺める。
最初は緊張して固まっていたがそのうち慣れた。
ぽかぽかといい天気も相まってひじょうに眠い。
ふぁああ、とついつい欠伸が出てしまう。
「一時間ほどで起こすから寝ればいい。」
シーナはそういうと、空いているほうの手で籠から器用に本を取り出した。
ポーラールが寝ている間に読もうということらしい。
挟んでいた栞は、紫陽花を押し花にしたもので見るからに手作りだった。
温かな陽だまり、
青々と輝く芝生、
時おり頬を撫でるひんやりした風、
本のページを捲る耳障りのいい音、
抗いようがなく、訪れた睡魔にポーラールはいつの間にか目を閉じていた。
「ふわぁあ~」
ポーラールが目を覚ますと先ほどと景色は変わっていない。
空の色も寝る前と同じだ。
体が軽く、ものすごく寝足りた気分だが、時間はそんなに経っていないだろう。
「もう起きたのか。」
寝起き特有のぼんやりとした思考のまま、顔を上げると至近距離に本を読むシーナの顔があった。
いつの間にかシーナの肩に寄りかかって眠っていたらしい。
「肩すんません。
どのくらい寝てたっすか?」
「まだ一時間も経っていない。」
「そっすか。」
未だ近い距離にあるシーナの顔を見つめる。
(やっぱ綺麗な顔してんな……)
ポーラールお気に入りの藍色の瞳もそうだが、スッと通った鼻筋も下唇だけ少しだけぽってりした口元も全てが芸術品のように整っている。
視線が気になったのか、本に目を落としていたシーナがポーラールに向かって顔を上げた。
(...あぁ、キスしてぇな。)
ぼんやりと眠気を残した脳ミソは本能のまま動けと指示を出したらしい。
ポーラールは唇を合わせようと顔を傾けゆっくりシーナに近づけてゆく。
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