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『ダイセイジャー!』になっておっても、なんらおかしいことはあるまいて。
しおりを挟む「教皇様、ありがとうございました」
「よいよい、構わんよ。誰か、シスター・ソフィアの縄を解いてやってくれ」
これも、強欲な俗物と狂信者の尻拭いの一環じゃからのー……よもや、まだこのようにアホみたいな後始末が残ってはおらぬだろうな? と、非常に厭過ぎる予感が過ぎった。
うむ、きっと気のせいに違いないっ!!
「あ、あたしは、どうすれば……」
「まぁ、減った分の寿命は取り返せはせんからのぅ」
「そ、そんなっ……」
「ええ。取り戻せはしませんが、神聖な気に満ちた場所で精進潔斎すれば、多少の回復は見込めます。どうしますか? シスター・カスリン」
我が同士のばばあが、冷えた眼差しでシスター・カスリンへ問う。
「し、死にたくないっ……」
「では、今から水垢離をして穢れを全て払って来なさい」
と、シスター・カスリンは修道女に連れられて退出して行った。
色情狂いには、禁欲&節制生活はちぃとばかり厳しいかもしれんがのう。とは言え、少しでも長生きをしたければ、その生活を続け、生命力の回復に努めるしかないからの。仕方あるまいて。
「いやはや、教皇猊下もお人が悪い。神聖魔術を行使できる本物の聖者へと至っていたのでしたら、そう仰って頂ければ誰も猊下のことを『漁夫の利教皇』や『ぽっと出教皇』などと揶揄されたりはしませんのに」
と、中立派の司祭が言いよった。
「言われてもの? 別に神聖魔術の行使ができるのはわしだけじゃないからの。のう?」
わしの言葉に、うんうん頷くのはわしが無理矢理地位を上げた同士達。ぎょっとした顔で辺りをきょろきょろ見回すのは、中堅以下の司祭や俗物、狂信者のシンパの者達。
「ほれ? そこのばばあは死ぬ手前の瀕死の重傷なら余裕で治せる大聖女じゃし」
後始末死の行軍中、わしや他のじじばば共の心臓が何度か止まっても無理矢理回復させておったの、見てなかったんかの?
「っ!!」
「そこのじじいは聖具『真理の鏡』を扱える聖人じゃし、あっちのじじいも、名持ちどころか爵位持ちの悪魔を祓える聖者じゃよ」
「っ!?」
「そういう猊下こそ。片手間に神聖魔術を扱える大聖者ですよね」
「猊下が大聖者っ!?」
「そう驚くことでもあるまいて。ほれ、巷でよく聞くじゃろ? 三十過ぎて清いままだと魔法使い。四十過ぎれば賢者。わし、この年まで敬虔に神に祈りを捧げ続けてめっちゃ清い身じゃし。『ダイセイジャー!』になっておっても、なんらおかしいことはあるまいて。のう?」
と、またもやうんうんと頷くのは我が同士達。そして、驚愕する者達。
「ど、どのようなつらい修行をすれば大聖者へと至れるのですか?」
シスター・ソフィアが尊敬の眼差しでわしや同士達を見詰める。
「わしは、特につらい修行とかはしとらんのぅ。敬虔に神に祈りを捧げ、日々心穏やかに過ごしておるだけじゃ。強いて言えば……」
「強いて言えば、なんでしょうか?」
「なるべくは邪な心を持たぬことじゃな」
そう言うと、俗物のシンパの者達の顔が引き攣り、狂信者のシンパ達の顔が勝ち誇ったような顔に変わる。
「まぁ、神は平穏を、愛を尊んでおられるからの。幾ら教義に従順で忠実であろうとしても、それに傲り昂り、諍いや不和の種を撒き、他者を貶め、傷付け、尊厳を踏み躙るような行為を平気でするような者は聖人にはなれはしまいよ。異教徒であろうと、人は人。『汝、隣人を愛せ』というじゃろ。異なる教義を信じる者も、神の存在を信じぬ者とて、普く全てが隣人じゃ」
続けた言葉、狂信者のシンパ共がわしへギロリとキツい視線を向ける。ヤだ、コワい。
純然たる事実なんじゃけどのぅ?
「そ、それで本当に大聖者へと至れるのでしょうかっ?」
「さあ、のぅ? わし、気付けば数十年前から神聖魔術使えておったし」
「そんなに昔から神聖魔術を行使できていたなら、どうしてそう主張しないんですかっ!?」
と、目を吊り上げるのは中立派の司祭。
「猊下が、神聖魔術を行使できていたと知っていたら、ここ数十年間の教皇の座を巡っての争いは起こっていなかったでしょうにっ!!」
おおぅ……青筋じゃ。本気で怒っておる。こっちもこっちで、狂信者共より怖いかもしれぬな。
「やー、わしに言われてものぅ? だってのぅ、当時から神聖魔術を使えるの、わしだけじゃなかったんじゃよ。わしより、地位もある司祭や長の付く役職の方も神聖魔術を使えたはずじゃし。そこに、まだ若かりし頃のわしが、神聖魔術を使用できるというだけで、教皇へと名乗り出ることなどできようはずも無かろうて。違うかの?」
そもそもわし、若い頃から出世なんぞに全~く興味無かったしの。
「それは……」
「それにの、後天的に聖属性の魔力を帯びることはそんなに珍しいことでもないからの」
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