これでもう、『恥ずかしくない』だろう?

月白ヤトヒコ

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だって、『恥ずかしい』のでしょう?

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「彼女を侮辱するなっ!?」

 婚約者の義弟が前に出て彼女を庇った。

「こんな女が、義理とは言え姉だなんて僕は恥ずかしいですよっ! いい加減にしてくださいっ!!」

 憎々しげな言葉に同意する。

「全くだ。こんな女が婚約者だなんて、わたしも恥ずかしい。できるものなら、今すぐに婚約破棄してやりたい程に忌々しい」

 俺も、こんなに性根の醜い女が婚約者で恥ずかしい。彼女に居た堪れない。

「そうですか、わかりました。では、皆様ごきげんよう」

 呆れ顔で立ち去ろうとする婚約者を呼び止める。

「待て、彼女に謝るんだ」

 せめて謝罪をさせないと気が済まない。

「俺も、あまり乱暴な真似はしたくない」

 俺の護衛になる予定の友人が婚約者の進路を塞ぐ。

「わたくし、単にここを通り掛かっただけですわ。いきなりラブロマンスを模した小芝居が始まって、無理矢理キャストを要求されるとわかっていましたら、通りませんでしたのに」
「小芝居だとっ!?」

 どこまで俺達を馬鹿にする気だっ!?

「違いまして? ああ、あなた? わたくしに危害を加えるのであれば、学園、警邏、貴族院へと報告致しますので。将来、騎士には成れなくなりますわね」
「脅す気かっ!? 卑怯だぞ貴様っ!」
「あら? 複数人で女一人を取り囲んで喚き散らしておいて。どの口が仰るのかしら? ちなみに、瑕疵の無い相手へ謝罪の強要をするのは侮辱罪に当たりますの。知ってまして?」

 小賢しくも、よく口の回る女だな!

「チッ! もういい! さっさと行け!」

 思わず舌打ちを洩らし、婚約者を追い払った。

 そんなことがあってから――――

 婚約者の義弟の姿が見えなくなった。偶々体調が悪いだけだと思ったが、数日間休んでいる。

 彼女が不安そうに、「なにかあったのかもしれないわ……だって、あの方……彼と、同じ家に暮らしているんでしょう?」と婚約者の義弟を心配するので、婚約者を探し出してアイツのことを問い質すことにした。

「おい貴様! アイツになにをしたっ!?」

 みんなで婚約者に詰め寄ると……

「彼になにをしたんですかっ!? どうして学校に来ないのっ!?」
「なんのことでしょうか?」

 しれっとした太々しい態度。 

「あなたでしょうっ!? 一体、彼になにをしたのですかっ!?」
「監禁などは犯罪だぞ!」
「わたくしが、誰を監禁するというのです?」
「貴様の義弟だっ!? アイツがここ数日登校してない。お前が、なにかしたに決まっている。アイツをどうしたっ!? 義理とは言え、お前の弟だろうが!」
「ああ、彼のことでしたか。彼なら、もうわたくしの義弟ではありません。養子縁組を解除して、実家へ戻しました」
「は?」
「え? なん、で? 彼が一体なにをしたというんですかっ? なんで、そんな酷いことができるんですかっ!?」

 彼女が、小刻みに震えながらも潤んだ瞳で健気にも俺の婚約者を糾弾する。俺達は、そんな毅然とした彼女を守るように取り囲む。彼女が傷付けられないように。

「養子縁組の解消を決めたのは父なので、わたくしに言われても困りますわ。ご不満があるのでしたら、父にお話をお願いします。まずは、貴族家当主へと面会の許可を求める書類申請を出してくださいませ。お名前の名義は……婚約者様、あなたの名義では如何でしょうか? お宅の家の代表、もしくはわたくしの婚約者として、重要なお話があると言えば、父との面会が叶う可能性はありましてよ? まあ、もう一度彼と我が家の養子縁組を申請したところで、一蹴されるでしょうけど」
「っ!?」

 婚約者の父親に面会申請だとっ?

「なんで? どうして、なにも悪くない彼にそんな酷いことができるんですか?」
「なぜ、と尋ねるのでしたら……彼が、わたくしに敵対する、と公言したからですわ。だって、『恥ずかしい』のでしょう? わたくしが義姉であることが。もう、義理の姉弟ではないのだから、恥ずかしくはないでしょう?」
「それくらいのことでかっ!?」


――――――――

 ※前作の、【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】と、【なにを言う。『恥ずかしい』のだろう?】を読んでいない方にもわかるようにという前提で書いているので、次の話の途中までは【だって~】と内容が被っています。

 前の話読んだよー。という方は、次の話までお待ちください。(*>∀<*)

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