わたくしと婚約破棄して、異母姉と婚約するですって? 宜しい、ならば追放だ!

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
2 / 5

その頭空っぽ節穴野郎の空っぽ頭に、異母姉がせっせとお花畑を栽培し始めやがった。

しおりを挟む



 あの異母姉……入学初日から、色々とかましてくれやがったっ!?

 学園側が気を遣ったのか、異母姉とは違うクラスなので、後から聞いたが――――

「ついこの前、子爵家に引き取られたばかりで……貴族社会には不慣れで、その……妹には、よく叱られていますが……みなさん、どうかよろしくお願いします!」

 と、教室で涙目と笑顔を駆使したあざとい自己紹介しやがったらしい。

 それ以来、『健気にも貴族社会に馴染もうとしている、平民出身の天真爛漫な美少女』と噂されている。主に、異母姉の容姿と、貴族令嬢としては無礼気味な気安い口調と気軽なボディータッチというコンボにたぶらかされた野郎共にな!

 お陰で、わたしは平民から貴族家に引き取られたばかりの義姉・・につらく当たる、『地味顔で性格悪い妹』という評判を立てられている。

 なにが、義姉だ! 手前ぇはクソ親父と愛人との間に生まれた異母姉だろが!

 あと、異母姉が野郎共を取り巻きにして逆ハーレム的様相を呈しているのを、

「あなた、あの方の妹なのでしょう? どうにかしてくださいな」

 と、高位貴族の令嬢方がわたしに苦情と圧を掛けるのはやめて頂きたいです。マジで。

 わたし、まだギリ虐げられていないけど、義母と異母姉の視線とか言動がちょっとずつ当たりキツくなって来てる感じだし。

 そんな風に、少しずつわたしが追い込まれている感覚を味わいながらも我慢して耐えているときだった。

 貴族学園の二学期終了前の交流会パーティーで、わたしの婚約者が異母姉をエスコートしたいと言い出した。

 まあ、それは別にいい。

 最近わたしに、

「義理とは言え、自分の姉となった……こんなに可憐で無垢な人を虐げるとは」

 だとか寝言を宣って来ていたし。おい、手前ぇのその横で、『可憐で無垢』らしいクソ女が、わたしにめっちゃ勝ち誇った面してっからな?

 まあ、そんなこともどうでもいい。

 その野郎、うちより爵位上の伯爵家の三男で顔がいいだけで割と頭空っぽだし。婿入りとは言え、うちより格上のクセに次期子爵はわたしということで、お察しの残念低能スペック野郎だ。

 わたしより一つ年上だが、なんとびっくり、貴族学園入学当時から自分の宿題を、まだ入学前のわたしに「婚約者なんだから俺を助けるのは当然だろ」と臆面も無く言ってのけるクズ野郎だ。

 ちなみに、年下のわたしよりも自力で宿題した方が成績悪くなるという残念さよ。相手方の家族の、「どうしても貴族学園だけは卒業させてやってくれ!」という懇願と、予習のつもりで宿題は偶にやってやったがな。無論、難易度によって変わる報酬付きでな。

 お陰で結構稼がせてもらった。家を追い出されても、数ヶ月は暮らして行けるくらいには。

 そういう感じに顔と家柄以外は諸々残念だったが、目も節穴ということが判明した。

 で、その頭空っぽ節穴野郎の空っぽ頭に、異母姉がせっせとお花畑を栽培し始めやがった。

 わたしは伯爵家の頭空っぽ不良債権を、家付き子爵令嬢ということで押し付けられたとの解釈で婚約していたからな?

 婚約者とは言え、そんな野郎が異母姉に取られたところで、なんの痛痒も感じない。

 むしろ、異母姉が他の野郎共からわたしの婚約者にターゲット変更してくれて、ちょっとほっとしているところだ。

 他の男漁るのをやめた理由はあれか? 高位貴族へ嫁入りするとなると、厳しい淑女教育&花嫁修行という名の平民嫁いびりが待っていると思ったからか?

 まあ、平民出身で貴族の奥方に嫁として認められたいなら、そりゃあ血の滲むような努力しなきゃ貴族夫人なんて務まらんだろ。

 その点、我が家へ婿入りした旦那に子爵をしてもらえば、割合楽できるもんな。

 とりあえず、婚約条件の要項確認をしておこう。あの野郎有責で婚約解消へ持って行けるように! そして、無事婚約解消できたら今までの奴の宿題で稼いだ報酬を、伯爵にちょっぴり感謝してやってもいい。伯爵は、わたしに不良債権の世話を押し付けた元凶だけどな!

 と、そう思って準備を進めていたときだった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

侯爵家を守るのは・・・

透明
恋愛
姑に似ているという理由で母親に虐げられる侯爵令嬢クラリス。 母親似の妹エルシーは両親に愛されすべてを奪っていく。 最愛の人まで妹に奪われそうになるが助けてくれたのは・・・

(完結)初恋の勇者が選んだのは聖女の……でした

青空一夏
ファンタジー
私はアイラ、ジャスミン子爵家の長女だ。私には可愛らしい妹リリーがおり、リリーは両親やお兄様から溺愛されていた。私はこの国の基準では不器量で女性らしくなく恥ずべき存在だと思われていた。 この国の女性美の基準は小柄で華奢で編み物と刺繍が得意であること。風が吹けば飛ぶような儚げな風情の容姿が好まれ家庭的であることが大事だった。 私は読書と剣術、魔法が大好き。刺繍やレース編みなんて大嫌いだった。 そんな私は恋なんてしないと思っていたけれど一目惚れ。その男の子も私に気があると思っていた私は大人になってから自分の手柄を彼に譲る……そして彼は勇者になるのだが…… 勇者と聖女と魔物が出てくるファンタジー。ざまぁ要素あり。姉妹格差。ゆるふわ設定ご都合主義。中世ヨーロッパ風異世界。 ラブファンタジーのつもり……です。最後はヒロインが幸せになり、ヒロインを裏切った者は不幸になるという安心設定。因果応報の世界。

王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~

葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」 男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。 ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。 それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。 とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。 あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。 力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。 そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が…… ※小説家になろうにも掲載しています

妹は病弱アピールで全てを奪い去っていく

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢マチルダには妹がいる。 妹のビヨネッタは幼い頃に病気で何度か生死の境を彷徨った事実がある。 そのために両親は過保護になりビヨネッタばかり可愛がった。 それは成長した今も変わらない。 今はもう健康なくせに病弱アピールで周囲を思い通り操るビヨネッタ。 その魔の手はマチルダに求婚したレオポルドにまで伸びていく。

(完)婚約破棄ですか? なぜ関係のない貴女がそれを言うのですか? それからそこの貴方は私の婚約者ではありません。

青空一夏
恋愛
グレイスは大商人リッチモンド家の娘である。アシュリー・バラノ侯爵はグレイスよりずっと年上で熊のように大きな体に顎髭が風格を添える騎士団長様。ベースはこの二人の恋物語です。 アシュリー・バラノ侯爵領は3年前から作物の不作続きで農民はすっかり疲弊していた。領民思いのアシュリー・バラノ侯爵の為にお金を融通したのがグレイスの父親である。ところがお金の返済日にアシュリー・バラノ侯爵は満額返せなかった。そこで娘の好みのタイプを知っていた父親はアシュリー・バラノ侯爵にある提案をするのだった。それはグレイスを妻に迎えることだった。 年上のアシュリー・バラノ侯爵のようなタイプが大好きなグレイスはこの婚約話をとても喜んだ。ところがその三日後のこと、一人の若い女性が怒鳴り込んできたのだ。 「あなたね? 私の愛おしい殿方を横からさらっていったのは・・・・・・婚約破棄です!」 そうしてさらには見知らぬ若者までやって来てグレイスに婚約破棄を告げるのだった。 ざまぁするつもりもないのにざまぁになってしまうコメディー。中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。途中からざまぁというより更生物語になってしまいました。 異なった登場人物視点から物語が展開していくスタイルです。

高慢な王族なんてごめんです! 自分の道は自分で切り開きますからお気遣いなく。

恋愛
よくある断罪に「婚約でしたら、一週間程前にそちらの有責で破棄されている筈ですが……」と返した公爵令嬢ヴィクトワール・シエル。 婚約者「だった」シレンス国の第一王子であるアルベール・コルニアックは困惑するが……。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

妹の婚約者自慢がウザいので、私の婚約者を紹介したいと思います~妹はただ私から大切な人を奪っただけ~

マルローネ
恋愛
侯爵令嬢のアメリア・リンバークは妹のカリファに婚約者のラニッツ・ポドールイ公爵を奪われた。 だが、アメリアはその後に第一王子殿下のゼラスト・ファーブセンと婚約することになる。 しかし、その事実を知らなかったカリファはアメリアに対して、ラニッツを自慢するようになり──。

(完)婚約破棄ですね、従姉妹とどうかお幸せに

青空一夏
恋愛
私の婚約者は従姉妹の方が好きになってしまったようなの。 仕方がないから従姉妹に譲りますわ。 どうぞ、お幸せに! ざまぁ。中世ヨーロッパ風の異世界。中性ヨーロッパの文明とは違う点が(例えば現代的な文明の機器など)でてくるかもしれません。ゆるふわ設定ご都合主義。

処理中です...