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1現世
魔剣夕月
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夢の中、俺は、異世界にいた。
俺が、机の前に座らされて、分厚い本をひたすら詠唱させられる。
理由は分かっている。
占い師の決めた日時に産まれた子どもは、神官の卵として親元から離されるのが習わしだ。運悪くその日時に当たった子どもは、僅かな金銭を親に渡しただけで、神殿の外に出ることも許されず、こうやった毎日呪文を覚えさせられるだけの毎日を送る。そして、そのまま、成長する。大人になれば下級神官として、上級神官たちの下働きをすることが決まっている。
まずいことに、俺の魔力は高すぎた。上級神官から警戒されてしまった。徐々に立場は悪くなる。嫌がらせやいじめが、日に日に増えていった。無茶な仕事を押し付けられ、無能と罵られて、こき使われる。下級神官となってからも、その日々は続いていた。ひたすら我慢を強いられる。周囲の仲間は、矛先が自分に向くことが怖くて、見て見ぬふり。
ある日、お使いを言い渡されて訪れた倉庫の中に閉じ込められた。寒く暗い倉庫。俺が震えていると、歌声が聞こえてくる。聞いた事もないような美しい優しい声に誘われて、声のする方へ向かうと、そこに大きな黒い剣が、太い鎖につながれて置かれてあった。
魔剣、夕月。
名前は知っている。神殿の中にいる者ならば、誰でも知っている。魔王の魔剣。邪気をはらみ、歴代の魔王の剣として、多くの血を吸ってきた。この国を創立した勇者、この国の王の祖先が、魔王を倒し封印したと聞いている。まさか、こんな所にあるとは、知らなかったが。
夕月が、人間の姿に変わる。ニコリと微笑む黒髪の人。たおやかで優し気だった。
主よ、お待ちしておりました。
先ほどの歌声と同じ優しい声で、夕月が言う。誘われるままに手を伸ばしたところで、俺は目を覚ました。
小さな声で歌を歌っている声が聞こえる。目を覚まして、歌声の方を見ると、夢の中でみた夕月が、ニセに膝枕をし て歌っている。夕月の膝枕で、ニセが眠っている。うらやましい。
「お目覚めですか。分身体」
ニコリと夕月が微笑む。綾香先輩のような眼を引く美人ではないが、どこか寂し気なその笑顔が魅力的だ。
「魔剣、夕月……さん?」
「ふふ。主の過去を夢の中で見ましたか。これだけ近くに居れば、記憶も共有するようになるのですね。面白い」
ニセの髪を愛おしそうに撫でながら、夕月が歌うような声で俺に答える。
「ひょっとして、あのニセにあった夜に周辺の人を助けてくれたのは、夕月さん?」
俺の言葉に、夕月がニコリを笑う。どうやら、正解らしい。
「主が心根で望むことを叶えるのが、私の役目でございますので」
人の命を邪険に扱おうとするニセの心根では、人を殺したくないと思っていると、夕月は言うのだろうか。
「私の邪気を受けて、主は魔王となりましたが、この方は、とても優しい方。自分に攻撃する者はともかく、人を殺すことにまだ抵抗があるのですよ。しかし、それも、こんなことを続けていれば、いつか失われてしまうかもしれませんね。魔剣を帯刀するということは、そういう事です。歴代の魔王も、そうやって、人ならざる者へと変化していきましたし」
なんでもないことのように、夕月が言う。
「一つ、私も提案してもいいですか? 分身体よ」
「提案、事態を収束させる方法?」
「はい。主が魔王で無くなれば、勇者がこれほど執拗に主を追う理由は無くなるでしょう? ならば、分身体よ。私を二つに折ってしまって下さい」
夕月がとんでもないことを言い出す。しかも、それを俺にしろだと?言い返す声が咄嗟に出ない。ニセは、コンビニで『想い人がいる』と言っていた。それは、たぶん夕月だ。あの夢の中で感じたニセの心。間違いない。夕月を自らの分身体に折られて失ったニセは、生きていたとしてどうなるというのだろうか。それこそ、地獄のような苦しみを受けるのではないだろうか。
「勇者に出来るのは、私を封印することだけ。ですが、それでは、主は私をいつか探し出してしまい元の木阿弥になってしまいます。分身体のあなたと、主のみが、私を折ることが出来るのです」
「駄目だ。夕月。それだけは、駄目だ」
いつの間にか起きていたニセが、夕月の頬を撫でながら、夕月を見つめて反論する。心が痛い。ギュッと握り潰されるような痛み。たぶん、これはニセの心の痛み。切なく狂おしい痛みに、俺は涙がにじむ。
夕月が、言葉もなく困ったような顔をして微笑む。まるで、駄々っ子をなだめる母親のような優しい微笑み。本当にこの夕月が魔剣なのだろうか。これほど、愛している人がいるニセが、邪悪な魔王なのだろうか。疑いたくなる。
「あるじの心のままに」
夕月は、穏やかにそう言った。
「なるほど、魔剣に魅入られているわけね」
姫がタピオカをもきゅもきゅ食べながら、偉そうに言う。今、綾香先輩と二人で買い物をして、休憩でタピオカを食べているところらしい。スマホ画面の中の姫と綾香先輩の双子コーデが可愛い。従者たちがいなくなって、姫も最初は不安がっていたものの、産まれて初めての監視の無い自由を満喫しているようだ。
「ずいぶん楽しそうだな、姫。肉親の仇をうつための異世界生活ではなかったのか?」
俺だって、殺しに来られるよりかは、気楽にしてもらっていた方が助かるのだが、どうもこの勇者は、緊張感がない。仇討ちという雰囲気も、王国の存亡を背負ってという気負いも感じられない。ニセと夕月の悲壮感とは、かなりかけ離れている。へっぽこ勇者め。
「だって、私、物心ついた時から、尼僧院にいたのよ。兄上も父上も数回しかあったことないし。そりゃ、亡くなったと聞いた時には悲しかったけれど、まだ実感わかないのよね。それに、魔王を倒したら、速攻帰らないといけないから。折角だしこの世界を満喫しているのよ」
姫がごにょごにょ言い訳をしている。
「そうなのよ。昔の姫の姿を夢で見たのだけれども。ほとんど、お婆さんばかりに囲まれて、礼儀作法や魔法の勉強ばかり。超つまんなそうだったのよ。だから、ちょっと楽しいことも経験してもらおうと思って、私が誘ったの」
綾香先輩が口を挟む。なるほど、俺とニセが夢で経験を共有したのと同じで、綾香先輩と姫も夢でお互いの過去を知ったのか。
「こっちのデストロイ組は、破壊だの監禁だのそんなネガティブな意見しか出てこないから、ビルド代表の勇者ならば、良い方法を思いつくかと相談したんだけれど。無駄そうだな」
こんなタピオカ姫では、解決方法は出ないのではないだろうか。
「失礼ね。私だって、ちゃんと証を持った勇者なの。ええと、なんだって。夕月を折れば、解決するかよね。無理ね。魔王は、多くの命を向こうで奪っているの。そのほとんどは、魔王に攻撃をした国王軍の兵士なんだけれども、それでも、その兵士の家族がいるの。お咎めなしということにはならない。生きて異世界に戻っても、どのみち、罪人になるわ。死刑になるか、一生牢獄か。命を奪うということは、大きなことよ。たとえ理由があっても帳消しにはならないの」
タピオカを吸い込みながら、姫が真剣に答える。簡単に言ってくれるが、ニセが死刑になれば、俺も死ぬんだが。俺は、何もした覚えはない。俺の命は良いのか姫。
「それに夕月は、魔剣よ。邪気をはらみ、所有者を誘惑して悪に染める。どんなに美しく優しげでも、それに魅了されれば、魔力は悪に染まるの。夕月をそのまま野放しにはできないの。折るか、封印するか。それが最善なのよ。勇者としてのベストは、やはり、魔王を倒して夕月を封印すること」
頑なな姫の意見は、変わらないようだ。やはり、話し合いで妥協案を探るのは、難しいのかもしれない。所詮、勇者と魔王は相いれない存在なのかもしれない。
「でも、そうよね。野田君の言う通り、誰も死なない解決方法があるのならば、それが一番よね。どうにかならないの? 姫」
綾香先輩、俺、野島……。まあ、いいけれど。
「綾香……。そうね……。ちょっと考えてみるわ」
考えるんだ。俺が言っても、全く聞く耳を持ってくれなかったのに。まあ、自分の分身体の意見だから、当然か。
「まあ、そんなに急がないで。あの、今度、綾香とアイドルのコンサートに行く約束をしているの。アリーナで観られるの。それ終わってから、詳細を詰める形で……」
「すごいの。姫が、抽選のチケットをゲットしてくれたの。これが、勇者への神の加護ってヤツ?」
二人でウキウキしている。神の加護の無駄遣いもいいところだろう。
いいのか、勇者よ。優先順位おかしくないか?
とにかく討伐以外の可能性も考えてくれるらしいので、良しとして、スマホの通話を切る。
横を見ると、ニセが、ゲームの場面に集中している。定番のRPG。魔王の城に勇者が挑んでいる最中だ。いいのか、魔王がそんなゲームして。
「この勇者、弱いな。綾香姫ですら、もう少しましな魔法を使うぞ」
ニセが、ブツブツ言っている。
「とにかく、向こうでも何か妥協案がないか考えてくれるみたいだよ。聞いてた?」
「知らん。勇者など期待できるか。それよりも、なあ、このフロアの攻略ルートはどこだ」
魔王の城を攻略する魔王。どんな絵面だよ。ポテチとジュースを横に置いて、部屋に籠ってゲーム三昧。小学生の夏休み状態だ。
「いいな。お前の人生は。平坦で平凡だ」
ニセがポツリとつぶやく。かなりディスられた気が一瞬したが、ニセの顔を見れば、本気で羨ましいのだということが分かる。俺がニセの人生を垣間見たのと同じで、ニセも俺の人生を夢で見たのかもしれない。
「いいだろ?」
俺がそう言えば、ニセが少し悲しそうに笑った。
俺が、机の前に座らされて、分厚い本をひたすら詠唱させられる。
理由は分かっている。
占い師の決めた日時に産まれた子どもは、神官の卵として親元から離されるのが習わしだ。運悪くその日時に当たった子どもは、僅かな金銭を親に渡しただけで、神殿の外に出ることも許されず、こうやった毎日呪文を覚えさせられるだけの毎日を送る。そして、そのまま、成長する。大人になれば下級神官として、上級神官たちの下働きをすることが決まっている。
まずいことに、俺の魔力は高すぎた。上級神官から警戒されてしまった。徐々に立場は悪くなる。嫌がらせやいじめが、日に日に増えていった。無茶な仕事を押し付けられ、無能と罵られて、こき使われる。下級神官となってからも、その日々は続いていた。ひたすら我慢を強いられる。周囲の仲間は、矛先が自分に向くことが怖くて、見て見ぬふり。
ある日、お使いを言い渡されて訪れた倉庫の中に閉じ込められた。寒く暗い倉庫。俺が震えていると、歌声が聞こえてくる。聞いた事もないような美しい優しい声に誘われて、声のする方へ向かうと、そこに大きな黒い剣が、太い鎖につながれて置かれてあった。
魔剣、夕月。
名前は知っている。神殿の中にいる者ならば、誰でも知っている。魔王の魔剣。邪気をはらみ、歴代の魔王の剣として、多くの血を吸ってきた。この国を創立した勇者、この国の王の祖先が、魔王を倒し封印したと聞いている。まさか、こんな所にあるとは、知らなかったが。
夕月が、人間の姿に変わる。ニコリと微笑む黒髪の人。たおやかで優し気だった。
主よ、お待ちしておりました。
先ほどの歌声と同じ優しい声で、夕月が言う。誘われるままに手を伸ばしたところで、俺は目を覚ました。
小さな声で歌を歌っている声が聞こえる。目を覚まして、歌声の方を見ると、夢の中でみた夕月が、ニセに膝枕をし て歌っている。夕月の膝枕で、ニセが眠っている。うらやましい。
「お目覚めですか。分身体」
ニコリと夕月が微笑む。綾香先輩のような眼を引く美人ではないが、どこか寂し気なその笑顔が魅力的だ。
「魔剣、夕月……さん?」
「ふふ。主の過去を夢の中で見ましたか。これだけ近くに居れば、記憶も共有するようになるのですね。面白い」
ニセの髪を愛おしそうに撫でながら、夕月が歌うような声で俺に答える。
「ひょっとして、あのニセにあった夜に周辺の人を助けてくれたのは、夕月さん?」
俺の言葉に、夕月がニコリを笑う。どうやら、正解らしい。
「主が心根で望むことを叶えるのが、私の役目でございますので」
人の命を邪険に扱おうとするニセの心根では、人を殺したくないと思っていると、夕月は言うのだろうか。
「私の邪気を受けて、主は魔王となりましたが、この方は、とても優しい方。自分に攻撃する者はともかく、人を殺すことにまだ抵抗があるのですよ。しかし、それも、こんなことを続けていれば、いつか失われてしまうかもしれませんね。魔剣を帯刀するということは、そういう事です。歴代の魔王も、そうやって、人ならざる者へと変化していきましたし」
なんでもないことのように、夕月が言う。
「一つ、私も提案してもいいですか? 分身体よ」
「提案、事態を収束させる方法?」
「はい。主が魔王で無くなれば、勇者がこれほど執拗に主を追う理由は無くなるでしょう? ならば、分身体よ。私を二つに折ってしまって下さい」
夕月がとんでもないことを言い出す。しかも、それを俺にしろだと?言い返す声が咄嗟に出ない。ニセは、コンビニで『想い人がいる』と言っていた。それは、たぶん夕月だ。あの夢の中で感じたニセの心。間違いない。夕月を自らの分身体に折られて失ったニセは、生きていたとしてどうなるというのだろうか。それこそ、地獄のような苦しみを受けるのではないだろうか。
「勇者に出来るのは、私を封印することだけ。ですが、それでは、主は私をいつか探し出してしまい元の木阿弥になってしまいます。分身体のあなたと、主のみが、私を折ることが出来るのです」
「駄目だ。夕月。それだけは、駄目だ」
いつの間にか起きていたニセが、夕月の頬を撫でながら、夕月を見つめて反論する。心が痛い。ギュッと握り潰されるような痛み。たぶん、これはニセの心の痛み。切なく狂おしい痛みに、俺は涙がにじむ。
夕月が、言葉もなく困ったような顔をして微笑む。まるで、駄々っ子をなだめる母親のような優しい微笑み。本当にこの夕月が魔剣なのだろうか。これほど、愛している人がいるニセが、邪悪な魔王なのだろうか。疑いたくなる。
「あるじの心のままに」
夕月は、穏やかにそう言った。
「なるほど、魔剣に魅入られているわけね」
姫がタピオカをもきゅもきゅ食べながら、偉そうに言う。今、綾香先輩と二人で買い物をして、休憩でタピオカを食べているところらしい。スマホ画面の中の姫と綾香先輩の双子コーデが可愛い。従者たちがいなくなって、姫も最初は不安がっていたものの、産まれて初めての監視の無い自由を満喫しているようだ。
「ずいぶん楽しそうだな、姫。肉親の仇をうつための異世界生活ではなかったのか?」
俺だって、殺しに来られるよりかは、気楽にしてもらっていた方が助かるのだが、どうもこの勇者は、緊張感がない。仇討ちという雰囲気も、王国の存亡を背負ってという気負いも感じられない。ニセと夕月の悲壮感とは、かなりかけ離れている。へっぽこ勇者め。
「だって、私、物心ついた時から、尼僧院にいたのよ。兄上も父上も数回しかあったことないし。そりゃ、亡くなったと聞いた時には悲しかったけれど、まだ実感わかないのよね。それに、魔王を倒したら、速攻帰らないといけないから。折角だしこの世界を満喫しているのよ」
姫がごにょごにょ言い訳をしている。
「そうなのよ。昔の姫の姿を夢で見たのだけれども。ほとんど、お婆さんばかりに囲まれて、礼儀作法や魔法の勉強ばかり。超つまんなそうだったのよ。だから、ちょっと楽しいことも経験してもらおうと思って、私が誘ったの」
綾香先輩が口を挟む。なるほど、俺とニセが夢で経験を共有したのと同じで、綾香先輩と姫も夢でお互いの過去を知ったのか。
「こっちのデストロイ組は、破壊だの監禁だのそんなネガティブな意見しか出てこないから、ビルド代表の勇者ならば、良い方法を思いつくかと相談したんだけれど。無駄そうだな」
こんなタピオカ姫では、解決方法は出ないのではないだろうか。
「失礼ね。私だって、ちゃんと証を持った勇者なの。ええと、なんだって。夕月を折れば、解決するかよね。無理ね。魔王は、多くの命を向こうで奪っているの。そのほとんどは、魔王に攻撃をした国王軍の兵士なんだけれども、それでも、その兵士の家族がいるの。お咎めなしということにはならない。生きて異世界に戻っても、どのみち、罪人になるわ。死刑になるか、一生牢獄か。命を奪うということは、大きなことよ。たとえ理由があっても帳消しにはならないの」
タピオカを吸い込みながら、姫が真剣に答える。簡単に言ってくれるが、ニセが死刑になれば、俺も死ぬんだが。俺は、何もした覚えはない。俺の命は良いのか姫。
「それに夕月は、魔剣よ。邪気をはらみ、所有者を誘惑して悪に染める。どんなに美しく優しげでも、それに魅了されれば、魔力は悪に染まるの。夕月をそのまま野放しにはできないの。折るか、封印するか。それが最善なのよ。勇者としてのベストは、やはり、魔王を倒して夕月を封印すること」
頑なな姫の意見は、変わらないようだ。やはり、話し合いで妥協案を探るのは、難しいのかもしれない。所詮、勇者と魔王は相いれない存在なのかもしれない。
「でも、そうよね。野田君の言う通り、誰も死なない解決方法があるのならば、それが一番よね。どうにかならないの? 姫」
綾香先輩、俺、野島……。まあ、いいけれど。
「綾香……。そうね……。ちょっと考えてみるわ」
考えるんだ。俺が言っても、全く聞く耳を持ってくれなかったのに。まあ、自分の分身体の意見だから、当然か。
「まあ、そんなに急がないで。あの、今度、綾香とアイドルのコンサートに行く約束をしているの。アリーナで観られるの。それ終わってから、詳細を詰める形で……」
「すごいの。姫が、抽選のチケットをゲットしてくれたの。これが、勇者への神の加護ってヤツ?」
二人でウキウキしている。神の加護の無駄遣いもいいところだろう。
いいのか、勇者よ。優先順位おかしくないか?
とにかく討伐以外の可能性も考えてくれるらしいので、良しとして、スマホの通話を切る。
横を見ると、ニセが、ゲームの場面に集中している。定番のRPG。魔王の城に勇者が挑んでいる最中だ。いいのか、魔王がそんなゲームして。
「この勇者、弱いな。綾香姫ですら、もう少しましな魔法を使うぞ」
ニセが、ブツブツ言っている。
「とにかく、向こうでも何か妥協案がないか考えてくれるみたいだよ。聞いてた?」
「知らん。勇者など期待できるか。それよりも、なあ、このフロアの攻略ルートはどこだ」
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「いいな。お前の人生は。平坦で平凡だ」
ニセがポツリとつぶやく。かなりディスられた気が一瞬したが、ニセの顔を見れば、本気で羨ましいのだということが分かる。俺がニセの人生を垣間見たのと同じで、ニセも俺の人生を夢で見たのかもしれない。
「いいだろ?」
俺がそう言えば、ニセが少し悲しそうに笑った。
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