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2異世界
影武者
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ニセの説明によれば、王国の隣国、ニグルという国が、クレムス川を挟んでニセたちの王国聖アジムの隣に存在している。
このアジムは、初代勇者の名前だそうだ。あいつか、あの女に騙されたアホ勇者。国の名前にもなっているのか。
まあ、初代勇者がいまいちだったのは置いといて、そのニグルが、王国がニセたちのデストロイ行動によって滅亡しかけたのをいいことに、勢力を伸ばし、王国を再建している今でも虎視眈々と狙っているのだそうだ。
「で、奴らは、この夕月を手に入れることで、この国を手に入れようと画策している。」
「ふうん。なんだ。じゃあ、夕月を渡さなければいいだけだろ?しかも、夕月は、姫とニセの二人にしか従わない。」
どこで俺たちの力が必要だというのだろうか?
「だから、俺と姫を暗殺しようとしているんだ。」
「えっと、ええ?」
俺たちに何をさせようというのか?まさか??
「影武者だ。」
「やっぱりかよ。危険だろうが。てか、俺が死ねば結果ニセお前も死ぬくせに、どういうことだ。」
意味が分からない。
権力者が自分の安全のために、影武者を置くことはまあ歴史上よくあることだ。この国を今はニセと姫が治めているのだから、影武者を利用するなんてこともあるのだろう。だが、そっくりな風貌だからって、魔法も使えない俺と綾香先輩を影武者にしては、ただ死ぬ確率が増えるだけだろう。
「最後まで聞いてよ。」
姫がまあまあと、俺をなだめる。
「あのね。必要なのは、人手なの。自分そっくりな人間が二組。」
姫が、全く言葉が足りないニセの代わりに説明してくれる。
そのニグルの攻撃を防ぐためには、ニグルよりも強大な力が、夕月以外にもあることを示し、諦めさせることが一番だろうということで、古い文献を調べた。
この国のラストダンジョンの最終武器であったはずの『賢者の杖』は、ニセと夕月が魔王時代にぶっ潰してしまった。
では、他の宝物は、何か。それは、隣国ニグルの宝物。『ニグルの盾』である。
「おい、それはよそ様の宝物であって、勝手に持っていたら駄目だろう?」
「でも、攻めてくるっていうんだから、平和的に相手の力を削ぐには、それが一番なのよ。我が国の国力は上がり、相手の国力は下がる。一石二鳥でしょ?それに相手だって夕月を奪おうとしているんだから、これってイーブンでしょ?」
「なるほどね。」
なるほどね・・・つまり、綾香先輩は、納得したんだ。
このどっちが先にぶんどるか、運動会の旗取り種目のような状況、どこに納得要素があるのか。
「そもそも、お前たちが恨みに任せて『賢者の杖』を破壊したのが悪いんだろう?」
「ふふふ。その時は、賢者が全ての元凶かと思っておりましたので。」
にこやかな夕月。あんなに憂いを秘めたしっとり美人だったのに、こんなに朗らかにキャラ変して・・・。幸せそうで良かった。でもな、夕月。そこ笑うポイントではない。
「今、それを言っても仕方ないだろうが。ともかく、隣国から、暗殺者を連れて露骨に向こうの王太子がこちらに挨拶に来る。その王太子の相手をすると同時に、向こうに行く。あいつらが混乱している内に、『ニグルの盾』を手に入れるのだ。」
ニセがのたまう。
まじかよ・・・。
隣国に行くのも、王国に残るのも危険な役割。
「協力しろ。どのみち、俺たちが死ねばお前たちも死ぬ。協力しなければ、お前の人生はどうせ終わるんだ。」
ニヤリと笑う元魔王ニセ。
まじムカつくが、俺は協力せざるを得なかった。
このアジムは、初代勇者の名前だそうだ。あいつか、あの女に騙されたアホ勇者。国の名前にもなっているのか。
まあ、初代勇者がいまいちだったのは置いといて、そのニグルが、王国がニセたちのデストロイ行動によって滅亡しかけたのをいいことに、勢力を伸ばし、王国を再建している今でも虎視眈々と狙っているのだそうだ。
「で、奴らは、この夕月を手に入れることで、この国を手に入れようと画策している。」
「ふうん。なんだ。じゃあ、夕月を渡さなければいいだけだろ?しかも、夕月は、姫とニセの二人にしか従わない。」
どこで俺たちの力が必要だというのだろうか?
「だから、俺と姫を暗殺しようとしているんだ。」
「えっと、ええ?」
俺たちに何をさせようというのか?まさか??
「影武者だ。」
「やっぱりかよ。危険だろうが。てか、俺が死ねば結果ニセお前も死ぬくせに、どういうことだ。」
意味が分からない。
権力者が自分の安全のために、影武者を置くことはまあ歴史上よくあることだ。この国を今はニセと姫が治めているのだから、影武者を利用するなんてこともあるのだろう。だが、そっくりな風貌だからって、魔法も使えない俺と綾香先輩を影武者にしては、ただ死ぬ確率が増えるだけだろう。
「最後まで聞いてよ。」
姫がまあまあと、俺をなだめる。
「あのね。必要なのは、人手なの。自分そっくりな人間が二組。」
姫が、全く言葉が足りないニセの代わりに説明してくれる。
そのニグルの攻撃を防ぐためには、ニグルよりも強大な力が、夕月以外にもあることを示し、諦めさせることが一番だろうということで、古い文献を調べた。
この国のラストダンジョンの最終武器であったはずの『賢者の杖』は、ニセと夕月が魔王時代にぶっ潰してしまった。
では、他の宝物は、何か。それは、隣国ニグルの宝物。『ニグルの盾』である。
「おい、それはよそ様の宝物であって、勝手に持っていたら駄目だろう?」
「でも、攻めてくるっていうんだから、平和的に相手の力を削ぐには、それが一番なのよ。我が国の国力は上がり、相手の国力は下がる。一石二鳥でしょ?それに相手だって夕月を奪おうとしているんだから、これってイーブンでしょ?」
「なるほどね。」
なるほどね・・・つまり、綾香先輩は、納得したんだ。
このどっちが先にぶんどるか、運動会の旗取り種目のような状況、どこに納得要素があるのか。
「そもそも、お前たちが恨みに任せて『賢者の杖』を破壊したのが悪いんだろう?」
「ふふふ。その時は、賢者が全ての元凶かと思っておりましたので。」
にこやかな夕月。あんなに憂いを秘めたしっとり美人だったのに、こんなに朗らかにキャラ変して・・・。幸せそうで良かった。でもな、夕月。そこ笑うポイントではない。
「今、それを言っても仕方ないだろうが。ともかく、隣国から、暗殺者を連れて露骨に向こうの王太子がこちらに挨拶に来る。その王太子の相手をすると同時に、向こうに行く。あいつらが混乱している内に、『ニグルの盾』を手に入れるのだ。」
ニセがのたまう。
まじかよ・・・。
隣国に行くのも、王国に残るのも危険な役割。
「協力しろ。どのみち、俺たちが死ねばお前たちも死ぬ。協力しなければ、お前の人生はどうせ終わるんだ。」
ニヤリと笑う元魔王ニセ。
まじムカつくが、俺は協力せざるを得なかった。
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今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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