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2異世界
共同戦線
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当然のように、俺と綾香先輩は別行動。魔法が使えない二人が一緒にいれば、何か不測の事態が起きた時に対応できないから。
姫がこの国に残った方が良いだろう。ということは、綾香先輩が隣国に向かうことになる。
「大丈夫なのか?綾香先輩にそんな危険な任務。」
綾香先輩に何かあっては困る。
「行くのも、残るのも、両方危険だと言っているだろ。相変わらず察しが悪い。」
元魔王のニセ、聖者のくせに口が悪い。
「大丈夫よ。ニセ君強いし。」
綾香先輩は、ニセの強さを信頼している。
まあ、俺たちの世界で暴れていたニセの力を綾香先輩は見ているし、この国を破壊しまくったニセの所業も姫の過去を追体験して知っている。
この魔法世界で魔王にまでなったニセの実力は、信頼しない方がおかしい。
「夕月はどうするんだよ。」
「そんなの英司様・・・ニセ様一択です。」
そうだった。ラブコメ状態忘れていた。
魔王時代からニセの傍にいてラブラブだったのだから、夕月が姫とニセのどちらか一方とだけ一緒にいろと言われれば、即答でニセを選ぶのは、分かり切ったことだ。
勝ち誇ったような顔で、ニセの腕にしがみつく夕月。
「姫主様。夕月が、主からこのように離れずにお守りしますゆえ。どうかご安心を。」
にこやかな夕月の言葉。だが、その言葉には、姫への牽制とマウントであふれている。姫は、イライラして夕月を見ている。
「そうらしい。まあ、夕月と俺がいれば、綾香の安全は保障しよう。」
全く夕月のマウントを理解していないニセが、そう言葉を足せば、より姫が焦り出す。
「綾香、頼んだわよ。夕月がベタベタとイチャラブしようとするのを防ぐのは、あなたの腕にかかっているの。」
姫が綾香の手を握りしめて懇願する。
「分かっている。二人きりの時間を作らないように頑張るわ。」
綾香先輩が、まかせておいてと、姫に約束する。
ミッションの内容が大幅に変化している気がするのだけれども、大丈夫なのかな。
ニセの前途多難なラブコメ旅の行く末に一抹の不安を覚える。
この世界の様子に計画までの間に慣れておいた方が良いだろうということで、俺は姫と街に出る。
本当は、綾香先輩と異世界デートがしてみたかったのだが、やはり異世界魔法班である姫と一緒に居なければ危険だし、四人一緒に出掛けるのは目立ってしまう。
街は、所々破壊されている。
これは、魔王時代のニセと夕月が破壊したものと、その後街に入り込んだ魔物のしわざと両方が原因らしい。
現在は、魔物の心配も無くなり、町は復興のために皆が努力している最中。
魔法世界であるのに、普通にハンマーやシャベルで瓦礫を移動して、石を手で積み上げて作業している。姫の話によれば、魔力は個人差が大きく、ニセのような大魔法を使える人間は、ほぼいないらしい。
天才が悪に染まれば、こんなに恐ろしいことになる。
ニセが、人間らしい心を得て、聖者になってくれてよかった。
「綾香とは、どうなっているの?」
市場で果物を見ていた俺に、姫がワクワクして尋ねてくる。
「どうって・・・。どうも。まだ、綾香先輩に告白の返事ももらっていないし。」
「あれ、そうなんだ。なんで?」
なんでと俺に聞かれても困る。
なんなら、俺が聞きたい。どんな条件がどう発動することで、綾香先輩の許可が下りて、付き合うなんて状態になれるのか。陰キャの俺に察することなんで出来る訳がない。
りんごっぽい果物を買いながら、なんで、でしょうかね?なんて曖昧に答える。
「それより、姫はどうなの?ニセのことが好きなんだろ?」
自分のことを聞かれても返答に困るから、姫の方に話を振る。
「そ、そうなんだけれども。だけれども、どうしたらいいのよ。」
「どうって・・・。」
箱入り育ちに姫。綾香先輩の経験を追体験しているといっても、恋愛の進め方なんて、俺以上に分からないのかもしれない。
「そうよ。英司君分身体なんだから、何か分からない?攻略法。」
「いや、だから俺に聞かれても。」
困る。ニセが、夕月とラブラブだった過去は知っているが、あれが魔剣に魅了されていた状態だったからと言われれば、そのような気がするし。夕月は剣精で人間ではないのだから、あのニセの夕月を想う感情が、恋愛のそれではないかどうか・・・。さっぱり分からない。
かつて見た、ニセに膝枕しながら歌う夕月。
悲しそうに歌っていた夕月があんな風に楽しそうにしているのは、姫には悪いが、俺は嬉しい。
「英司君。英司君も協力してよね。」
「え。協力?」
「そう。お互いに協力して、恋を実らせましょう。」
恋に不慣れな俺と姫で協力したところで、へっぽこ(レベル0)×へっぽこ(レベル0)で掛けても、その結果は0にしかなんないのだけど。
姫がこの国に残った方が良いだろう。ということは、綾香先輩が隣国に向かうことになる。
「大丈夫なのか?綾香先輩にそんな危険な任務。」
綾香先輩に何かあっては困る。
「行くのも、残るのも、両方危険だと言っているだろ。相変わらず察しが悪い。」
元魔王のニセ、聖者のくせに口が悪い。
「大丈夫よ。ニセ君強いし。」
綾香先輩は、ニセの強さを信頼している。
まあ、俺たちの世界で暴れていたニセの力を綾香先輩は見ているし、この国を破壊しまくったニセの所業も姫の過去を追体験して知っている。
この魔法世界で魔王にまでなったニセの実力は、信頼しない方がおかしい。
「夕月はどうするんだよ。」
「そんなの英司様・・・ニセ様一択です。」
そうだった。ラブコメ状態忘れていた。
魔王時代からニセの傍にいてラブラブだったのだから、夕月が姫とニセのどちらか一方とだけ一緒にいろと言われれば、即答でニセを選ぶのは、分かり切ったことだ。
勝ち誇ったような顔で、ニセの腕にしがみつく夕月。
「姫主様。夕月が、主からこのように離れずにお守りしますゆえ。どうかご安心を。」
にこやかな夕月の言葉。だが、その言葉には、姫への牽制とマウントであふれている。姫は、イライラして夕月を見ている。
「そうらしい。まあ、夕月と俺がいれば、綾香の安全は保障しよう。」
全く夕月のマウントを理解していないニセが、そう言葉を足せば、より姫が焦り出す。
「綾香、頼んだわよ。夕月がベタベタとイチャラブしようとするのを防ぐのは、あなたの腕にかかっているの。」
姫が綾香の手を握りしめて懇願する。
「分かっている。二人きりの時間を作らないように頑張るわ。」
綾香先輩が、まかせておいてと、姫に約束する。
ミッションの内容が大幅に変化している気がするのだけれども、大丈夫なのかな。
ニセの前途多難なラブコメ旅の行く末に一抹の不安を覚える。
この世界の様子に計画までの間に慣れておいた方が良いだろうということで、俺は姫と街に出る。
本当は、綾香先輩と異世界デートがしてみたかったのだが、やはり異世界魔法班である姫と一緒に居なければ危険だし、四人一緒に出掛けるのは目立ってしまう。
街は、所々破壊されている。
これは、魔王時代のニセと夕月が破壊したものと、その後街に入り込んだ魔物のしわざと両方が原因らしい。
現在は、魔物の心配も無くなり、町は復興のために皆が努力している最中。
魔法世界であるのに、普通にハンマーやシャベルで瓦礫を移動して、石を手で積み上げて作業している。姫の話によれば、魔力は個人差が大きく、ニセのような大魔法を使える人間は、ほぼいないらしい。
天才が悪に染まれば、こんなに恐ろしいことになる。
ニセが、人間らしい心を得て、聖者になってくれてよかった。
「綾香とは、どうなっているの?」
市場で果物を見ていた俺に、姫がワクワクして尋ねてくる。
「どうって・・・。どうも。まだ、綾香先輩に告白の返事ももらっていないし。」
「あれ、そうなんだ。なんで?」
なんでと俺に聞かれても困る。
なんなら、俺が聞きたい。どんな条件がどう発動することで、綾香先輩の許可が下りて、付き合うなんて状態になれるのか。陰キャの俺に察することなんで出来る訳がない。
りんごっぽい果物を買いながら、なんで、でしょうかね?なんて曖昧に答える。
「それより、姫はどうなの?ニセのことが好きなんだろ?」
自分のことを聞かれても返答に困るから、姫の方に話を振る。
「そ、そうなんだけれども。だけれども、どうしたらいいのよ。」
「どうって・・・。」
箱入り育ちに姫。綾香先輩の経験を追体験しているといっても、恋愛の進め方なんて、俺以上に分からないのかもしれない。
「そうよ。英司君分身体なんだから、何か分からない?攻略法。」
「いや、だから俺に聞かれても。」
困る。ニセが、夕月とラブラブだった過去は知っているが、あれが魔剣に魅了されていた状態だったからと言われれば、そのような気がするし。夕月は剣精で人間ではないのだから、あのニセの夕月を想う感情が、恋愛のそれではないかどうか・・・。さっぱり分からない。
かつて見た、ニセに膝枕しながら歌う夕月。
悲しそうに歌っていた夕月があんな風に楽しそうにしているのは、姫には悪いが、俺は嬉しい。
「英司君。英司君も協力してよね。」
「え。協力?」
「そう。お互いに協力して、恋を実らせましょう。」
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