異世界から来た自分の分身が邪悪過ぎるのだけれどどうしたらいい?

ねこ沢ふたよ

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2異世界

歓談の時間

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 中庭の東屋で座ってお茶の時間。
 目の前には、にこやかに歓談する姫とケイト。
 どうにもアウェー感満載のこの状況で、不機嫌にお茶を飲む俺。

 ケイトが自分の従者にチラリと目配せをする。
 ケイトの従者は、三人。男が二人に、女が一人。
 皆様眼光鋭く、仕事が出来る感じで、アジムの姫の従者の愉快な仲間たちとは、レベルが格段に違いそうだ。

「聖者英司様。もしよろしければ、もっと私共とお話していただけませんか?」
女性の従者が、こちらに近づいてくる。
 美人・・・きつい目の出来る女タイプ。・・・胸、ずいぶん強調された服デスネ。
 昔から、ゲームをしている時に、異世界の女性の戦闘服には、ちょっと疑問があった。なんであんなに露出が高いのかと。怪物や悪の組織と戦うのに、ビキニのような服やミニスカートで、本当に大丈夫なのかと。
 男勇者でもそうだ。筋肉がムキムキになればなるほど露出が高くなる。

 迷彩服とか鎧とか、もっと防御力の高そうな服の方が、リアリティ増すのでは?なんて思っていたのだが、それは、間違いだった。

 この服、めちゃくちゃ攻撃力高い。

 もしこの服のままの相手と戦えと言われたら、集中力を保つのが大変だ。

「ちょっと!!え、英司君!!」
姫が、眉間に皺を寄せてこちらを見ている。

 ニセそっくりの顔の俺が、女に鼻の下伸ばしているのが、気に喰わないということだろう。自分のことは、ずいぶん高い棚に上げたものだな、姫よ。
 姫と俺、ポンコツ二人の暗殺者との攻防は、初手は暗殺者優勢に終わりそうだ。


「時に男聖者様。その剣が聖剣夕月ですか?」
ケイトが俺に聞いてくる。
「あ、これ?そう。そうだ。」
おっと。この俺の装備している偽物夕月が、本物だと思わせなければ。
「聖剣の剣精が見てみたいです。」
「へ?あ・・・ええと。無理だな。夕月は、俺と姫以外には気を許さん。」
ニセと事前に打ち合わせておいた設定。
 夕月は、人見知りで隣国の者に人の姿は見せないということにしておいた。
「残念。大変に美しいものだと伝承を聞きましたのに。」
ケイトは、首を横に振って、大げさに残念がる。

「・・・では、せめて魔法を。聖者様の魔法がみたいです。」
そう言って、ケイトが笑う。
 疑っているんだ。この俺が、聖者の偽物ではないかと。ここで俺が偽物だとバレたら、大変なことになりそうだ。
「あら、魔法なら私が・・・。」
姫が助け舟を出そうとする。
「いいえ。元魔王である彼の魔法を見てみたいのです。」
・・・困った。ケイトが引かない。
「わあ。魔法ですか?私もみたいです~。」
女従者が、わざとらしくケイトに同調する。
 
「わ、分かった。見せてやろう。だが、少しだけだ。」
俺は、そう言うと、テーブルの上のナイフで自分の腕を切りつけた。



 隣国ニグル。与えられた控室でニセと綾香は休憩していた。
「くっ」
突然の腕の痛みに、ニセは驚く。
「周囲に自分を傷つけられる物などなかった。英司が怪我をしたか・・・?」
「大丈夫?」
綾香は心配して、ニセの腕の傷を見る。刃物で傷つけられてできた怪我。
「この程度。心配ない。」
ニセは、治癒魔法で腕の怪我を治す。ニセの魔法で、腕の怪我はたちまち治ってしまう。
「しかし、この刀傷。英司達は大丈夫か?綾香、どこか体に異変があれば、すぐに言え。俺が治す。」
ニセの言葉に、綾香は大きく首を縦に振った。



 アジムの城。
「どうだ。治癒魔法だ。」
ニセの魔法で治った腕を、どや顔で英司は突き出す。
「なるほど。治癒魔法ですか。」
「ああ。だが、魔法は見世物ではない。今日は、この程度で勘弁しろ。」
ニセが言いそうな、それっぽいことを、適当に俺は言う。

「さすが~。知らなかった~。すご~い。そうなんだ~。」
どこのキャバ嬢のさしすせそ応対だ。
 女従者の、わざとらしいリアクションを聞きながら、どうやらバレなかったことに、胸をなでおろした。
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