異世界から来た自分の分身が邪悪過ぎるのだけれどどうしたらいい？

2異世界

偽夕月

　ケイト達を捕まえるために、俺達も村人たちの元へ降り立つ。
　どうやら、ケイト達に国境を越える前に追いつくことができた。

「英司君、ケイト達を捕まえるわ！！ケイト達三人の注意を、英司君の方にそらして！」
姫が俺に命じる。
　えっと、そんなざっくりしたことを指示されても、具体的にどう注意を反らせば良いのか・・・。

　ま、とにかくやってみるか。

「ケイト！！従者達よ！！！」
俺は、壇上に立って叫ぶ。
「お前達の欲しがっていた聖剣夕月はここだ！！」
それが目的でわざわざ暗殺に来たのだから、この偽物夕月に注目しない訳がない。

　俺は、この偽物夕月を、壇上の板に突き立てる。
　RPGの伝説の剣のように、そこに立つ偽物夕月。

えっと、これからどうしよう。ボロがでる。姫、早くしてくれ。
「あ～ええと、夕月は聖剣だ。そう、聖剣なんだよ。だから、主は自ら選ぶ。俺達を暗殺したところで、お前達にその資質が無ければ、夕月は手に入らない。ええと、それで・・・そう、そんなに聖剣夕月が欲しいのならば、ここに夕月を置き、お前達の資質を試してやろう。もし、お前達に、夕月を振るう資質があるのならば、夕月は触れたとたんにその剣精の姿を現して、お前達に礼儀を尽くすであろう。」
俺の言葉に、ケイトが、ほう、と呟く。自信があるのだろう。
　だが、これは偽物夕月。
　誰がどう触っても、剣精が現れるはずはない。

　俺は、偽物夕月から少し離れて立つ。
　村人から、頑張って～なんて声が、ケイト達にかかる。
　ケイトの従者達からも、ケイト様なら大丈夫です！なんて励ましの声が上がっている。

　※偽物なので、剣精は、現れる訳はない。

　どうなるのか緊張して、辺りは静まり返る。

　※偽物なので、剣精は、現れる訳はない。

「証明してみせよう。このニグルの王太子ケイトこそが、真の聖者であることを！！」
イケメンの意気込み発表。様になるな。周囲のケイト贔屓の女性達から、拍手と歓声があがる。
緊張と盛り上がりをみせる祭り会場。
　皆、どうなることか、息をのんで見守っている。
※偽物なので、剣精は、現れる訳はない。



「捕縛！！！」
姫が高らかに声を上げれば、光の魔法で出来た縄が、ケイト達ご一行を包み込む。
「ケイト様、お逃げ下さい！！」
いち早く姫の魔法に気づいた有能な腐女子アサシンのお姉さんが、ケイトを突き飛ばして、捕縛の魔法から逃れさせる。

「お、おのれ！！謀ったな！！」
ケイトは怒り、俺に向かってくる。
　手には、自らの剣。それが、薄っすら炎を帯びている。
「ケイト様！！首です、首を一気に刎ねるのです！！」
有能なお姉さんが、捕縛されながらも叫ぶ。
　余計なことを！！

　俺は、ケイトが攻撃に出る前に、モヘット・エキスをケイトに吹きかける。

　これが効かなければ、俺は首を刎ねられて死ぬ。
　そして、分身体である俺の死は、すぐにニセの死となり、隣国遠征中の綾香先輩の身も危うくなり、それによって姫の身も危険になる。俺達の負けだ。

　ケイトの動きが止まる。
　効いたか？？？

ケイトが、壇上で叫ぶ。
「俺は！！我が国の女性の半数は、口説いた！！」
・・・ドクズだ。
「せっかく隣国へ来たのだから、美人は全員ものにしたい！！！」
いずくんぞ、それのどこに聖者の資質がありましょうか？いや、ない。

　イケメン・ケイトの親衛隊のようになっていた村の女性陣もドン引きしている。
　姫も顔を引きつらせている。
　有能アサシンお姉さんは、「まさかの攻め設定？」と、新しい作品の構想を練り始めている。わあ、有能だ。