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1、台風の日には家でおとなしくしていましょう!
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「今までにない規模の台風が近づいています! 台風の中心気圧は九百二十五ヘクトパスカル。最大瞬間風速は九十メートルを超える恐れがあります。危険ですので、けして外には出ないようにして下さい! 窓に飛来物が来る恐れがありますので、カーテンを閉め、窓から離れて下さい!」
「え~? 風も雨もないんですけれど~? 曇ってるだけじゃん。オレ勤労金欠就職浪人なんで、バイト行きま~す!」
家を出る時は必ず天気予報を見るオレだ。
なんせ自他ともに認める雨男だから。
オレが就職浪人になったのも、この不幸な雨男体質が災いした。
人生の節目には必ず雨が降る。
あの日は面接だった。オレにしたらこんな日は、必ず雨なのに、珍しく朝からピーカンだった。
地下鉄を降りて、地上に出たら、案の定土砂降りで、雨を避けるために、アーケードへ走ったオレ。
まさかその隙をついてカミナリが落ちるとか、思ってもみなかった。
耳をつんざく轟音と白く光る視界。
気が付くと病院のベットだった。
検査で一週間入院して、結果は幸い異常なし。
だが、面接は受けられず、事情を説明するも、既に採用者が決まったと言われた。
就職活動はしていたが全て不採用。
コネクションを使った最後の一社だったんだよ!
周りに迷惑をかけてまで掴んだコネが生来の雨男の性でパァになった。
そこそこの大学で、修士課程、大学院博士号まで取得して、就職浪人。
情けないと親に泣かれて一人暮らしを始めた。そしてバイトに明け暮れる日々。
もちろん、彼女なんていない。
いや、見栄を張りました。
彼女いない歴イコール年齢。
オレ、自分で言うのもなんだけど、イケメンなんだぜ?
親父も母親も美男美女。
そう、美しいんだよ、二人とも。
見た目も若く、親子で出かけると兄弟に見られるほどだ。
なんで彼女が出来ないんだよ?!
いや、今はバイトだ、バイト! 今月の家賃がかかっている。
食費はいらねー。バイト先が飯付きなので、働いてさえいれば飢える事はない。
ただ、気掛かりなのは出掛けに聞いたラジオの天気予報。
空は曇り空で、バイトを休む理由になんてならねえ。
ちなみにオレは猛烈に腹が減っている。
バイト先には、ただで飲み食い自由な食堂があるんだ!
絶対にいくぜ! 休むという選択肢はない。
地下鉄を降りて思い出した嫌なあの日。
ピーカンで出かけて、カミナリに打たれたオレ。
今日の天気予報は台風。暴風雨警報も出ていた。
「あちゃー! 雨、降って来たじゃん! でもまだ小降りだし、風もそんなに吹いてねえよな、ダッシュで行きま~す」
ダッシュしたオレの上、前方から『ガキンッ! バリバリッ!』ってスゲー音がした。
見上げたオレの目に飛び込んできたのは巨大な鉄板。
「おいおいおいっ! 逃げ場がねえじゃん!」
そしてスローモーションのように読めちまった《泌尿器科》の文字。
一度もお世話になった事のない病院の看板が、今オレをめがけて落下して来る。
避けれる気がしねえ。
コレ、絶対助からねえじゃん!
駄目だ。コレ。オレ死ぬな。
覚悟して目を閉じた。
衝撃に備えて悪あがきで手をかざしてうずくまる。
「あれ? 痛くない。え?!」
うっすらと開けた目に広がる町並みは完全に異世界だった。
「え~? 風も雨もないんですけれど~? 曇ってるだけじゃん。オレ勤労金欠就職浪人なんで、バイト行きま~す!」
家を出る時は必ず天気予報を見るオレだ。
なんせ自他ともに認める雨男だから。
オレが就職浪人になったのも、この不幸な雨男体質が災いした。
人生の節目には必ず雨が降る。
あの日は面接だった。オレにしたらこんな日は、必ず雨なのに、珍しく朝からピーカンだった。
地下鉄を降りて、地上に出たら、案の定土砂降りで、雨を避けるために、アーケードへ走ったオレ。
まさかその隙をついてカミナリが落ちるとか、思ってもみなかった。
耳をつんざく轟音と白く光る視界。
気が付くと病院のベットだった。
検査で一週間入院して、結果は幸い異常なし。
だが、面接は受けられず、事情を説明するも、既に採用者が決まったと言われた。
就職活動はしていたが全て不採用。
コネクションを使った最後の一社だったんだよ!
周りに迷惑をかけてまで掴んだコネが生来の雨男の性でパァになった。
そこそこの大学で、修士課程、大学院博士号まで取得して、就職浪人。
情けないと親に泣かれて一人暮らしを始めた。そしてバイトに明け暮れる日々。
もちろん、彼女なんていない。
いや、見栄を張りました。
彼女いない歴イコール年齢。
オレ、自分で言うのもなんだけど、イケメンなんだぜ?
親父も母親も美男美女。
そう、美しいんだよ、二人とも。
見た目も若く、親子で出かけると兄弟に見られるほどだ。
なんで彼女が出来ないんだよ?!
いや、今はバイトだ、バイト! 今月の家賃がかかっている。
食費はいらねー。バイト先が飯付きなので、働いてさえいれば飢える事はない。
ただ、気掛かりなのは出掛けに聞いたラジオの天気予報。
空は曇り空で、バイトを休む理由になんてならねえ。
ちなみにオレは猛烈に腹が減っている。
バイト先には、ただで飲み食い自由な食堂があるんだ!
絶対にいくぜ! 休むという選択肢はない。
地下鉄を降りて思い出した嫌なあの日。
ピーカンで出かけて、カミナリに打たれたオレ。
今日の天気予報は台風。暴風雨警報も出ていた。
「あちゃー! 雨、降って来たじゃん! でもまだ小降りだし、風もそんなに吹いてねえよな、ダッシュで行きま~す」
ダッシュしたオレの上、前方から『ガキンッ! バリバリッ!』ってスゲー音がした。
見上げたオレの目に飛び込んできたのは巨大な鉄板。
「おいおいおいっ! 逃げ場がねえじゃん!」
そしてスローモーションのように読めちまった《泌尿器科》の文字。
一度もお世話になった事のない病院の看板が、今オレをめがけて落下して来る。
避けれる気がしねえ。
コレ、絶対助からねえじゃん!
駄目だ。コレ。オレ死ぬな。
覚悟して目を閉じた。
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