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28、神々の死と滅亡の運命
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ワルキューレによって名誉ある戦死者達はよみがえったが、当然、バルデルスは息を吹き返すことはなかった。
フィンブルヴェドは夏は訪れず、三度の季節を厳しい冬が占めた。
人々は荒み、モラルをなくし、生き物は死に絶える。
大地と山が震え、木々は根こそぎ倒れていく。
山が崩れ、あらゆる命を巻き込み、飲み込んで消し去る。
その様を見て、ヘイムダルは世界の終焉を知らせるためにギャラルホンを吹き鳴らした。
「ミーミル知恵を貸して欲しい。世界は預言の巫女オルガが言った通りとなった」
「ああ、私の森もユミルとともに、大地に飲まれて消えた」
「ッ! お爺様が?! ……。ミーミル、ヘルヘイムに行かねば! 皆をよみがえらせるように女王ヘルに言おう!」
「オーディンよ、ヘルヘイムは死者の国である。そう何度も訪れることは出来ぬ」
「ああ、そうだった。だが、オルガが言っていた。『慈愛の若君を寄越せ』と」
「慈愛……。ならば、平和を愛し、正義と真実を司る。彼を、ヘルモーズをヘルヘイムへと送ろう」
「ヘルモーズ! バルデルスとナンナの子か?!」
「寿命と疫病で亡くなった者達を王女ヘルは弔っている。名誉ある戦死者ならばワルキューレによって生き返らせることができるが、バルデルスやユミルは違う。女王ヘルだけがよみがえらせることが出来る」
「そうだな、よし、私のスレイプニル、グラニを彼に貸そう」
「後は貢ぎ物が必要だ。オーディン、お前の持つ黄金の腕輪を持たせるのだ」
「ああ。分かった。ではフリッグとナンナのもとに行き、ヘルモーズをヘルヘイムへと行かせよう」
オーディンの命ずるままに、八脚の神馬グラニを駆って、ヘルヘイムへと向かったヘルモーズ。
「やっと灼熱の国まで来れた。#_裂け目_ギンヌンガガプ__#の向こう側が、暗闇の霜の国だ。行くぞグラニ!」
ヘルモーズはニグルヘイムの手前、ギョッル川に架かる橋、ギャッラルブルーで橋の番人に誰何される。
「ぐふ。わたしは、生命を失いし者が渡る橋、ギャッラルブルーの監視人モーズグズです。何故、幼き生有る者が死者の国、ヘルヘイムへと向かうのか?」
「最高神、オーディン様の命を受け、冥界のヘル王女に会いに参ったヘルモーズと申す! 巨人の女、モーズグズよ、橋を渡るぞ!」
「ぐふっ。ならば、女王ヘルのもとへ行く道をわたしが特別に教えてあげよう」
実はモーズグズ、いわゆる『ショタコン』であった。
グラニに跨がる幼いヘルモーズはまさにどストライク。
生者の渡りを監視する役目であったが、可愛いヘルモーズの要求を叶え、なおも、ヘル王女の館、エーリューズニルへの道まで教えてしまう。
「あ、ありがとうございますモーズグズ」
ピッタリとヘルモーズの背中に張り付き、道を教えている間中、手を握り、スリスリと頭をほお擦りするモーズグズ。
「ぐふ、ぐふ。気を付けて行くのですよ、可愛いヘルモーズ」
灼熱の煮えたぎる川、ギョッルを渡るヘルモーズの背中はモーズグズのお陰でヒンヤリとした寒気が襲っていた。
「クッッ! さすが、死者の国への監視役である。まだ鳥肌が立っている」
そんなヘルモーズの呟きを、グラニだけが聞いていた。
フィンブルヴェドは夏は訪れず、三度の季節を厳しい冬が占めた。
人々は荒み、モラルをなくし、生き物は死に絶える。
大地と山が震え、木々は根こそぎ倒れていく。
山が崩れ、あらゆる命を巻き込み、飲み込んで消し去る。
その様を見て、ヘイムダルは世界の終焉を知らせるためにギャラルホンを吹き鳴らした。
「ミーミル知恵を貸して欲しい。世界は預言の巫女オルガが言った通りとなった」
「ああ、私の森もユミルとともに、大地に飲まれて消えた」
「ッ! お爺様が?! ……。ミーミル、ヘルヘイムに行かねば! 皆をよみがえらせるように女王ヘルに言おう!」
「オーディンよ、ヘルヘイムは死者の国である。そう何度も訪れることは出来ぬ」
「ああ、そうだった。だが、オルガが言っていた。『慈愛の若君を寄越せ』と」
「慈愛……。ならば、平和を愛し、正義と真実を司る。彼を、ヘルモーズをヘルヘイムへと送ろう」
「ヘルモーズ! バルデルスとナンナの子か?!」
「寿命と疫病で亡くなった者達を王女ヘルは弔っている。名誉ある戦死者ならばワルキューレによって生き返らせることができるが、バルデルスやユミルは違う。女王ヘルだけがよみがえらせることが出来る」
「そうだな、よし、私のスレイプニル、グラニを彼に貸そう」
「後は貢ぎ物が必要だ。オーディン、お前の持つ黄金の腕輪を持たせるのだ」
「ああ。分かった。ではフリッグとナンナのもとに行き、ヘルモーズをヘルヘイムへと行かせよう」
オーディンの命ずるままに、八脚の神馬グラニを駆って、ヘルヘイムへと向かったヘルモーズ。
「やっと灼熱の国まで来れた。#_裂け目_ギンヌンガガプ__#の向こう側が、暗闇の霜の国だ。行くぞグラニ!」
ヘルモーズはニグルヘイムの手前、ギョッル川に架かる橋、ギャッラルブルーで橋の番人に誰何される。
「ぐふ。わたしは、生命を失いし者が渡る橋、ギャッラルブルーの監視人モーズグズです。何故、幼き生有る者が死者の国、ヘルヘイムへと向かうのか?」
「最高神、オーディン様の命を受け、冥界のヘル王女に会いに参ったヘルモーズと申す! 巨人の女、モーズグズよ、橋を渡るぞ!」
「ぐふっ。ならば、女王ヘルのもとへ行く道をわたしが特別に教えてあげよう」
実はモーズグズ、いわゆる『ショタコン』であった。
グラニに跨がる幼いヘルモーズはまさにどストライク。
生者の渡りを監視する役目であったが、可愛いヘルモーズの要求を叶え、なおも、ヘル王女の館、エーリューズニルへの道まで教えてしまう。
「あ、ありがとうございますモーズグズ」
ピッタリとヘルモーズの背中に張り付き、道を教えている間中、手を握り、スリスリと頭をほお擦りするモーズグズ。
「ぐふ、ぐふ。気を付けて行くのですよ、可愛いヘルモーズ」
灼熱の煮えたぎる川、ギョッルを渡るヘルモーズの背中はモーズグズのお陰でヒンヤリとした寒気が襲っていた。
「クッッ! さすが、死者の国への監視役である。まだ鳥肌が立っている」
そんなヘルモーズの呟きを、グラニだけが聞いていた。
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