独身彼氏なし作る気もなしのアラフォーおばさんの見る痛い乙女ゲーの夢のお話

みにゃるき しうにゃ

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透見ルートに突入……出来るかな? その1

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 ひとまず透見にターゲットを絞る事を決めたものの、今まで順番にガードしてもらってたのに、どうやって他の人を断って透見と二人になるか、見当がつかなかった。

 だから翌日、どうやって切り出せばいいんだろうと悩んでたら早速棗ちゃんが手助けしてくれた。

「姫様は今日も透見と図書館で調べものされるんですよね?」

 朝食の給仕をしながらにっこり笑う棗ちゃん。さすがというか凄いというか。ありがとう。

 そんな彼女に異を唱えてきたのは剛毅ではなくなぜか園比だった。

「え? 今日は剛毅の日でしょ?」

 首を傾げ、棗ちゃんを見る園比。

 けど棗ちゃんは反論があるのは想定済みだったみたいで、にっこり笑ってそれに答えた。

「昨日調べものをして、調べ切れてないって話は聞いたよね。だったら日を空けずに調べた方が効率良いと思うの」

 なるほど良い考えだ。と思ったのに棗ちゃんたら。

「もちろん剛毅が姫様に付き合って図書館で調べものしても良いと思うけど」

 急にそんな事を言い出す。

 けどそれは剛毅の性格を分かってたからみたいで。

「いや、オレ図書館は遠慮しとくわ。一緒に行くだけなら無理じゃないけど、一緒に調べものとか無理無理。絶対寝る」

 いつもの様にカラカラと笑ってはいるけど、珍しく苦笑いも含んで剛毅が言う。

「じゃあ園比が一緒に行く?」

 棗ちゃんに訊かれ、園比は一瞬言葉に詰まった。それでもなんとか反論しようと口を開く。

「調べもの、絶対しなきゃいけないの? 今まで通り街をぶらついて〈唯一の人〉捜すんでいいじゃん」

 だけどそれに答えたのは戒夜だった。

「いや、棗の言う通り透見と図書館で調べものをするのが良いだろう。二度も小鬼に襲われているのだから下手に屋外を歩くより図書館の方が安全だ。そして一緒に調べるなら伝承に一番詳しい透見がふさわしいだろう」

 戒夜の言葉に棗ちゃんは満足そうに頷き、剛毅もまあすんなり、園比はしぶしぶ頷いた。

 そしてようやく、それまで黙っていた透見が少し戸惑うように口を開いた。

「私は構いませんが、そうなるとしばらくの間私と図書館に籠もる事になるかもしれませんが、姫君はよろしいのですか?」

「もちろん。例の何が書いてあるか分からない頁の事も気になるし、透見さえいいならお願いします」

 わたしがペコリと頭を下げると透見が慌てて首を振る。

「そんな。姫君が頭を下げられる事はありません。ご一緒させてもらえて私は光栄なのですから」

「そうだよ。透見に頭下げる事なんかないんだよ」

 拗ねた様子で園比が言う。まあ、園比はけっこう順番を楽しみにしてくれてたみたいだから、拗ねちゃっても仕方ないよね。

「ごめんね、園比。剛毅と戒夜も」

 申し訳なさそうにわたしが言うと、剛毅はいつものカラッとした笑顔をわたしに返してくれる。

「気にすんな、姫さん。園比のは単なるワガママなんだから」

「なんでワガママなんだよ」

「わがままだろう。我々は姫を守るのが使命だが、姫と共にいる事だけが守ることではないんだぞ」

 戒夜がビシリと園比に言う。園比はむーっとしたままだったけど、渋々納得したのかそれ以上は何も言わなかった。



 再び透見との図書館デート。

 行くと司書のお姉さんはにこりと笑って当たり前のようにわたし達をあの部屋へと通してくれた。

「どういたしましょう。昨日お渡しした本はもう全部目を通されたのですよね? あと読みやすいものは……」

 本棚を眺め考える透見。

「あ、ううん。わたしほら、あんまり記憶力ないからもう一度あの本に目を通してみるよ。だから透見は透見の読む本を捜して」

 わたしはそう言うと昨日の本へと手を伸ばした。

「そうですか?」

 少し残念そうな顔をして透見は自分の読む本を探す。

 本当の事を言えば、読みづらい本を選んでまた透見に読んでもらうってのも捨てがたい案だった。その方が別々に本を読むよりも距離が縮まると思うし。

 けどもう一度あの本をきちんと読んでみたかった。この先のストーリーに何か関わる事が書いてあるのに見落としてるような気がして。

 そんな事を考えつつあの本へと手をやる。その背表紙に手が触れた瞬間、ポウッとほのかに本が光った気がした。よく見てないときっと気づかないんじゃないかってくらいの、淡い光。

 ほんとにほのかな光だったせいか、透見は気づいていないようで数冊の本を手に取るとそのまま席へと向かう。

「どうされたのですか? 姫君」

 たった一冊、読むと決めている本に手を伸ばしたままその場に立ち尽くしているわたしに気づき、透見が声をかけてきた。

「ううん。なんでもない」

 気のせいかもしれない。

 そう思うとなんか透見に話すのも気が引けて、わたしは本棚からその本を取りだしそのまま透見の待つ席へと向かった。


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