独身彼氏なし作る気もなしのアラフォーおばさんの見る痛い乙女ゲーの夢のお話

みにゃるき しうにゃ

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今度はみんなで神社へ行こう その2

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 翌日、みんなでザクザクと歩いて神社へと向かう。

「良いですか。小鬼の気配を感じたら即屋敷へと引き返しますからね」

 渋い顔をして戒夜が言う。

「やっぱり今からでも姫様と透見は図書館に行って、わたし達だけで神社を調べるってのはどう?」

 そう提案するのは棗ちゃんだ。

 昨夜、神社に行こうって言ったわたしの言葉に透見以外は全員反対した。まあ、そりゃそうだよね。わたしが神社に行く度に小鬼に遭遇してるんだから、警戒するのは当たり前。

 けど、そんなわたしの意見に透見だけが味方してくれた。

「たしかに〈唯一の人〉に関する古い書物のほとんどは神社からの寄贈ですし、書物以外の資料が神社に残っている可能性は否めません」

 そんな透見の後押しもあったおかげで今日はみんなで神社に行く事になったんだけど、戒夜はやっぱり不満そうで棗ちゃんもちょっと不機嫌そうだった。

 棗ちゃんにはあの後二人っきりになって話してみたんだけど、どうも納得してもらえなかったようだ。

「そんな他の人に遠慮してどうするんですか。こういう事は早めにガンガン行かなきゃ!」

 図書館での調べ物も透見との関係も特に進展ないし、他の人達も同じ守り手なんだから一緒に行動する機会を持った方がいいかと思って…というわたしの意見に棗ちゃんは怒ったようにそう言った。

 だから今もやっぱりどうにか二人きりにしてくれようと、自分達が神社を見るから二人は図書館に…と勧めてくれている。

 棗ちゃん、イイコだなぁ。彼女がどうか好きな人と上手くいきますように。そう願ってしまう。

 ところで。今わたしの横を歩いているのは透見ではなく園比だったりする。そして案の定、棗ちゃんの提案を軽く蹴り飛ばす。

「ダメダメ。姫様は今日は僕たちと神社に行くの。これ決定事項。ね、姫様」

 そう言って園比はちゃっかりわたしの手を握ろうとする。

 さすがにみんなの前で園比と手を繋ぐのは抵抗があってわたしは慌てて手を引っ込めた。けど、さすがは園比。それを読んでたように更に手を伸ばしてわたしの手を掴んでしまった。

「姫様は方向音痴なんだから、迷子にならないように。ね?」

 にっこり笑ってきゅっとわたしの手を握りしめる。

「いや、幾らわたしでもさすがにこの人数ではぐれる事はないと思うよ…?」

 困った顔して園比にそう言ってみるけどやっぱ放してくれそうにない。

「当たり前です。姫が勝手にどこかへ行こうとしても誰かしら目に留めて声を掛けますから」

 わたしを援護してくれてるのかバカにしてるのかよく分からない戒夜の言葉が後ろから掛かった。うーん、考えすぎると悪い方に取っちゃいそうだから、ここは早めに良い方にとっとこう。

「そーゆー事だから……」

 と、園比の手を離そうとするんだけど。

「えー、いーじゃん」

 園比は放そうとしてくれない。

「園比さん?」

 ふと、冷気が漂ってきそうな声が聞こえてきた。振り返ると、いつものように笑ってる筈なのになんか黒いオーラが漂ってそうな透見がそこにいた。

「姫君はそこらの女性と違うのですから、気軽に触れるのは遠慮してもらえませんか?」

 優しげな声、の筈なのに妙に怖さの混じった声で透見が言う。けど園比はまだ名残惜しそうにわたしの手を掴んでいる。

「はは。園比、透見を怒らすと後が怖いの知ってるだろ。今の内に放しとけって」

 剛毅が楽しそうに笑いながら言う。

「それに姫さんは〈救いの姫〉なんだから、透見の言う通りあんま気軽に触れて〈唯一の人〉の機嫌損ねちゃったら困るし?」

 とか言いながら剛毅、その笑顔ちっとも困ると思ってないでしょ。どっちかと言うと楽しんでるように見えるんだけど。

「園比」

 それでも放そうとしない園比に、戒夜も咎めるように名前を呼ぶ。

 さすがにみんなから責められて、諦めたように唸ると園比は手を放してくれた。

 と、すかさず園比とわたしの間に棗ちゃんが割り込んでくる。

「あ」

 園比が不満の声をあげたけど、棗ちゃんがわたしの腕を組みながら一言。

「女同士で歩くから」

 あっちに行けとばかりにしっしと園比に手を振ってみせた。

 そんな訳でわたし達の前を戒夜と剛毅が、後ろを透見と園比。そして横には棗ちゃんって形でてくてく歩く事になった。

 ちょっとして棗ちゃんがヒソヒソ声で耳打ちしてきた。

「昨日収穫無かったって言ってたから透見との事も進展なかったのかと思ったら、ちゃんと進展してたんですね」

「は?」

 棗ちゃんの言ってる意味が分かんなくて、ついそう聞き返してしまった。透見と進展…してるの?

 考えてみてもやっぱりなんで棗ちゃんがそう思ったのかが分からない。

「やだ姫様ったら無自覚ですか? もしかして色恋に鈍いほう?」

 う。棗ちゃんの言葉にちょっとグサリとくる。まあ、メンドクサイって恋愛から逃げてたわたしに、現実問題としてそのテの経験値がゼロに近いのは否定出来ませんが。

 でもでも、これは乙女ゲーの夢だし、これまでかなり色々な乙女ゲープレイしてきたんだから、架空のそーゆーのは結構分かる気になってたんだけどなぁ。

「どうして進展してるって思ったの?」

 とりあえず、訊いてみる。わたしどこを見落とした?

 すると棗ちゃんはますますヒソヒソ声でわたしにくっついてくる。

「だってさっき透見、園比にヤキモチ妬いてたじゃないですか」

「え?」

 さっきの園比に対しての透見の態度を思い出す。確かにちょっと怖い感じで怒ってはいたけど……。

「あれって〈救いの姫〉に失礼のないようにって意味でしょ?」

 透見は伝説の姫君に心酔してるから、園比の気安さは許せなかったんだと思うんだけど。

「確かに元からそういうところはありましたけど、それだけじゃ透見、あんな風に怒りませんよ。注意はしてもあんな態度はとりませんって」

 棗ちゃんに言われ、だんだんそんな気がしてきた。思い出してみれば最初の頃、他の人がわたしに対して失礼な態度とっても、注意はしてもあそこまで怒んなかった気がする。

「てことは、ほんとにヤキモチ?」

 言葉に出してカァっと顔が赤くなった。自然と顔がニヤケてきて慌てて手で隠す。

「ですよですよ。本人に自覚があるかはまだ分かんないけど、あれ確実に姫様の事、意識し始めてますって」

 声を顰めてキャッキャと騒ぐ棗ちゃん。

 あああああ、もし本当にそうだとしたら、嬉しいかも?

 頭の中がフワフワと、なんていうか花が咲きそうな勢いで顔もニヤニヤが止まらない。

「楽しそうに何の話してんだー?」

 あんまりにもきゃあきゃあと、でもヒソヒソと二人で話してたからか、剛毅が仲間に入りたさそうに話しかけてきた。だけどまさか剛毅に話すわけにもいかない。

「内緒ー。女同士の秘密でーす」

 棗ちゃんもそう思ったのか、楽しそうにそう答えて、わたし達はくすくすと笑いながら歩いた。


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