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――杜には、そこを住処とする鬼がいた。名を百鬼【ヒャッキ】という。
身の丈は、七尺近い大柄で、百鬼が通れば地が震え、杜に棲んでいるものが一斉に散ってしまう。
百鬼は杜の主になっていた。そんな百鬼の下に、ある噂が聞こえてきた。ほんの数日前、杜に人が立ち入ってしまったとのことだ。
杜の入り口には声のみの番人がいる。
かつては大木であった参本の樹が、いつの間にか意志を持ち、杜に入ってくる者たちを追い出しているのだ。
その番人たちが、近頃、彷徨ってきた人間を嬲り者にしているのだと言う。
珍しいことだ。過去、幾人もの人間が杜に迷い込んできたが、一度たりともそのまま留め置いたことはない。
百鬼は近頃退屈していた。
杜の主となって百年近くになるが、杜の主を狙うものは弱く退屈にも程があるのだ。
嬲り者となっている人間の性別は聞き及んでいないが、美貌の持ち主だということだった。
妖し者たちのを惹きつける美貌というならば、百鬼は供物として捧げさせようと考えていた。ただし、女ならばの話だが。
女ならば、子を孕ませよう。男ならば、そのまま番人たちの嬲り者として捨て置こう。
そう思い、杜の入り口に出向いたのだ。
杜の入り口には、様々な種類の妖し者たちがいた。杜の番人たちとは縄張りが違う者たちもいた。
百鬼の耳に届くほどに噂は広がっているのをみると、杜を棲家としているほとんどの者が恐らく知っているだろう。
杜の支配者の気配を感じ取ると、みなひれ伏し道を開いた。百鬼はそれを当然として、開かれた途を歩いた。
百鬼はその中心で、犯されている人間がいるのをみつけた。犯されているのは、どうやら男のようだ。しかも若い…百鬼からすれば、童と言えた。
見事な黒髪をしていることを見ると、公家の子息と言った所だろか。
童の尻は、大神と呼ばれる大型の狼に犯されていた。腰を高く掲げる形でうつ伏せている童の背に、前足をつき、大神は荒々しく息を吐きながら腰を振っていた。
『何のようだ、杜の主』
番人のひとりが百鬼を見つけ、投げ掛ける。
「貴様らが、人間を嬲ってると聞いてな、見に来たのだ」
百鬼が返している間も、人間の嬌声は響いている。百鬼が訪れたことで、緊張が漂っていた。杜の番人と支配者は、お世辞にも懇意とは言えない。その両者がいて、何も起こらないはずがないと、妖し者たちは思っていた。
「供物に差し出せと命じるつもりだったんだが」
『ぬし、我らのものを横取りするつもりか!』
百年間、杜の支配権を奪われ続けた番人は、憤怒する。
百鬼が現れる前まで、番人が実質的な支配者だったのだ。杜を奪うだけではなく、今度は不精を慰める嬲り者さえ、奪おうとしている。
「まあ、まてって。女ならば、供物に差し出せといえるのだが、男で、しかもそのような童ではなあ。子を孕ませることもできぬし」
『ならば立ち去るが良い。この人間は我々の玩具だ』
「ひや…あ、ああん。い、い…そこ、やぁ…」
百鬼と番人が牽制しあっている間も、大神の律動は止まらなかった。激しく深く貫いているのは、傍観者たちにも判る。
見つめている妖し者たちの中には、滑稽なことだが、唾を飲む者たちもいた。大神のあとは、もしかしたら己たちが恩恵を預かるかもしれない。そんな期待を込めた妖し者たちが、にじり寄ってくる。
「と、思ってたんだが…」
百鬼の目が、犯されている童の痴態に吸い寄せられていく。白い躰の瑞々しさと、男のながらも悩ましい嬌声が、百鬼をその場から立ち去らせなかった。
「あ、あ、…やあん」
いよいよ大神が今までなく激しい一突きをする。犯されている童は、躰を仰け反らせながら、腹にくっ付きそうなほど起っていた陰茎から何かを吐き出した。
大神も低く唸りながら、童の中に白濁の液を注ぎこんだ。
「あぁ、ぁあ…」
犯す躰が弛緩し頭を垂らしても大神は離れず、全てを注ぎ込むとようやく離れた。
童の尻の孔から、大神の残滓が零れ、内股を伝っていく
大神が離れると、じりじりと他の妖し者たちがにじり寄ってきた。杜の主である百鬼がいるのにも関わらず。
今まさに、次の者たちに童が犯されんとするその時、百鬼は口を開いた。
「そいつを俺によこせ」
『何を言う!』
『そうだ、何を唐突に』
百鬼は童に近づくと、童の細い腕に絡み付いている蔓を力任せに引きちぎった。
引き千切られた蔓から甲高い悲鳴が漏れる。しかしそんな事を気にする百鬼ではない。
蔓から解放され崩れ落ちる童を、百鬼は片手で抱き上げた。支えられた腕に童は微かに顔を上げた。
そこにいるのは、二本の角と赤褐色の肌色をした、人間に酷く似た鬼だった。
「おに…」
驚いた様子だったが、妖し者たちに散々犯されてしまった後では、酷くうろたえた様子はない。しなやかな躰は、腕に心地よい重さを感じさせた。背丈は、百鬼の胸の辺りぐらいかないだろう。
『貴様、何をする!?』
「何って、みりゃ判るだろ。この童を貰い受けるんだよ」
『そんな勝手は許さぬぞっ』
番人の声に他の者たちも呼応する。大神でさえも、低く唸りながら百鬼を睨んでいる。
百鬼は騒ぎ立てる杜の住人たちを見回して、
「だまれ」
低く唸った。
「貴様ら、誰のお陰でこの杜で生きていられると思っている。杜の主は、俺だ。その俺が、杜に入ってきた人間をどうしようと、俺の勝手だ」
一方的な言い草だが、百鬼のお陰で、杜は平安が保たれている。
百鬼が途轍もない力を持っていることを、皆知っていた。この100年、挑戦しにやってきた者は数知れず…だが、一度たりとも負けたことは無い。
「それにな、貴様らでは、こいつを真に狂わせることはできまい」
百鬼はその場に胡坐を掻くと、童の躰を後ろから支え、大きく肢を開かせた。赤褐色の掌が、白い肌を撫ぜる。
「や、ぁ…めて…もう、許して…」
しかし童の願いは聞き入られない。
吐き出したことで萎えてしまった陰茎と陰嚢を一度に掌で弄ぶと、その奥にある尻の孔に指先を差し入れえた。
ぱくぱくと震えている蕾に、いきなり太い指を差し入れても大した抵抗がなかった。
鬼の指が差し込まれたことで、中に溜まっていた液があふれ出す。とろとろと流れ始めた液は留まることをしらない。
「出してしまわなねえと、俺の物ははいらねえな」
「いやぁ。いやあ!」
百鬼はひとり呟くと、もう一本指を差し入れ、筋を大きく割り開いた。
「ぬしら、相当こやつを可愛がっていたようだな」
トロリとろりと多量にあふれ出したものをみると、大神の前にも随分となぶられていたらしい。
良くぞこんなに吐き出したものだと、百鬼は呆れた。
「ひあう!」
童が甲高い声を上げた。と同時に、溢れていた液が止まり、不思議に思って百鬼は見下ろした。
みてみると童の尻の孔から突起が飛び出し蠢いている。その蠢く物は童の美しい色をした孔に似つかわしくないほど、派手な紫をしていた。
「なんだ、これは?」
百鬼は先で突起の先を突くと、蠢く物は童の中に戻ろうとする。嫌々と見事な黒髪を童は振った。
「良い匂いをしているな、お前」
腕に抱いた項から漂う匂いに、百鬼は感嘆した。腕に抱いた童の髪が、鬼の肩や胸板を擽った。
「いや…ぬ、いて…!」
「そうか、厭か厭か。なら、とってやる」
思わぬ童の艶かしい姿態に、百鬼は急速に態度を変えた。掌で童の膝小僧をゆるゆると撫でると、孔に指を差し入れた。
百鬼は指先でその突起を掴むと、一気に引き抜く。
「やあ、あん!」
童は喉を仰け反らせ、躰を弛緩させた。百鬼が引き抜いたのは蛭であった。百鬼の指先に摘まれた蛭は逃げようともがくが、その前に百鬼が振り投げ、蛭はどこかにいってしまった。
異物が飛び出たことで、孔に残っていた液も全て零れ落ちたようだ。
蛭は腸の置くまで入り込み、さらに妖し者が犯していたのだ。杜に入ってしまったがために、何とも不憫なことだった。
「ま、俺にそんな感情は持ち合わせてはないがな」
百鬼は下肢の下穿きから己の一物を取り出すと、童の尻に擦り付けた。人間の男根より随分と大きく、天に向かってそそり立っている。
童は、既に朦朧としていた。
犯され続け、緩んでしまったのは尻の孔だけではなかったようだ。
鬼はすっかり忘れていたが、杜の妖し者たちは、誰として立ち去ってはいなかった。みな一心に、童を凝視し、その痴態を見届けんとしていた。
「ぁああああ!ひ、ん、や、めて…!!」
百鬼は童の腰を掴み、少し浮かせると孔に亀頭を沈み込ませた。
しかし、七尺もの背丈がある百鬼の一物が、蛭やら大神やらと比べられるはずがない。余りの大きさに、まるで酷く熱い棍棒に犯されてる気がしていた。
朦朧としていた童の躰は、次第に振るえ、ついには躰を仰け反らせた。
百鬼は狭い中を、圧倒的な力で押し広げて行った。
「あ、う…、はあう」
幼い喘ぎを漏らしながら仰け反る躰を抱えなおし、百鬼は童の陰茎にふれた。陰茎に触れた途端、孔が緩む。その緩みを見逃さず、百鬼は一物を押し込んだ。
「ひ、ぃん」
百鬼は弐・参度それを繰り返しても、半分ほどしか入らない。それでも鬼は長いものを全て治めようと、童の細い肩を掴み、強引に割いた。
「ひ、ぃ、あああ。壊、れる…!」
一物を全て押し込んだ。硬い陰毛が童の尻に当たっている。
「良いな、こやつ」
百鬼は柔らかい尻を掌で揉み上げ、見せ付けるように童の太股を大きく開かせた。
「どうだ、この白い尻には、俺の物が一番合う」
一見して異様である。白い腹を引き攣らせ仰け反っている阿栢は、紅い唇から涎を垂らし喘いでいた。
男といってもまだ若い、長い生をいきている妖し者たちにとっては童といえる年齢の人間が、鬼に犯されているのだ。
また、不思議な淫靡さがあるのも否定しきれない。鬼は妖し者たちのなかでは、人間と顔かたちは非常に似ている。
鬼の角が無く、肌がもっと薄い色ならば、人間同士の交わりに見えたかもしれない。
童が落ち着くまで百鬼はまった。細い背筋を無骨な指先で撫で、一切動かず、中が百鬼の一物の形に慣れるまで童を抱きしめていた。
「そなた、名は?」
その時になって初めて、百鬼は犯している童の名を尋ねた。
「あ、阿、栢…」
「阿栢か…良い名だ」
百鬼は太股を掴んだまま、律動を始めた。結合した部分から激しい水音がし、見る者たちを寄せ付ける。
阿栢のつんと起った胸の突起が、淡く腫れていた。百鬼は指先で、それを摘みながら、酷くつねることもあった。
「や…い、たい、よぉ…」
幼い口調に、妖し者たちが生唾を飲む音がする。
しかし、彼らは指を咥えて見ているしかない。
嬲りたくても嬲れない。犯したくても犯せない。鬼が、阿栢と呼ばれる童に執着してしまったのは誰の目にも明らかだった。
「うあ、は、あん…だめ…やあ…」
無意識に拒む言葉が漏れてしまうのも、それだけ百鬼のものが長い上に太く、躰の芯まで犯しているからだろう。
激しさは増すばかりだった。いつの間にか萎えていた童の陰茎が反り返り、先走りの液がちょろちょろと漏れていた。
「阿栢、お前は俺のものだ」
耳元に囁かれ、阿栢は瞳を硬く瞑った。躰の芯から湧き上がってくる快感が、とまらない。
百鬼は阿栢の細い顎をつかみ、振り向かせると口付けた。
「く、うん…む…」
甘い声が鼻から抜ける。太い物が尻の孔を犯し、白い肌を弄られ、全てを支配される。
激しい百鬼の迸りを受けながら、阿栢は啼いた。
鬼が低く呻き、大きく拡げられていた太股が強張る。阿栢は快楽の証が己の陰茎から開放されるのと同時に、ゆっくりと堕ちていった。
達した阿栢は、背を鬼の胸板に預けた。酷く挑まれて、躰が動かない。己で起き上がるのさえ、困難だった。
信じられないことだが、阿栢の尻を孔を犯している物は、未だに質量を増したままだった。
人の世には戻れない。そんな予感を感じていた。そしてそれは確信となった。
阿栢の躰が反転する。
気がつけば、阿栢は鬼と、向き合う形になっていた。
鬼は赤褐色の掌で、阿栢の滑らかな頬をつかんでいた。
白い尻と背の細さ、手足のしなやかさ、美しい黒髪と其処から漂う匂いは、百鬼を虜にさせるには十分だった。
百鬼はひくひくと震えている尻の孔に指を差し入れ、大きく開かせた。立ち上がった鬼の一物は、阿栢の内股でその存在を発揮している。
「阿栢、俺の伴侶となれ」
百鬼に囁かれ、阿栢はどこか遠い話のような気がしていた。
阿栢の孔に再び、一物が差し込まれた。先ほどまで飲み込んでいたせいで、易々と最奥まで呑み込める。
深い結合に、嬌声が間も無く響き始めた。
百鬼は心地よい内壁の締め付けに、愉しそうに腰を揺らしていた。
その厭らしい結合を、妖し者たちが見つめていた。
鬼と人間という異種間の性交に、全ての者たちが魅せられていたのは紛れようもない事実だった。
終焉
身の丈は、七尺近い大柄で、百鬼が通れば地が震え、杜に棲んでいるものが一斉に散ってしまう。
百鬼は杜の主になっていた。そんな百鬼の下に、ある噂が聞こえてきた。ほんの数日前、杜に人が立ち入ってしまったとのことだ。
杜の入り口には声のみの番人がいる。
かつては大木であった参本の樹が、いつの間にか意志を持ち、杜に入ってくる者たちを追い出しているのだ。
その番人たちが、近頃、彷徨ってきた人間を嬲り者にしているのだと言う。
珍しいことだ。過去、幾人もの人間が杜に迷い込んできたが、一度たりともそのまま留め置いたことはない。
百鬼は近頃退屈していた。
杜の主となって百年近くになるが、杜の主を狙うものは弱く退屈にも程があるのだ。
嬲り者となっている人間の性別は聞き及んでいないが、美貌の持ち主だということだった。
妖し者たちのを惹きつける美貌というならば、百鬼は供物として捧げさせようと考えていた。ただし、女ならばの話だが。
女ならば、子を孕ませよう。男ならば、そのまま番人たちの嬲り者として捨て置こう。
そう思い、杜の入り口に出向いたのだ。
杜の入り口には、様々な種類の妖し者たちがいた。杜の番人たちとは縄張りが違う者たちもいた。
百鬼の耳に届くほどに噂は広がっているのをみると、杜を棲家としているほとんどの者が恐らく知っているだろう。
杜の支配者の気配を感じ取ると、みなひれ伏し道を開いた。百鬼はそれを当然として、開かれた途を歩いた。
百鬼はその中心で、犯されている人間がいるのをみつけた。犯されているのは、どうやら男のようだ。しかも若い…百鬼からすれば、童と言えた。
見事な黒髪をしていることを見ると、公家の子息と言った所だろか。
童の尻は、大神と呼ばれる大型の狼に犯されていた。腰を高く掲げる形でうつ伏せている童の背に、前足をつき、大神は荒々しく息を吐きながら腰を振っていた。
『何のようだ、杜の主』
番人のひとりが百鬼を見つけ、投げ掛ける。
「貴様らが、人間を嬲ってると聞いてな、見に来たのだ」
百鬼が返している間も、人間の嬌声は響いている。百鬼が訪れたことで、緊張が漂っていた。杜の番人と支配者は、お世辞にも懇意とは言えない。その両者がいて、何も起こらないはずがないと、妖し者たちは思っていた。
「供物に差し出せと命じるつもりだったんだが」
『ぬし、我らのものを横取りするつもりか!』
百年間、杜の支配権を奪われ続けた番人は、憤怒する。
百鬼が現れる前まで、番人が実質的な支配者だったのだ。杜を奪うだけではなく、今度は不精を慰める嬲り者さえ、奪おうとしている。
「まあ、まてって。女ならば、供物に差し出せといえるのだが、男で、しかもそのような童ではなあ。子を孕ませることもできぬし」
『ならば立ち去るが良い。この人間は我々の玩具だ』
「ひや…あ、ああん。い、い…そこ、やぁ…」
百鬼と番人が牽制しあっている間も、大神の律動は止まらなかった。激しく深く貫いているのは、傍観者たちにも判る。
見つめている妖し者たちの中には、滑稽なことだが、唾を飲む者たちもいた。大神のあとは、もしかしたら己たちが恩恵を預かるかもしれない。そんな期待を込めた妖し者たちが、にじり寄ってくる。
「と、思ってたんだが…」
百鬼の目が、犯されている童の痴態に吸い寄せられていく。白い躰の瑞々しさと、男のながらも悩ましい嬌声が、百鬼をその場から立ち去らせなかった。
「あ、あ、…やあん」
いよいよ大神が今までなく激しい一突きをする。犯されている童は、躰を仰け反らせながら、腹にくっ付きそうなほど起っていた陰茎から何かを吐き出した。
大神も低く唸りながら、童の中に白濁の液を注ぎこんだ。
「あぁ、ぁあ…」
犯す躰が弛緩し頭を垂らしても大神は離れず、全てを注ぎ込むとようやく離れた。
童の尻の孔から、大神の残滓が零れ、内股を伝っていく
大神が離れると、じりじりと他の妖し者たちがにじり寄ってきた。杜の主である百鬼がいるのにも関わらず。
今まさに、次の者たちに童が犯されんとするその時、百鬼は口を開いた。
「そいつを俺によこせ」
『何を言う!』
『そうだ、何を唐突に』
百鬼は童に近づくと、童の細い腕に絡み付いている蔓を力任せに引きちぎった。
引き千切られた蔓から甲高い悲鳴が漏れる。しかしそんな事を気にする百鬼ではない。
蔓から解放され崩れ落ちる童を、百鬼は片手で抱き上げた。支えられた腕に童は微かに顔を上げた。
そこにいるのは、二本の角と赤褐色の肌色をした、人間に酷く似た鬼だった。
「おに…」
驚いた様子だったが、妖し者たちに散々犯されてしまった後では、酷くうろたえた様子はない。しなやかな躰は、腕に心地よい重さを感じさせた。背丈は、百鬼の胸の辺りぐらいかないだろう。
『貴様、何をする!?』
「何って、みりゃ判るだろ。この童を貰い受けるんだよ」
『そんな勝手は許さぬぞっ』
番人の声に他の者たちも呼応する。大神でさえも、低く唸りながら百鬼を睨んでいる。
百鬼は騒ぎ立てる杜の住人たちを見回して、
「だまれ」
低く唸った。
「貴様ら、誰のお陰でこの杜で生きていられると思っている。杜の主は、俺だ。その俺が、杜に入ってきた人間をどうしようと、俺の勝手だ」
一方的な言い草だが、百鬼のお陰で、杜は平安が保たれている。
百鬼が途轍もない力を持っていることを、皆知っていた。この100年、挑戦しにやってきた者は数知れず…だが、一度たりとも負けたことは無い。
「それにな、貴様らでは、こいつを真に狂わせることはできまい」
百鬼はその場に胡坐を掻くと、童の躰を後ろから支え、大きく肢を開かせた。赤褐色の掌が、白い肌を撫ぜる。
「や、ぁ…めて…もう、許して…」
しかし童の願いは聞き入られない。
吐き出したことで萎えてしまった陰茎と陰嚢を一度に掌で弄ぶと、その奥にある尻の孔に指先を差し入れえた。
ぱくぱくと震えている蕾に、いきなり太い指を差し入れても大した抵抗がなかった。
鬼の指が差し込まれたことで、中に溜まっていた液があふれ出す。とろとろと流れ始めた液は留まることをしらない。
「出してしまわなねえと、俺の物ははいらねえな」
「いやぁ。いやあ!」
百鬼はひとり呟くと、もう一本指を差し入れ、筋を大きく割り開いた。
「ぬしら、相当こやつを可愛がっていたようだな」
トロリとろりと多量にあふれ出したものをみると、大神の前にも随分となぶられていたらしい。
良くぞこんなに吐き出したものだと、百鬼は呆れた。
「ひあう!」
童が甲高い声を上げた。と同時に、溢れていた液が止まり、不思議に思って百鬼は見下ろした。
みてみると童の尻の孔から突起が飛び出し蠢いている。その蠢く物は童の美しい色をした孔に似つかわしくないほど、派手な紫をしていた。
「なんだ、これは?」
百鬼は先で突起の先を突くと、蠢く物は童の中に戻ろうとする。嫌々と見事な黒髪を童は振った。
「良い匂いをしているな、お前」
腕に抱いた項から漂う匂いに、百鬼は感嘆した。腕に抱いた童の髪が、鬼の肩や胸板を擽った。
「いや…ぬ、いて…!」
「そうか、厭か厭か。なら、とってやる」
思わぬ童の艶かしい姿態に、百鬼は急速に態度を変えた。掌で童の膝小僧をゆるゆると撫でると、孔に指を差し入れた。
百鬼は指先でその突起を掴むと、一気に引き抜く。
「やあ、あん!」
童は喉を仰け反らせ、躰を弛緩させた。百鬼が引き抜いたのは蛭であった。百鬼の指先に摘まれた蛭は逃げようともがくが、その前に百鬼が振り投げ、蛭はどこかにいってしまった。
異物が飛び出たことで、孔に残っていた液も全て零れ落ちたようだ。
蛭は腸の置くまで入り込み、さらに妖し者が犯していたのだ。杜に入ってしまったがために、何とも不憫なことだった。
「ま、俺にそんな感情は持ち合わせてはないがな」
百鬼は下肢の下穿きから己の一物を取り出すと、童の尻に擦り付けた。人間の男根より随分と大きく、天に向かってそそり立っている。
童は、既に朦朧としていた。
犯され続け、緩んでしまったのは尻の孔だけではなかったようだ。
鬼はすっかり忘れていたが、杜の妖し者たちは、誰として立ち去ってはいなかった。みな一心に、童を凝視し、その痴態を見届けんとしていた。
「ぁああああ!ひ、ん、や、めて…!!」
百鬼は童の腰を掴み、少し浮かせると孔に亀頭を沈み込ませた。
しかし、七尺もの背丈がある百鬼の一物が、蛭やら大神やらと比べられるはずがない。余りの大きさに、まるで酷く熱い棍棒に犯されてる気がしていた。
朦朧としていた童の躰は、次第に振るえ、ついには躰を仰け反らせた。
百鬼は狭い中を、圧倒的な力で押し広げて行った。
「あ、う…、はあう」
幼い喘ぎを漏らしながら仰け反る躰を抱えなおし、百鬼は童の陰茎にふれた。陰茎に触れた途端、孔が緩む。その緩みを見逃さず、百鬼は一物を押し込んだ。
「ひ、ぃん」
百鬼は弐・参度それを繰り返しても、半分ほどしか入らない。それでも鬼は長いものを全て治めようと、童の細い肩を掴み、強引に割いた。
「ひ、ぃ、あああ。壊、れる…!」
一物を全て押し込んだ。硬い陰毛が童の尻に当たっている。
「良いな、こやつ」
百鬼は柔らかい尻を掌で揉み上げ、見せ付けるように童の太股を大きく開かせた。
「どうだ、この白い尻には、俺の物が一番合う」
一見して異様である。白い腹を引き攣らせ仰け反っている阿栢は、紅い唇から涎を垂らし喘いでいた。
男といってもまだ若い、長い生をいきている妖し者たちにとっては童といえる年齢の人間が、鬼に犯されているのだ。
また、不思議な淫靡さがあるのも否定しきれない。鬼は妖し者たちのなかでは、人間と顔かたちは非常に似ている。
鬼の角が無く、肌がもっと薄い色ならば、人間同士の交わりに見えたかもしれない。
童が落ち着くまで百鬼はまった。細い背筋を無骨な指先で撫で、一切動かず、中が百鬼の一物の形に慣れるまで童を抱きしめていた。
「そなた、名は?」
その時になって初めて、百鬼は犯している童の名を尋ねた。
「あ、阿、栢…」
「阿栢か…良い名だ」
百鬼は太股を掴んだまま、律動を始めた。結合した部分から激しい水音がし、見る者たちを寄せ付ける。
阿栢のつんと起った胸の突起が、淡く腫れていた。百鬼は指先で、それを摘みながら、酷くつねることもあった。
「や…い、たい、よぉ…」
幼い口調に、妖し者たちが生唾を飲む音がする。
しかし、彼らは指を咥えて見ているしかない。
嬲りたくても嬲れない。犯したくても犯せない。鬼が、阿栢と呼ばれる童に執着してしまったのは誰の目にも明らかだった。
「うあ、は、あん…だめ…やあ…」
無意識に拒む言葉が漏れてしまうのも、それだけ百鬼のものが長い上に太く、躰の芯まで犯しているからだろう。
激しさは増すばかりだった。いつの間にか萎えていた童の陰茎が反り返り、先走りの液がちょろちょろと漏れていた。
「阿栢、お前は俺のものだ」
耳元に囁かれ、阿栢は瞳を硬く瞑った。躰の芯から湧き上がってくる快感が、とまらない。
百鬼は阿栢の細い顎をつかみ、振り向かせると口付けた。
「く、うん…む…」
甘い声が鼻から抜ける。太い物が尻の孔を犯し、白い肌を弄られ、全てを支配される。
激しい百鬼の迸りを受けながら、阿栢は啼いた。
鬼が低く呻き、大きく拡げられていた太股が強張る。阿栢は快楽の証が己の陰茎から開放されるのと同時に、ゆっくりと堕ちていった。
達した阿栢は、背を鬼の胸板に預けた。酷く挑まれて、躰が動かない。己で起き上がるのさえ、困難だった。
信じられないことだが、阿栢の尻を孔を犯している物は、未だに質量を増したままだった。
人の世には戻れない。そんな予感を感じていた。そしてそれは確信となった。
阿栢の躰が反転する。
気がつけば、阿栢は鬼と、向き合う形になっていた。
鬼は赤褐色の掌で、阿栢の滑らかな頬をつかんでいた。
白い尻と背の細さ、手足のしなやかさ、美しい黒髪と其処から漂う匂いは、百鬼を虜にさせるには十分だった。
百鬼はひくひくと震えている尻の孔に指を差し入れ、大きく開かせた。立ち上がった鬼の一物は、阿栢の内股でその存在を発揮している。
「阿栢、俺の伴侶となれ」
百鬼に囁かれ、阿栢はどこか遠い話のような気がしていた。
阿栢の孔に再び、一物が差し込まれた。先ほどまで飲み込んでいたせいで、易々と最奥まで呑み込める。
深い結合に、嬌声が間も無く響き始めた。
百鬼は心地よい内壁の締め付けに、愉しそうに腰を揺らしていた。
その厭らしい結合を、妖し者たちが見つめていた。
鬼と人間という異種間の性交に、全ての者たちが魅せられていたのは紛れようもない事実だった。
終焉
13
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