暴れん坊小町

クライングフリーマン

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66.出たとこ勝負

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 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
 神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
 船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。

 中町巡査・・・茂原の交代要員だったが、そのまま勤務している巡査。
 楠田巡査・・・チエの相棒。
 畑山紅葉(もみじ)・・・副署長の娘。巡査。亡くなった夫の姓のまま、復職。
 遊佐圭祐・・・チエの幼なじみ。大学同級生。CATV『きょうとのテレビ』課長。
 弓矢警部・・・府警捜査四課刑事。

 =====================================

 午前9時。東山署。会議室。
 芸者ネットワークのホットラインが鳴った。
 署長の神代が受話器を取った。スピーカーをオンにした。
「小雪です。署長さん。番号変わらないけど、会社名、変わりますねん。新しい名前はGeikoネットワークです。」
「小雪ちゃん。島さんはまだ休業中?」
「明日から出社です。再スタートです。」
「再スタート。ああ、籍入れはったんやな。それで、京都らしい名前で再スタートやな。」
 短い会話だったが、神代は事情をある程度知っているだけに安堵した。
「改名ですか。ほな、電話帳・・・。」
「もう、変えましたで、お父さん。」と、船越に紅葉が応えた。
 のんびりした一日が始まりそうな気配は一瞬だった。
 京都大銀行に銀行強盗が入ったからだ。
 府警の要請で、東山署に応援依頼が来た。
 被疑者に外国人がいるからだ。

 午前9時半。京都大銀行。
 出入り口付近に捜査員が大勢張り付いている。
「警視。誰がどの国の外国人か分かりません。」
 府警の警察官は、狼狽えている。
「ばらさん、出入り口は?」
「正面と、ATM連絡口。それと、元行員から聞き出しましたが、従業員トイレ側に非常口があるそうです。1階と2階です。」
「分かった。ばらさん達は、適当に交渉する振りして。仮に被疑者が全員外国人でも、行員に通訳させる筈や。」
「了解しました。楠田、ついていけ。」
「了解しました。」

 チエが2階トイレから侵入すると、縛られた遊佐がいた。
「どういうこと?」
「こういうこと。」と、チエの頬に冷たいモノが当たった。
 罠か。
「名前、聞いてもええ?」「名乗ったら、即殺す。名乗らなかったら、半時間後に、こいつと一緒に殺す。どっちがいい?」
 その時、聞いたことのある音がした。電気カミソリの音だ。
「名前、聞くのはええわ。ウチ、忘れっぽいし。」
「賢明だ。」
 白い球が転がってきた。
 チエは、遊佐に覆い被さった。
 白煙が立ちこめた。
 白煙の中、チエは被疑者の股間を蹴り上げた。
 頽れた被疑者の首に手刀を打ち込んだ。

 チエは、救急車の中で酸素マスクを被された。
 チエを追って侵入したのは、四課の弓矢だった。
 彼は、前もってチエに合図する為、電気カミソリのスイッチを入れた。
 そして、発煙筒が投げ込まれた。

 連行される時、被疑者は叫んだ。
「そんな馬鹿な!いつ打ち合せしたんだ!!」
「Play it by ear(プレイ・イット・バイ・イヤー)。」
「ふん、『出たとこ勝負』か。流石、『暴れん坊小町』だな。」
「褒め言葉と思っておくよ。弓矢さん、後は任せた。」
「了解した、警視殿。」

 午後5時過ぎ。東山署。取調室外。
 外国人の『バイト』の被疑者の尋問を終え、チエが出てくると、オムツを持って、茂原と中町が入って行く。
 今日は、小雪は、お座敷の準備がある為、来ていない。
 白鳥と遊佐が来ていた。
「ご苦労様。」白鳥が缶コーヒーを差し出す。
 遊佐が、「ごめんな、チエちゃん。」と謝った。
「何が?」と言って、チエはキョロキョロした。
「チエちゃんも有名になったな、悪い奴らに。」白鳥が珍しく冗談を言った。

 午後7時。神代家。
 カレーライスを食べながら、神代は言った。
「お前、やっぱり天職やな。」
「ちゃん。褒めすぎ。後で藍月バー食べような。」

 ―完―
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