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20.チエの僥倖
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========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。チエを「お嬢」と呼んだり、「小町」と呼んだりしている。
=====================================
京都の地蔵盆の日。午後5時。水上家。
共働きの家では、留守の家が空き巣に入られていた。
既に、上京区、西京区、右京区、左京区、中京区、山科区で被害が出ていた。
東山区では、神代警視正が緊急警戒を指令していた。
チエは、交番の巡査の調査を元に、共働き世帯を割り出し、10軒の協力を得て、囮捜査を指揮していた。
水上次郎は、町会議員をして自警団も結成して、夜回りもする人だった。
単なるサラリーマンに違いないが、チエの熱心さに根負けして協力することにした。
子供は、お菓子に弱い。
実は、チエには、黒歴史があった。警察官という職業は『逆恨み』されやすい。
父親の警視正も例外ではない。彼は、危険を感じてまだ警部になり立ての頃、チエの母親志津と離婚した。
だが、『逆恨み』した暴漢はやって来た。
地蔵盆の日、チエがお菓子を貰いに回っていて、遅くなって母の家に帰宅すると、消防車が沢山来ていて、母の家は半焼した。
強盗殺人放火事件だった。それだけではない。司法解剖の結果、志津はレイプされていた。
病弱で寝たり起きたりの志津は、抗う手段もなく、レイプされた後、殺された。
救出された志津は、放火と共に骨になるところだったが、近所の通報が早かったから、遺体は存在あいたのだ。
チエは半狂乱になった。
レイプのことを知ったのは、後年になってからだったが、自分が遊び呆けていた為に母が犠牲になった。そう思ったのだ。
離婚しても、近親者だから、時々会いに行っていたが、もう敵わない。母は他界したのだ。
チエを救ったのが、神父だった。そして、許嫁の白鳥だった。
離婚した際、母の旧姓の戸部だったが、チエの要望で、戸籍はそのままだった。
神代は、チエを引き取った。戸籍は神代になった。
神代も、周囲の人々も、警察官になることに反対したが、チエは言うことを聞かなかった。「葵祭」の斎王は、女性警察官になった。そして、実績を積んで、警視になった。
チエが、犯人を憎む余り、股間を蹴ったり踏んだりするのは、チエの母親の事件があったからだと神代は思っていた。
通称が『戸部』なのは、回りが神代とチエに慮ったからだ。
チエが回想していると、賊が侵入した。
「そこまでや!」「誰や、お前?」「人呼んで、『暴れん坊小町』!見参!!」
言うが早いか、犯人がナイフを取り出す前に素手で倒した。賊は5人組だった。
午後6時。東山区。東山警察署。取調室の外。
複数の男の悲鳴が漏れ聞こえた。
「今日は、一段と男性コーラスの声が大きいな。」と、自販機の前で船越副署長が茂原刑事に呟いた。
「レイプは無かったみたいやけど、お嬢のトラウマもキツいですからね。まあ、悪党にはお仕置きが必要ですわな。」
声が静まり、チエは鼻息荒く出てきた。
そのまま表に出たので、女性警察官から『大人用オムツ』を預かり、副署長と茂原は、取調室に入った。
お漏らしして横たわっている五人組の側の机の上には、綺麗な文字の調書が乗っていた。
午後7時。神代家。
「ちゃん。明日、神父の先生とこに連れて行って。」
「懺悔やろ?1人でよう行かんか?」「連れて行って!」
「分かった分かった。」と神代が返事をすると、チエは衣類を脱いで、神代の手を引き、風呂場に向かった。
チエは、脱衣所で脱いだことが無かった。幼い頃の習慣は、まだ続いていた。
―完―
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。チエを「お嬢」と呼んだり、「小町」と呼んだりしている。
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京都の地蔵盆の日。午後5時。水上家。
共働きの家では、留守の家が空き巣に入られていた。
既に、上京区、西京区、右京区、左京区、中京区、山科区で被害が出ていた。
東山区では、神代警視正が緊急警戒を指令していた。
チエは、交番の巡査の調査を元に、共働き世帯を割り出し、10軒の協力を得て、囮捜査を指揮していた。
水上次郎は、町会議員をして自警団も結成して、夜回りもする人だった。
単なるサラリーマンに違いないが、チエの熱心さに根負けして協力することにした。
子供は、お菓子に弱い。
実は、チエには、黒歴史があった。警察官という職業は『逆恨み』されやすい。
父親の警視正も例外ではない。彼は、危険を感じてまだ警部になり立ての頃、チエの母親志津と離婚した。
だが、『逆恨み』した暴漢はやって来た。
地蔵盆の日、チエがお菓子を貰いに回っていて、遅くなって母の家に帰宅すると、消防車が沢山来ていて、母の家は半焼した。
強盗殺人放火事件だった。それだけではない。司法解剖の結果、志津はレイプされていた。
病弱で寝たり起きたりの志津は、抗う手段もなく、レイプされた後、殺された。
救出された志津は、放火と共に骨になるところだったが、近所の通報が早かったから、遺体は存在あいたのだ。
チエは半狂乱になった。
レイプのことを知ったのは、後年になってからだったが、自分が遊び呆けていた為に母が犠牲になった。そう思ったのだ。
離婚しても、近親者だから、時々会いに行っていたが、もう敵わない。母は他界したのだ。
チエを救ったのが、神父だった。そして、許嫁の白鳥だった。
離婚した際、母の旧姓の戸部だったが、チエの要望で、戸籍はそのままだった。
神代は、チエを引き取った。戸籍は神代になった。
神代も、周囲の人々も、警察官になることに反対したが、チエは言うことを聞かなかった。「葵祭」の斎王は、女性警察官になった。そして、実績を積んで、警視になった。
チエが、犯人を憎む余り、股間を蹴ったり踏んだりするのは、チエの母親の事件があったからだと神代は思っていた。
通称が『戸部』なのは、回りが神代とチエに慮ったからだ。
チエが回想していると、賊が侵入した。
「そこまでや!」「誰や、お前?」「人呼んで、『暴れん坊小町』!見参!!」
言うが早いか、犯人がナイフを取り出す前に素手で倒した。賊は5人組だった。
午後6時。東山区。東山警察署。取調室の外。
複数の男の悲鳴が漏れ聞こえた。
「今日は、一段と男性コーラスの声が大きいな。」と、自販機の前で船越副署長が茂原刑事に呟いた。
「レイプは無かったみたいやけど、お嬢のトラウマもキツいですからね。まあ、悪党にはお仕置きが必要ですわな。」
声が静まり、チエは鼻息荒く出てきた。
そのまま表に出たので、女性警察官から『大人用オムツ』を預かり、副署長と茂原は、取調室に入った。
お漏らしして横たわっている五人組の側の机の上には、綺麗な文字の調書が乗っていた。
午後7時。神代家。
「ちゃん。明日、神父の先生とこに連れて行って。」
「懺悔やろ?1人でよう行かんか?」「連れて行って!」
「分かった分かった。」と神代が返事をすると、チエは衣類を脱いで、神代の手を引き、風呂場に向かった。
チエは、脱衣所で脱いだことが無かった。幼い頃の習慣は、まだ続いていた。
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