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34.名誉の負傷
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========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。
中町圭祐・・・下鴨署からの転勤。巡査部長。
嵐山幸恵・・・小雪の母。
=====================================
※京都府立文化芸術会館は、京都府開庁100年記念事業のひとつとして、京都における文化芸術活動の拠点として、演劇・古典芸能・舞踊・音楽など、様々なジャンルの上演に適した舞台芸術専用ホールと美術・工芸作品等に適した展示室や会議室などを総合した総合文化施設として、昭和45年(1970年)1月8日に開館しました。
2020年1月に開館50周年を迎え、京都における文化芸術の創造・発信の中核施設として広く利用されています。
午後1時。京都市左京区。上白川上野病院。幸田の病室。
茂原は、逮捕連行中の被疑者が暴れた為、骨折。入院することになった。
「ばらさん、ごめんな。ウチがちょっと目離したばっかりに。」
「お嬢のせいやない。お嬢のせいにしたら、署長に叱られるだけやから。」
2人が話していると、小雪が小雪の母幸恵の車椅子を押して入って来た。
「「ばらさん、小雪ちゃんのお母さんや。ここに入院してはるんや。」と、チエは言った。
「チエちゃんの上司さんも、大怪我で大変でしたな。ウチ長いから、ヌシみたいなもんやさかい、何でも病院のことは聞いて下さい。」と幸恵は言った。
「そら、どうも。あ、上司と違って部下ですわ。」と、茂原は照れた。
「え?そうですの?」幸恵は不思議そうな顔をしている。
「茂原さんは、チエちゃんの『お目付役』、ブレーキや。」小雪が割り込んで解説した。
「そのブレーキが故障してしまいました。」と、茂原は照れ笑いをした。
「あ。後任やなくて、ばらさんのピンチヒッターとして、今日転勤してきた中町巡査部長が登板するらしいわ。」「嫌やわ、チエちゃん。野球みたい。」と、小雪がゲラゲラ笑い出した。
チエのスマホが鳴動した。病院内はケータイ禁止だが、一応バイブにしておいた。
チエは、一旦廊下に出た。
数分して、戻って来たチエは言った。
「文化芸術会館で火事や。行って来るわ、ばらさん、小雪ちゃん、おかあさん。」
午後2時。京都府立文化芸術会館。
現場には、大勢の野次馬と、避難した観客でごった返していた。
遠目にも、白煙は出ていない。恐らくボヤで済んだのだろう。
「楠田。ここで止めて。」と、チエは相棒の楠田に言った。
チエと楠田は、ミニパトで移動している。
かつては、婦人警官(女性警察官)の仕事として駐車違反がメインの仕事として注目され『チョーク引き』などと揶揄されたが、今は、『交通巡視員』が駐車違反車両をチェックしている。
最近は、『緑のおじさん』などという愛称で呼ばれたりする。
チエは、チェック中の交通巡視員に声をかけた。
「ご苦労様です。東山署の戸部警視です。この辺で、午前11時から午後一時頃迄『駐禁』していた車両はありませんか?」
「このクルマのことかな?」と、交通巡視員はデジカメの写真と記録をチエに見せた。
「移動したのかも知れませんねえ。」と、暢気なことを言う交通巡視員を尻目に、ミニパトは出発した。
京都府立文化芸術会館の回りを巡回していると、問題の車両を発見出来た。
『緑のおじさん』が見付けた車両は、『緑』、いや、府立医科大学病院の木の陰にあった。
一応、敷地内である。
チエと楠田は、クルマに乗っている外国人2人に窓ガラスをノックして、声をかけた。
「駐車違反じゃないだろう?」と、英語で言ったが、チエは英語で応えた。
"No Problem,Arsonist."(大丈夫よ、放火犯さん。)
彼らは、クルマを降りて、ダッシュした。楠田は警笛を吹いた。
ぎょっとして、2人は立ち止まった。
そこへ、走って来たチエは2人の背中にキックした。
チエと、追いついて来た楠田は手錠をかけた。
午後4時半。東山署。取調室の外。
絹を引き裂くような?男達の悲鳴が外に聞こえた。
チエが、意気揚々と出てきた。
「後、頼むで。マチやん。」「マチやん?」
「君のことだよ、中町君、『後始末』頼むよ。」と、副署長が文字通り背中を押した。
中町が渋々中に入ろうとすると、楠田が「あ、巡査部長。これを。」と、大人用オムツを手渡した。
「は?」「いいから、入って。初めてだから、私が付き合おう」
副署長と中町巡査部長が取り調べ室に入って行った。
「洗礼、やね。」と小町が廊下にやって来て言った。
「まあ、儀式みたいなものだからね。慣れるまで時間がかかるかな?」
3人はクスクスと笑った。
午後7時。神代家。
「ちゃん、あずきバー、買っておいたで。」「ありがとう。」
「もつかなあ、お前のお守り、大変やで。」「決めたんは、ちゃんやろ?」
「まあ、そうやけどな。何で、下はパンイチやねん。」
「すぐお風呂入るからエエやん。催すか?」
「親、からかうな。醤油とって。」
神代家では、夕食後すぐに『親子水入らず』で風呂に入るのが通例だった。
そして、チエは、神代に童話を読んで貰い、寝入るのだ。
婚約者の白鳥は、チエに『読み聞かせ』する練習をしているらしい。
―完―
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。
中町圭祐・・・下鴨署からの転勤。巡査部長。
嵐山幸恵・・・小雪の母。
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※京都府立文化芸術会館は、京都府開庁100年記念事業のひとつとして、京都における文化芸術活動の拠点として、演劇・古典芸能・舞踊・音楽など、様々なジャンルの上演に適した舞台芸術専用ホールと美術・工芸作品等に適した展示室や会議室などを総合した総合文化施設として、昭和45年(1970年)1月8日に開館しました。
2020年1月に開館50周年を迎え、京都における文化芸術の創造・発信の中核施設として広く利用されています。
午後1時。京都市左京区。上白川上野病院。幸田の病室。
茂原は、逮捕連行中の被疑者が暴れた為、骨折。入院することになった。
「ばらさん、ごめんな。ウチがちょっと目離したばっかりに。」
「お嬢のせいやない。お嬢のせいにしたら、署長に叱られるだけやから。」
2人が話していると、小雪が小雪の母幸恵の車椅子を押して入って来た。
「「ばらさん、小雪ちゃんのお母さんや。ここに入院してはるんや。」と、チエは言った。
「チエちゃんの上司さんも、大怪我で大変でしたな。ウチ長いから、ヌシみたいなもんやさかい、何でも病院のことは聞いて下さい。」と幸恵は言った。
「そら、どうも。あ、上司と違って部下ですわ。」と、茂原は照れた。
「え?そうですの?」幸恵は不思議そうな顔をしている。
「茂原さんは、チエちゃんの『お目付役』、ブレーキや。」小雪が割り込んで解説した。
「そのブレーキが故障してしまいました。」と、茂原は照れ笑いをした。
「あ。後任やなくて、ばらさんのピンチヒッターとして、今日転勤してきた中町巡査部長が登板するらしいわ。」「嫌やわ、チエちゃん。野球みたい。」と、小雪がゲラゲラ笑い出した。
チエのスマホが鳴動した。病院内はケータイ禁止だが、一応バイブにしておいた。
チエは、一旦廊下に出た。
数分して、戻って来たチエは言った。
「文化芸術会館で火事や。行って来るわ、ばらさん、小雪ちゃん、おかあさん。」
午後2時。京都府立文化芸術会館。
現場には、大勢の野次馬と、避難した観客でごった返していた。
遠目にも、白煙は出ていない。恐らくボヤで済んだのだろう。
「楠田。ここで止めて。」と、チエは相棒の楠田に言った。
チエと楠田は、ミニパトで移動している。
かつては、婦人警官(女性警察官)の仕事として駐車違反がメインの仕事として注目され『チョーク引き』などと揶揄されたが、今は、『交通巡視員』が駐車違反車両をチェックしている。
最近は、『緑のおじさん』などという愛称で呼ばれたりする。
チエは、チェック中の交通巡視員に声をかけた。
「ご苦労様です。東山署の戸部警視です。この辺で、午前11時から午後一時頃迄『駐禁』していた車両はありませんか?」
「このクルマのことかな?」と、交通巡視員はデジカメの写真と記録をチエに見せた。
「移動したのかも知れませんねえ。」と、暢気なことを言う交通巡視員を尻目に、ミニパトは出発した。
京都府立文化芸術会館の回りを巡回していると、問題の車両を発見出来た。
『緑のおじさん』が見付けた車両は、『緑』、いや、府立医科大学病院の木の陰にあった。
一応、敷地内である。
チエと楠田は、クルマに乗っている外国人2人に窓ガラスをノックして、声をかけた。
「駐車違反じゃないだろう?」と、英語で言ったが、チエは英語で応えた。
"No Problem,Arsonist."(大丈夫よ、放火犯さん。)
彼らは、クルマを降りて、ダッシュした。楠田は警笛を吹いた。
ぎょっとして、2人は立ち止まった。
そこへ、走って来たチエは2人の背中にキックした。
チエと、追いついて来た楠田は手錠をかけた。
午後4時半。東山署。取調室の外。
絹を引き裂くような?男達の悲鳴が外に聞こえた。
チエが、意気揚々と出てきた。
「後、頼むで。マチやん。」「マチやん?」
「君のことだよ、中町君、『後始末』頼むよ。」と、副署長が文字通り背中を押した。
中町が渋々中に入ろうとすると、楠田が「あ、巡査部長。これを。」と、大人用オムツを手渡した。
「は?」「いいから、入って。初めてだから、私が付き合おう」
副署長と中町巡査部長が取り調べ室に入って行った。
「洗礼、やね。」と小町が廊下にやって来て言った。
「まあ、儀式みたいなものだからね。慣れるまで時間がかかるかな?」
3人はクスクスと笑った。
午後7時。神代家。
「ちゃん、あずきバー、買っておいたで。」「ありがとう。」
「もつかなあ、お前のお守り、大変やで。」「決めたんは、ちゃんやろ?」
「まあ、そうやけどな。何で、下はパンイチやねん。」
「すぐお風呂入るからエエやん。催すか?」
「親、からかうな。醤油とって。」
神代家では、夕食後すぐに『親子水入らず』で風呂に入るのが通例だった。
そして、チエは、神代に童話を読んで貰い、寝入るのだ。
婚約者の白鳥は、チエに『読み聞かせ』する練習をしているらしい。
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