暴れん坊小町

クライングフリーマン

文字の大きさ
48 / 67

48.湯豆腐と『最後の一葉(いちよう)』

しおりを挟む
 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
 白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
 小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
 嵐山幸恵・・・小雪の母。
 島代子(しまたいこ)・・・芸者ネットワーク代表。元芸者元プログラマー。小雪の先輩らしいが、小雪以外には、本名は知られていない。また、本部の住所も極秘である。


 =====================================

 ※「最後の一葉」(さいごのひとは、さいごのいちよう、原題:The Last Leaf)は、オー・ヘンリーの短編小説。「最後の木の葉」とも。
 ※最後に残った葉はベアマンが嵐の中、煉瓦の壁に絵筆で精緻に描いたものだった。 ジョンジーは奇跡的に全快を果たすが、冷たい風雨に打たれつつ夜を徹して壁に葉を描いたベアマンは、その2日後に肺炎で亡くなる。
 ※肺炎で寝こんでしまったジョンシーと、それを支えるスー。 ジョンシーは、毎日隣家のレンガの壁にしがみついている古いツタの葉を見つめる日々。 一枚ずつ散っていくツタの葉と自分の命を重ね、「最後の一枚が散ったら、わたしも死ぬんだわ」と言い出す。 そんなジョンシーを不憫に思う、同じ建物に住む絵描きのベアマン老人。
 ※湯豆腐

 ☆営業時間は、お店に寄って違います。事前に確認しましょう。


 午後5時。南禅寺の水路閣。
 チエは、白鳥と、休暇を楽しんでいた。チエは水路閣のアーチや琵琶湖疎水を眺めるのが好きだった。
 突然、チエのスマホが鳴った。茂原だ。
「お嬢。今、どこです?」
「南禅寺の水路閣や。」「デート中に申し訳・・・。」
「ええから、要件いいや。ばらさん。」
「場所は南禅寺の純正。湯豆腐屋さんです。外人同士揉めてるらしいです。私、まだ、大阪です。」
 電話を切ると、「また、デートの邪魔が入った。」と、チエは白鳥に甘えた。
 笑いながら白鳥は、「すぐそこだね。行こう。未来の奥様。」と言い、ヘルメットを被り、白バイに乗った。
 チエは、予備のヘルメットを被り、『勝負スカート』を翻し、白鳥の後ろに跨がり、しがみついた。
 白バイは、10分もしない内に、店に到着した。
 揉めている外人の1人を見て、チエは声をあげた。以前、芸者ネットワークの関係の事件で知り合った、日本駐在のアメリカ人ジャーナリスト、ジョンシー・マッケンジーだ。
「あれ?ワールド・サテライト・ジャーナルのジョンシーさんやないの。」
「ああ。いい所へ、警視。実は、17時にオープンのお店に来たら、クローズだって言われて。」と、手にしたガイドブックを見せた。
「ああ。これ、間違っているわ。17時にオープンのお店もあれば、クローズのお店もあるの。このお店は18時にクローズだけど、17時にラストオーダーなの。ごっちゃに掲載したのね。それと、夜オープンのお店は、予約制よ。予約してあげるわ。」
 チエがスマホで予約電話している間、キャッチホンが入った。
 電話を切ると、小雪が涙ながらに電話してきた。
「ウチ・・・ウチ・・・。」
「どうしたん?小雪ちゃん。もしかして、おばちゃんが?」
「うん。さっき来たんやけど・・・。」
「すぐ行く。」チエは、湯豆腐屋の電話番号を紙に書いて、ジョンシーに渡した。
「ゴメン。急用できたわ。場所は、電話で確認して。Sorry」
 最後は、もう一方の外人に言って、チエは、白鳥の白バイに乗って去って行った。
 ジョンシーは、チエのことを『暴れん坊小町』とは紹介せず、『将来の警察トップ』と紹介した。
 午後5時45分。上白川上野病院。
 チエ達が案内されたのは、小雪の母幸恵の病室ではなく、個室だった。
 医師が、チエ達に黙礼をして出て行った。
 小雪は、チエに抱きつき、号泣した。
 暫くして、看護師がやってきた。
 遺体の清拭を行うので、待機室で葬儀社に連絡してくれ、と泣いている小雪に言った。
 チエは、小雪の肩を抱き、待機室に移動した。
 東山署の署長である父に電話した。「白鳥君から聞いた。葬儀その他は、島さんに任せて、お前は、小雪ちゃんにずっと付いていてやってくれ。全部終るまで帰って来なくていい。家にも、署にも。」
「今、看護師さんから経緯を尋ねて来た。昨夜、誤嚥性肺炎を起こしたらしい。小雪ちゃんには報せるな、『最後の一葉(いちよう)』が落ちたから、覚悟は出来てるって。一旦回復したんだけど、五時頃、急変したらしい。最後の一葉って、隣の幼稚園のことらしい。今、改装で吹き付け工事の為、壁面の『木』は見えなくなっているんだ。」と白鳥は淡々と話した。
「ちゃんが、ずっと付いていてやれって。葬儀とかは、島さん達に任せればいい、って。」「うん。仕事の方は、皆でバックアップするからね。」
 翌日、翌々日。お通夜告別式は盛大に行われ、元芸者だった、小雪の母の為に、芸者組合からも次々と弔問に訪れた。
 チエは、『親族代表』になった。
 ―完―

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

処理中です...