オペラ、貴婦人と踊る

おかあさんのサラダ。

おかあさんのサラダには、魚肉ソーセージときゅうりと、レタスと、マヨネーズが入ってる。

ぼくは、あんまり好きじゃないんだけど、たべる。

他に食べ物がみあたらないから。

ごはんと味噌汁はある。

でも、おかあさんだって、大変だ。

おとうさんが、仕事をしないでお酒ばかりのんでるから。

しかたないんだ。

さいきん、僕の足は冷たい。

おしっこも、すぐにでない。

お腹が痛い気がする。

いつも、左側がいたい。

しくしくどんどんする。

ときおりだけど。

先生がお薬をくれるといった。

ぼくは何かの病気みたい。

たぶん、でも。

先生はいつも優しい。

ぼくに問いかけてくれる。

体調どうですか?


それだけ。

でもぼくは嬉しい。

先生に毎日あいたいくらい嬉しい。


でも、分かってる。


ぜんぶ、分かってるんだ。


昔、ホンモノをくれたひとがいた。

ぼくは、痛くて怖くてつらくて、しんどかったけど、その人は、ぼくにホンモノをくれた。


だからまだぼくは生きていられる。


あの人を思って生きていられる。


きっとしんでしまうけど、あの人のあの瞬間だけは、ぜったいにニセモノじゃなかった。


迷い込んでいたのかもしれなくても、あれだけは、ホンモノだった。