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デートみたいで7
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美味しいランチを食べた後は5階に戻り温泉に入る。まずは内湯から。内湯からも相模灘を見ることができる。なのでまずは展望内湯と水素泉に浸かる。水素泉はすべすべ美肌や疲労回復にいいらしい。僕は男だからあまりすべすべは必要ないし、疲労回復が必要なほど疲れてはいないけれど、通常より保温効果があるらしいので入っておく。少し冷え性なところがあるからいいだろう。
陸さんは水素泉に浸かりながら外を見ている。
「露天は立ち湯があるぞ」
そう言われて、立ち湯? と考える。立って温泉に入るんだ。ちょっと入ってみたい。
「行くか?」
「はい!」
陸さんと僕は水素泉から出て露天へと出る。露天は、掛け流し露天湯と露天立ち湯の二つがあった。陸さんは迷わずに立ち湯へと行くので、僕も後をついて行く。そこは海を一望できる、というよりはまるで海に浮かんでいるかのようだ。
「すごいですね!」
「そうだな」
海が見えるだけでもいいのに、こんな海に抱かれているような感覚を味わえるなんて最高だ。夕方とか夕陽が綺麗だろうな。そう思っていると陸さんも同じことを考えたようだ。
「夕方はもっと綺麗だろうな。温泉からあがってもラウンジもあるし、軽食を取れるところもあるから、その時間までいるか。冬だから陽が沈むのは早いだろうし」
それまでいてもいいんだ。それなら夕陽が沈むのを見ていたい。
「見たいです!」
「じゃあいよう」
そう言って小さく笑う陸さんに僕は嬉しくなった。ほんとに小さくなんだ。気にしていないと見逃してしまうくらいに小さくだけど笑ってくれたんだ。
僕は陸さんが笑ってくれるのが嬉しい。あの結婚式のときの沈んだ表情は見たくない。もちろん、僕としたくて結婚したわけじゃないのはわかっている。それでも、少しは気を楽にしてあげたいんだ。でも僕ができることは限られていて。だからこういうところでも陸さんがゆったりとした気持ちになって笑えるのなら僕はそれが嬉しい。
陽が沈むまでここにいることが決定し、僕と陸さんは言葉もなく海を見ながら温泉に浸かっている。すごく気持ちがいい。ほんとに海に抱かれているようだ。
どれくらいそうやって海を見ていたんだろう。陸さんが僕の顔を見て言う。
「1度あがった方がいいな。顔が真っ赤だぞ。なにか飲み物を飲んでラウンジで休もう」
僕、そんなに赤い顔してる? でも、陸さんが僕を見ていてくれているのが嬉しい。ほんの少しでいいんだ。陸さんの中に僕という存在がほんの少しでもあれば。
2人で露天風呂を出て館内着を着て、カフェのある3階に降りる。3階には色々な趣向をこらしたラウンジがあるらしい。だからまずはカフェで飲み物をテイクアウトで買おう。
「ほんとなら風にあたった方がいいんだが、今は冬だからな。どこのラウンジがいい?」
僕が行きたいところなんて言っていいの? それより普段の疲れを取って欲しいから陸さんを優先した方がいいんじゃないだろうか。そう思ったところで陸さんが言う。
「俺のことは考えなくていい。今日はお前のことを考えろ」
そう言われて、ここまで来た時に見た掘りごたつのラウンジか大きなソファーのあるラウンジがいいと思った。ソファーはとても大きくて円を描くようになっていて、他のお客さんと一緒になることはない。プライベート感があるのだ。だからそれを言ってみた。陸さんも同じだと少しは休んで貰えるかな?
「掘りごたつかソファーのところがいいです」
「顔が赤いから掘りごたつは却下だな。ならソファーの方にするか」
「はい」
カフェでアイスコーヒーをテイクアウトし、大きなソファーがいくつもあるラウンジへと行く。ソファーは空いていて、僕と陸さんはソファーに座った。というか、寝そべったに近い。ソファーが低いのだ。床にコーヒーを置き、1度大きく伸びをする。
「少しは疲れも取れたか?」
「僕は大丈夫です。それより陸さんがゆっくりとしなくては」
「俺は大丈夫だ。今日はお前の休息日だ」
そう言ってくれる陸さんはやっぱり優しい。でも、陸さんは僕なんかとより好きな人と来たかっただろうな。そう思ってコーヒーを飲む。考えると少し辛い。僕は陸さんの特別ではない。いくら優しくされたってそれを忘れたらダメだ。いくら今日はデートっぽいと言ってもデートなんかじゃないんだ。ただの感謝だ。そう思って小さく頭を振る。と、それを見られていたようだ。
「どうした。頭でも痛いか?」
「え? あ、いえ。なんでもないです」
「そうか。痛かったり体調が悪かったりしたら遠慮せずに言え」
「はい」
でも、陸さんは優しすぎて僕はどんどん陸さんに惹かれていく。
陸さんは水素泉に浸かりながら外を見ている。
「露天は立ち湯があるぞ」
そう言われて、立ち湯? と考える。立って温泉に入るんだ。ちょっと入ってみたい。
「行くか?」
「はい!」
陸さんと僕は水素泉から出て露天へと出る。露天は、掛け流し露天湯と露天立ち湯の二つがあった。陸さんは迷わずに立ち湯へと行くので、僕も後をついて行く。そこは海を一望できる、というよりはまるで海に浮かんでいるかのようだ。
「すごいですね!」
「そうだな」
海が見えるだけでもいいのに、こんな海に抱かれているような感覚を味わえるなんて最高だ。夕方とか夕陽が綺麗だろうな。そう思っていると陸さんも同じことを考えたようだ。
「夕方はもっと綺麗だろうな。温泉からあがってもラウンジもあるし、軽食を取れるところもあるから、その時間までいるか。冬だから陽が沈むのは早いだろうし」
それまでいてもいいんだ。それなら夕陽が沈むのを見ていたい。
「見たいです!」
「じゃあいよう」
そう言って小さく笑う陸さんに僕は嬉しくなった。ほんとに小さくなんだ。気にしていないと見逃してしまうくらいに小さくだけど笑ってくれたんだ。
僕は陸さんが笑ってくれるのが嬉しい。あの結婚式のときの沈んだ表情は見たくない。もちろん、僕としたくて結婚したわけじゃないのはわかっている。それでも、少しは気を楽にしてあげたいんだ。でも僕ができることは限られていて。だからこういうところでも陸さんがゆったりとした気持ちになって笑えるのなら僕はそれが嬉しい。
陽が沈むまでここにいることが決定し、僕と陸さんは言葉もなく海を見ながら温泉に浸かっている。すごく気持ちがいい。ほんとに海に抱かれているようだ。
どれくらいそうやって海を見ていたんだろう。陸さんが僕の顔を見て言う。
「1度あがった方がいいな。顔が真っ赤だぞ。なにか飲み物を飲んでラウンジで休もう」
僕、そんなに赤い顔してる? でも、陸さんが僕を見ていてくれているのが嬉しい。ほんの少しでいいんだ。陸さんの中に僕という存在がほんの少しでもあれば。
2人で露天風呂を出て館内着を着て、カフェのある3階に降りる。3階には色々な趣向をこらしたラウンジがあるらしい。だからまずはカフェで飲み物をテイクアウトで買おう。
「ほんとなら風にあたった方がいいんだが、今は冬だからな。どこのラウンジがいい?」
僕が行きたいところなんて言っていいの? それより普段の疲れを取って欲しいから陸さんを優先した方がいいんじゃないだろうか。そう思ったところで陸さんが言う。
「俺のことは考えなくていい。今日はお前のことを考えろ」
そう言われて、ここまで来た時に見た掘りごたつのラウンジか大きなソファーのあるラウンジがいいと思った。ソファーはとても大きくて円を描くようになっていて、他のお客さんと一緒になることはない。プライベート感があるのだ。だからそれを言ってみた。陸さんも同じだと少しは休んで貰えるかな?
「掘りごたつかソファーのところがいいです」
「顔が赤いから掘りごたつは却下だな。ならソファーの方にするか」
「はい」
カフェでアイスコーヒーをテイクアウトし、大きなソファーがいくつもあるラウンジへと行く。ソファーは空いていて、僕と陸さんはソファーに座った。というか、寝そべったに近い。ソファーが低いのだ。床にコーヒーを置き、1度大きく伸びをする。
「少しは疲れも取れたか?」
「僕は大丈夫です。それより陸さんがゆっくりとしなくては」
「俺は大丈夫だ。今日はお前の休息日だ」
そう言ってくれる陸さんはやっぱり優しい。でも、陸さんは僕なんかとより好きな人と来たかっただろうな。そう思ってコーヒーを飲む。考えると少し辛い。僕は陸さんの特別ではない。いくら優しくされたってそれを忘れたらダメだ。いくら今日はデートっぽいと言ってもデートなんかじゃないんだ。ただの感謝だ。そう思って小さく頭を振る。と、それを見られていたようだ。
「どうした。頭でも痛いか?」
「え? あ、いえ。なんでもないです」
「そうか。痛かったり体調が悪かったりしたら遠慮せずに言え」
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でも、陸さんは優しすぎて僕はどんどん陸さんに惹かれていく。
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