67 / 106
君のことを考える4
しおりを挟む
先生に言われ、戸ノ崎や一条と一緒に料理を取りに行く。パーティーのフィンガーフードだからと食事はあてにしていなかったけれど、ローストビーフがあったり、手まり寿司やキーマカレーがあったりとしっかりとした料理がいくつも並んでいた。
そこでチキンフライとガーリックポテトを取り、近くの席に座って食べる。ガーリックの味がしっかりしていて美味い。次にサンドイッチを食べる。それはローストビーフが挟まれていてたかがサンドイッチとは言えない豪華なものだった。先生の言う通り、一流ホテルだけあり、フィンガーフードもしっかりとした豪華なものだった。
そこでつい千景を思い出した。千景なら目をキラキラさせて食べるだろうか。今日は俺の分を作る必要がないけど、それでも作って食べるのだろうか。俺がこうして美味いものを食べているのだから千景もたまには美味いものでも食べに行けばいいと思うけれど、千景の性格からして、1人分でも作って食べそうだ。
千景は俺の渡す金で自分のものを買うのを躊躇する。それが千景の好きな本であっても。それでも最近はコーヒーを買いに行ったときについでにカフェで飲んでくるようにはなったらしい。あの物がいっぱい溢れたコーヒー専門店で。
俺の知っている範囲で千景が俺の渡した金を使っているのは好きなコーヒー豆1種類。豆を買いに行ったときのコーヒー一杯。そんなところだ。間違えてもランチで贅沢をして、ということはないだろう。夕食も。
いくら言っても千景は贅沢をしないし、俺の金も使わない。結婚してすぐに渡したクレジットカードも1度も使われていない。そんな千景だから今日だって俺がいないからと羽を伸ばしているということはないだろう。
やはり俺が連れて行かないとダメだなと思う。やはり今度千景の好きな元町に連れて行って、有名なフレンチの店で食事をしよう。来週末にでも連れて行こうか。
「陸。なに真剣な顔して食べてるんだ?」
声で意識が戻る。戸ノ崎が顔を覗き込むようにしている。
「いや、別に」
「なに? 千景くんに食べさせたいとでも思ってた?」
当たらずとも遠からずといった言葉にドキリとする。そうだ、俺は千景に美味いものを食わせたいと思ってた。元町に連れて行こうとも考えていた。なんで俺が連れて行く必要がある。金もカードも渡してあるんだし、1人で元町までだって行けるのだからわざわざ俺が連れて行かなくてもいいんだ。でも、と考える。美味いものを食べて喜ぶ千景の顔が見たいと思う。
「戸ノ崎、からかうのはやめろ。新婚なんだから考えさせておけ」
横からからかってくる戸ノ崎を止める一条の声が聞こえる。今はクラス会で戸ノ崎や一条と話している最中だ。千景のことを考える時間じゃない。
「意外とうまくやってるみたいだな」
と一条が言う。一条はいつも冷静で真面目で戸ノ崎のように人をからかって遊ぶようなことはしない。それでいて戸ノ崎と仲が良いのだから不思議な男だ。
「彼のことを考えていたんだろう」
なんでわかるのだろうか。そう思うけれど図星だからなんと返事をしたらいいのかわからない。
「なんでわかる?」
「そりゃわかるさ。幼稚園の頃からの付き合いだぞ」
それもそうか。人生の半分以上を一緒に過ごしているのだ。
「やっぱり千景くんに食べさせたかったんだろ。俺の当たりじゃん」
「だからお前はからかうのをやめろ」
「はいはい」
「もし、彼になにかしてあげたいと思うのなら後悔のないようにしてやれ。もう後悔はしたくないだろう」
後悔……。和真のことを言っているんだとわかる。千景には後悔のないように、か。別に大したことを考えていたわけじゃない。自分で食べに行かない千景だから、元町のあの店に連れて行こうと思っただけだ。そう思って頭から追い出した。
そこでチキンフライとガーリックポテトを取り、近くの席に座って食べる。ガーリックの味がしっかりしていて美味い。次にサンドイッチを食べる。それはローストビーフが挟まれていてたかがサンドイッチとは言えない豪華なものだった。先生の言う通り、一流ホテルだけあり、フィンガーフードもしっかりとした豪華なものだった。
そこでつい千景を思い出した。千景なら目をキラキラさせて食べるだろうか。今日は俺の分を作る必要がないけど、それでも作って食べるのだろうか。俺がこうして美味いものを食べているのだから千景もたまには美味いものでも食べに行けばいいと思うけれど、千景の性格からして、1人分でも作って食べそうだ。
千景は俺の渡す金で自分のものを買うのを躊躇する。それが千景の好きな本であっても。それでも最近はコーヒーを買いに行ったときについでにカフェで飲んでくるようにはなったらしい。あの物がいっぱい溢れたコーヒー専門店で。
俺の知っている範囲で千景が俺の渡した金を使っているのは好きなコーヒー豆1種類。豆を買いに行ったときのコーヒー一杯。そんなところだ。間違えてもランチで贅沢をして、ということはないだろう。夕食も。
いくら言っても千景は贅沢をしないし、俺の金も使わない。結婚してすぐに渡したクレジットカードも1度も使われていない。そんな千景だから今日だって俺がいないからと羽を伸ばしているということはないだろう。
やはり俺が連れて行かないとダメだなと思う。やはり今度千景の好きな元町に連れて行って、有名なフレンチの店で食事をしよう。来週末にでも連れて行こうか。
「陸。なに真剣な顔して食べてるんだ?」
声で意識が戻る。戸ノ崎が顔を覗き込むようにしている。
「いや、別に」
「なに? 千景くんに食べさせたいとでも思ってた?」
当たらずとも遠からずといった言葉にドキリとする。そうだ、俺は千景に美味いものを食わせたいと思ってた。元町に連れて行こうとも考えていた。なんで俺が連れて行く必要がある。金もカードも渡してあるんだし、1人で元町までだって行けるのだからわざわざ俺が連れて行かなくてもいいんだ。でも、と考える。美味いものを食べて喜ぶ千景の顔が見たいと思う。
「戸ノ崎、からかうのはやめろ。新婚なんだから考えさせておけ」
横からからかってくる戸ノ崎を止める一条の声が聞こえる。今はクラス会で戸ノ崎や一条と話している最中だ。千景のことを考える時間じゃない。
「意外とうまくやってるみたいだな」
と一条が言う。一条はいつも冷静で真面目で戸ノ崎のように人をからかって遊ぶようなことはしない。それでいて戸ノ崎と仲が良いのだから不思議な男だ。
「彼のことを考えていたんだろう」
なんでわかるのだろうか。そう思うけれど図星だからなんと返事をしたらいいのかわからない。
「なんでわかる?」
「そりゃわかるさ。幼稚園の頃からの付き合いだぞ」
それもそうか。人生の半分以上を一緒に過ごしているのだ。
「やっぱり千景くんに食べさせたかったんだろ。俺の当たりじゃん」
「だからお前はからかうのをやめろ」
「はいはい」
「もし、彼になにかしてあげたいと思うのなら後悔のないようにしてやれ。もう後悔はしたくないだろう」
後悔……。和真のことを言っているんだとわかる。千景には後悔のないように、か。別に大したことを考えていたわけじゃない。自分で食べに行かない千景だから、元町のあの店に連れて行こうと思っただけだ。そう思って頭から追い出した。
80
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた
いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲
捨てられたΩの末路は悲惨だ。
Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。
僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。
いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
クローゼットは宝箱
織緒こん
BL
てんつぶさん主催、オメガの巣作りアンソロジー参加作品です。
初めてのオメガバースです。
前後編8000文字強のSS。
◇ ◇ ◇
番であるオメガの穣太郎のヒートに合わせて休暇をもぎ取ったアルファの将臣。ほんの少し帰宅が遅れた彼を出迎えたのは、溢れかえるフェロモンの香気とクローゼットに籠城する番だった。狭いクローゼットに隠れるように巣作りする穣太郎を見つけて、出会ってから想いを通じ合わせるまでの数年間を思い出す。
美しく有能で、努力によってアルファと同等の能力を得た穣太郎。正気のときは決して甘えない彼が、ヒート期間中は将臣だけにぐずぐずに溺れる……。
年下わんこアルファ×年上美人オメガ。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
生き急ぐオメガの献身
雨宮里玖
BL
美貌オメガのシノンは、辺境の副将軍ヘリオスのもとに嫁ぐことになった。
実はヘリオスは、昔、番になろうと約束したアルファだ。その約束を果たすべく求婚したのだが、ヘリオスはシノンのことなどまったく相手にしてくれない。
こうなることは最初からわかっていた。
それでもあなたのそばにいさせてほしい。どうせすぐにいなくなる。それまでの間、一緒にいられたら充分だ——。
健気オメガの切ない献身愛ストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる