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貴方を思い出した2
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「もう俺とは会いたくないですか? それならそう言ってください。それなら俺はもう何も言えない。でも、もし少しでも会ってみてもいいと思うのなら、拒否しないでください。もう怖がらなくても大丈夫です。もう鬼狩りなんて起こらない。だから誰もあなたの命を狙ったりしないし、私があなたを庇って死ぬといったこともありません。だからシンプルに会いたいか、会いたくないか。それだけで考えてください」
真夏の言葉に博嗣は静かに考えていた。
「もう、失いたくはないのだ。私を庇ってお前が死ぬのを見ていくのは嫌なのだ」
「それなら! 会ってください。現実で」
真夏の言葉に博嗣は静かに目を閉じた。霧の中、時が止まったように2人は立ち尽くす。風もない。音もない。けれどその沈黙は冷たくも重くもなかった。ただ静かで、優しく痛みを含んでいた。
「千年以上……お前を思って生きてきた」
やがてぽつりと博嗣が言った。
「忘れられたのなら、そのままでも良かった。2度と会わずに、心の中でただ美しくいられれば良かった」
「それって、全部1人で抱えていたってことですよね? ずっと、あの山で」
「1人は慣れていた。だが、あの日から時間が止まってしまった」
その言葉に真夏は胸が痛くなった。自分が生まれ変わって、何も思い出さずに兼親と平凡だけど楽しい生活を送っていた時、博嗣はたった1人で過去に取り残されたままだったのだ。そう思うと胸が痛くなるのも当然だった。
「俺は――あなたを置き去りにしてしまったんですね」
「違う。お前は死んだ。私を庇って。だから私だけが残った。あの時、私も殺されていれば良かったのに、誰も殺してはくれなかった」
博嗣はそう言って視線を落とし、指先で何かを確かめるように手を握りしめる。
「お前がまた目の前で私を庇って死ぬ夢を何度も見た。何百回も何千回も。それでも私はお前を止めることができなかった」
声が掠れていた。角のある鬼の姿をしていても、その孤独と悔しさは、人間のそれと全く変わらなかった。
「でも、俺は今、こうして生きてここにいます。もう過去とは違う。だから怖がらないでください。もう誰もしなない。殺そうなんて思わない。誰も奪われない世界なんです。だから、あなたももう1人じゃない」
真夏が一歩踏み出す。足元で落ち葉のカサリという音がした。
「だから、あって欲しい。現実で。あなたとちゃんと生きて向き合いたい」
博嗣は顔をあげた。その目には深い迷いがあった。それでも、真夏の瞳を見つめ返し、しばしの沈黙ののち、静かに言った。
「……記憶を全部取り戻したら、会おう」
それはひとつの条件であり、約束だった。過去の全てを背負った上で、それでもなお自分を選んでくれるのか。その答えを博嗣は求めていたのだ。真夏はその言葉をしっかりと受け止めて、深く頷いた。
「もう少し。あともう少しで全部思い出したことになります。だから少しの間待っててください。必ず、会いに行きます」
その時、霧の向こうで風が吹いた。どこかで笛の音が響いた気がして、真夏は目を細めた。
真夏の言葉に博嗣は静かに考えていた。
「もう、失いたくはないのだ。私を庇ってお前が死ぬのを見ていくのは嫌なのだ」
「それなら! 会ってください。現実で」
真夏の言葉に博嗣は静かに目を閉じた。霧の中、時が止まったように2人は立ち尽くす。風もない。音もない。けれどその沈黙は冷たくも重くもなかった。ただ静かで、優しく痛みを含んでいた。
「千年以上……お前を思って生きてきた」
やがてぽつりと博嗣が言った。
「忘れられたのなら、そのままでも良かった。2度と会わずに、心の中でただ美しくいられれば良かった」
「それって、全部1人で抱えていたってことですよね? ずっと、あの山で」
「1人は慣れていた。だが、あの日から時間が止まってしまった」
その言葉に真夏は胸が痛くなった。自分が生まれ変わって、何も思い出さずに兼親と平凡だけど楽しい生活を送っていた時、博嗣はたった1人で過去に取り残されたままだったのだ。そう思うと胸が痛くなるのも当然だった。
「俺は――あなたを置き去りにしてしまったんですね」
「違う。お前は死んだ。私を庇って。だから私だけが残った。あの時、私も殺されていれば良かったのに、誰も殺してはくれなかった」
博嗣はそう言って視線を落とし、指先で何かを確かめるように手を握りしめる。
「お前がまた目の前で私を庇って死ぬ夢を何度も見た。何百回も何千回も。それでも私はお前を止めることができなかった」
声が掠れていた。角のある鬼の姿をしていても、その孤独と悔しさは、人間のそれと全く変わらなかった。
「でも、俺は今、こうして生きてここにいます。もう過去とは違う。だから怖がらないでください。もう誰もしなない。殺そうなんて思わない。誰も奪われない世界なんです。だから、あなたももう1人じゃない」
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「だから、あって欲しい。現実で。あなたとちゃんと生きて向き合いたい」
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「……記憶を全部取り戻したら、会おう」
それはひとつの条件であり、約束だった。過去の全てを背負った上で、それでもなお自分を選んでくれるのか。その答えを博嗣は求めていたのだ。真夏はその言葉をしっかりと受け止めて、深く頷いた。
「もう少し。あともう少しで全部思い出したことになります。だから少しの間待っててください。必ず、会いに行きます」
その時、霧の向こうで風が吹いた。どこかで笛の音が響いた気がして、真夏は目を細めた。
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