Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜

桐嶋いろは

文字の大きさ
35 / 47
Side 2ーaffairー

4(逢坂蓮)

しおりを挟む

突然の地元の友人の訪問は嬉しい。
スーツを着こなし一流企業で働き、社長令嬢と付き合う俺を好奇の目でみる姿は活力になる。

(俺はこんなに努力したんだ。お前じゃ俺に届きやしない。バカな親だとバカにしてきた奴らを見返す。)

高橋は、かつてよくゲームをしたりサッカーをして遊んだが、俺は当然ゲームもサッカーボールも買ってもらえないわけだからいつも彼に借りていた。
地元の企業に就職し今日は東京に出張に来ているようだ。
と行っても会ったのは、成人式の時以来だと思う。
もう結婚していて子供もいる。そこまで努力しなくても普通のルートを歩んで、普通な幸せを手にしているから俺はそういう奴が嫌いだった。

目の前の高橋はビールに口を含むと気まずそうに話を始める。

「最近妹に会ったか?」

(なぜ、妹の話から始まるのかはよくわからない。さてはこいつ、俺の妹に気があったのか?ロリコンめ。奥さんいながらしょうもない奴だな。)

「いいや、最近忙しかったし・・・今は仕事頑張ってんじゃねーのかな。」

「これ、言おうかどうか迷ったんだけどさ・・・お前の妹がデリヘルで働いてる。」

俺は、思わず高橋を怒鳴りつけた。妹の莉乃は5つ下で20歳、高校卒業してすぐに地元のスーパーに就職したはずだ。

「本当だよ。俺が呼んだんだ。ちょっとしたストレス解消と思ってホテルに呼んだデリヘル嬢がお前の妹だった。
流石に、向こうも気がついて何もせずに帰ってもらったけれど、このことが奥さんにバレるとまずいんだ・・・
だから、妹にお前からもしっかり口止めして欲しくて・・・」

「なんだよそれ。まず、なんで莉乃がデリヘルで働いてるんだよ。」

「だってお前の親御さん夜逃げしたって・・・」

「は?つい昨日まで普通に連絡とってたし・・・」

「お前、何も知らないのか・・・借金取りが家に来てるって地元では噂になってるぞ」

俺は、すぐに莉乃に電話をしたが、莉乃の電話番号は解約されていた。
そして、この日以来、両親とも連絡が取れなくなった。
俺には知らせまいと、莉乃が身代わりになったというのか・・・



翌日、実家に向かった俺は高橋から聞いた場所へ行き莉乃が出てくるのを待った。

派手な化粧をした女たちと出てきた莉乃は、最後に見たときよりも痩せ細っていた。
すぐに俺に気がついた莉乃は、目をそらして逃げようとしたが追いかけた。

「どうしてこんなことに・・・」

「お兄ちゃんは気にしないで今まで通りの生活を続けて・・・せっかくいい会社に入れたんだから、莉乃がなんとかするから・・・」


「借金、あといくらあるんだよ。」

「200万・・・」

「わかった。俺が用意する。莉乃はこの仕事を今すぐやめろ」

(笑える。通帳にお金なんてないのに・・・・)

ダメだとわかっていながらも、俺は社長に電話をかけていた。

「この間の件ですが・・・・」

受話器越しでもわかる社長の呆れた声に、自分の情けなさを打ち付けられる。
生まれてからお金のある家に生まれたなら、頭のいい両親の元に生まれてきたのならこんな人生にはならなかったのかもしれない。妹をこんな目に合わせた親が憎い。今頃どこをほっつき歩いているんだよ。
好きな人を好きでい続けることも許されない・・・
俺は誰よりも努力をしてきたつもりだった。それなのに・・・
悔しさで頭がおかしくなりそうだ。
実家の前へ行くとポストには督促状やチラシがたくさん入っていたが数はまだ少なかったため出て行ったのはこの数日前だと思われる。俺はものやゴミで散乱した小さな部屋でただ涙を流すことしか出来なかった。

(若くてバカな親だったけど、不幸だなんて思ったことなかった。むしろ幸せだった・・・
なんでパチンコなんかに金使ってんだよ。せっかく働いた金だろ?どうして莉乃がデリヘルなんてやることにならなきゃいけなかったんだよ・・・
とっとと出てこいよ!!!)

後日、俺は社長に借りた金で借金を返済し、実家を引き払った。
俺は社長に土下座して、これからもこの会社に貢献すること。心春と別れることを誓う。
その傍ら、俺はもっとお金を稼ぐ方法を考えた。会社での結果を出すことはもちろん、株などの知識を頭に叩き込んだ。

(いつか、この会社よりもいい会社作ってやる・・・)

どん底から這い上がって、社長にギャフンと言わせたい。

(そうしたら心春?俺ともう一度付き合ってくれるかな?)


しかし、心春も社長も俺のことを待たなかった。




「金城さん婚約したんですか?」
突然騒ぎ出した女子社員は、おそらくパソコンの社内メールの文章を見たようだ。
他の社員も社内メールに目を通している。俺も同じように社内メールを開くと「婚約」の文字が刻まれている。


(ちょっと待って・・・俺、まだプロポーズしてないけども・・・)

「年上なんだいいなあ~」とうっとりしながら呟く女子社員の言葉に凍りつく。

俺は、年上じゃない。同じ年だ。

「そういえば、金城さん今日出勤してないね。もしかしておめでた?つわりで来れないとか・・・?」

つい数日まで、俺とずっとにいたし具合が悪そうな様子は一切なかった。
ほとんどの夜を一緒に過ごしていたのだから俺以外の男と関係があったとも思えない。
俺はすぐに心春に電話をしたが、繋がらない。しばらくしてメールには【ごめんね】とだけ書かれていた。

(なんだそれ!)







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

処理中です...