エリートαとして追放されましたが、実は抑制剤で隠されたΩでした。辺境で出会った無骨な農夫は訳あり最強αで、私の運命の番らしいです。

19話：悪役令息の成り上がり

　偽りの聖女イザベラは、国を欺き、民の生命力を奪った大罪人として、速やかに断罪された。禁術の反動で力を失った彼女は、もはや何の抵抗もできず、地下牢へと送られた。

　そして、僕、アレクシス・フォン・ヴェルグナーの潔白は、完全に証明された。それどころか、国の危機を救った真の英雄として、国王から絶大な称賛と地位を与えられることになった。

　王宮で開かれた式典で、国王は高らかに宣言した。
「アレクシス・フォン・ヴェルグナーは、国の救世主である！　彼の汚名はここにすすがれ、その功績を称え、彼に新たな地位を授ける！」

　貴族たちが、僕に称賛の拍手を送っている。かつて僕を侮蔑の目で見ていた者たちが、今は媚びへつらうような笑みを浮かべている。なんとも滑稽な光景だ。

　父と母も、手のひらを返したように僕を「公爵家の誇りだ」と褒め称え、家に戻るよう懇願してきたが、僕は静かに首を振った。
「僕の家族は、もう辺境にしかいません」

　国王が僕に与えようとしたのは、王都での要職と、莫大な報奨金だった。しかし、僕はそれを辞退した。そして、代わりに一つの願いを口にした。

「陛下。私が望むのは、地位でも名誉でもありません。ただ、一つ。私が愛する地、あの辺境一帯を、私に治めさせてはいただけないでしょうか」

　僕の予想外の申し出に、国王も周囲の貴族たちも驚いていた。しかし、僕の瞳に宿る真剣な光を見て、国王は大きく頷いた。

「よかろう！　アレクシスを、辺境一帯を治める新たな領主として任命する！　これこそ、国を救った英雄にふさわしい采配であろう！」

　こうして僕は、追放された悪役令息から、一躍、国を救った英雄、そして辺境の領主へと成り上がったのだ。
　しかし、僕の心はきらびやかな王都での生活には、もう惹かれなかった。

　僕が生きる場所は、カイと共に汗を流し、土を耕した、あの土地だけだ。
　式典が終わると、僕はカイと共に、誰にも告げずに王都を後にした。僕たちの本当の帰るべき場所へと。