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第15話 すれ違う告白
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事件の後、俺は王子の離宮に運ばれ、侍女たちによって手厚い手当てを受けた。幸い、薬を吸い込む前に助けられたため、身体に別状はなかった。
だが、精神的なダメージは大きい。一つは刺客に襲われた恐怖。そしてもう一つは、アレクシオスの激情を目の当たりにしたことによる、心の混乱だ。
手当てが終わり、一人になった部屋に、アレクシオスが入ってきた。
彼は俺の隣に静かに腰を下ろすと、真剣な眼差しで俺を見つめた。
「レオン。もう一度聞く。なぜ私を頼らない。なぜ、私から逃げるのだ」
その声は、もう怒りを含んではいなかった。ただ、切実な響きがあった。
「お前が私をどう思っているのか、本当の気持ちを聞かせてくれ」
本当の気持ち。
そんなもの、言えるわけがない。
『あなたが怖いです。あなたと関わると、ゲームのシナリオ通りに俺が処刑されるからです。だから死にたくないんです!』
なんて、口が裂けても言えるか。
俺は混乱していた。頭がぐちゃぐちゃだった。
彼への恐怖。芽生え始めた、よくわからない感情。そして、破滅への不安。
それらが一気に押し寄せてきて、俺の理性のダムは、ついに決壊した。
「……あなたといると……」
俺は、思わず本音を叫んでしまっていた。
「あなたといると、僕の心臓が、破滅しそうなんです!」
しん、と部屋が静まり返る。
しまった、と後悔したが、もう遅い。
それは、俺にとって「あなたと関わると死亡フラグが立って、物理的に死んでしまう(破滅する)から、心臓がやばい!」という、悲痛な叫びだった。
しかし。
その言葉は、勘違いがカンストした王子の耳には、まったく違う意味で届いていた。
アレクシオスは、俺の言葉を聞いて、驚いたように目を見開いた。
そして、その空色の瞳が、みるみるうちに歓喜と感動の色に染まっていく。
「……破滅しそう?」
彼は、震える声で俺の言葉を繰り返した。
「ああ……そうか。そうだったのか、レオン」
彼の中で、最後のピースがカチリと音を立ててはまった。
レオンが自分を避けていた、本当の理由。
『私への愛が強すぎて、胸が張り裂けそうだ』
『私と一緒にいると、その恋心で心臓が破滅してしまいそうだ』
――なんと、情熱的な。なんと、切ない愛の告白だろうか。
「ああ、レオン……!」
王子は、感動に打ち震えながら、俺の身体を力強く抱きしめた。
「私もだ! 私も、お前を思うと、この胸が張り裂けそうになる! お前が可愛すぎて、どうにかなってしまいそうだ!」
「えっ」
「お前の気持ち、ようやく聞けたな。私も、同じ気持ちだ」
「えええええええっ!?」
俺の悲鳴は、王子の胸の中でくぐもった音になった。
違う! 違うんだ王子! 意味が、意味が全然違う!
だが、感動の頂点にいる王子に、俺の声はもう届かない。
彼は俺をきつく、きつく抱きしめながら、蕩けるように甘い声で囁いた。
「愛している、レオン。もう、お前を離しはしない」
俺の悲痛なSOSは、史上最高にロマンチックな愛の告白として、見事に誤解されたのだった。
もう、何もかもが手遅れだった。
だが、精神的なダメージは大きい。一つは刺客に襲われた恐怖。そしてもう一つは、アレクシオスの激情を目の当たりにしたことによる、心の混乱だ。
手当てが終わり、一人になった部屋に、アレクシオスが入ってきた。
彼は俺の隣に静かに腰を下ろすと、真剣な眼差しで俺を見つめた。
「レオン。もう一度聞く。なぜ私を頼らない。なぜ、私から逃げるのだ」
その声は、もう怒りを含んではいなかった。ただ、切実な響きがあった。
「お前が私をどう思っているのか、本当の気持ちを聞かせてくれ」
本当の気持ち。
そんなもの、言えるわけがない。
『あなたが怖いです。あなたと関わると、ゲームのシナリオ通りに俺が処刑されるからです。だから死にたくないんです!』
なんて、口が裂けても言えるか。
俺は混乱していた。頭がぐちゃぐちゃだった。
彼への恐怖。芽生え始めた、よくわからない感情。そして、破滅への不安。
それらが一気に押し寄せてきて、俺の理性のダムは、ついに決壊した。
「……あなたといると……」
俺は、思わず本音を叫んでしまっていた。
「あなたといると、僕の心臓が、破滅しそうなんです!」
しん、と部屋が静まり返る。
しまった、と後悔したが、もう遅い。
それは、俺にとって「あなたと関わると死亡フラグが立って、物理的に死んでしまう(破滅する)から、心臓がやばい!」という、悲痛な叫びだった。
しかし。
その言葉は、勘違いがカンストした王子の耳には、まったく違う意味で届いていた。
アレクシオスは、俺の言葉を聞いて、驚いたように目を見開いた。
そして、その空色の瞳が、みるみるうちに歓喜と感動の色に染まっていく。
「……破滅しそう?」
彼は、震える声で俺の言葉を繰り返した。
「ああ……そうか。そうだったのか、レオン」
彼の中で、最後のピースがカチリと音を立ててはまった。
レオンが自分を避けていた、本当の理由。
『私への愛が強すぎて、胸が張り裂けそうだ』
『私と一緒にいると、その恋心で心臓が破滅してしまいそうだ』
――なんと、情熱的な。なんと、切ない愛の告白だろうか。
「ああ、レオン……!」
王子は、感動に打ち震えながら、俺の身体を力強く抱きしめた。
「私もだ! 私も、お前を思うと、この胸が張り裂けそうになる! お前が可愛すぎて、どうにかなってしまいそうだ!」
「えっ」
「お前の気持ち、ようやく聞けたな。私も、同じ気持ちだ」
「えええええええっ!?」
俺の悲鳴は、王子の胸の中でくぐもった音になった。
違う! 違うんだ王子! 意味が、意味が全然違う!
だが、感動の頂点にいる王子に、俺の声はもう届かない。
彼は俺をきつく、きつく抱きしめながら、蕩けるように甘い声で囁いた。
「愛している、レオン。もう、お前を離しはしない」
俺の悲痛なSOSは、史上最高にロマンチックな愛の告白として、見事に誤解されたのだった。
もう、何もかもが手遅れだった。
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