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エピローグ「陽だまりの中で、永遠に」
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あれから、五年という月日が流れた。
アステル王国は、カイの力強いリーダーシップと、俺の前世の知識を活かした様々な提案によって、以前よりもずっと豊かで、平和な国になっていた。
俺は王城の厨房の特別顧問という、なんだか大層な役職をもらいながら、今も時々、厨房に立って後進の指導にあたっている。
そして、俺とカイの間には、三歳になる愛らしい息子、アルマが生まれていた。
アルマは、カイにそっくりの銀髪と、俺に似た翠の瞳を持っていた。
やんちゃで、甘えん坊で、そして、食べることが大好きな、元気な男の子だ。
「ちちうえ!だっこ!」
「はいはい、アルマ。お帰りなさい」
騎士団の訓練から帰ってきたカイに、アルマが駆け寄っていく。
カイは、かつて氷の騎士団長と恐れられた男とは思えないほど、でれでれに甘い父親になっていた。
アルマをひょいと抱き上げ、その頬に何度もキスをする。
その光景は、俺にとって何よりも幸せな日常だった。
「リヒト、ただいま」
「おかえりなさい、カイ。お疲れ様でした」
俺がカイに寄り添うと、彼はアルマを抱いたまま、空いている方の腕で俺の腰を抱き寄せた。
「今日は、アルマの好きなハンバーグですよ」
「本当か!やったな、アルマ」
「はんぶーぐ!やったー!」
カイとアルマが、声を揃えて喜ぶ。
その姿に、俺は思わず笑みがこぼれた。
悪役令息に転生し、破滅の運命に怯えていたのが、遠い昔のことのようだ。
ゲームのシナリオは、俺というイレギュラーな存在によって、大きく書き換えられた。
ヒロインは、結局、ゲームの攻略対象だった文官の青年と恋に落ち、幸せに暮らしているらしい。
誰も不幸にならない、優しい世界。
俺が望んでいたのは、まさにこんな未来だった。
夕食の後、俺たちは三人で、寝室のベッドに寝転がっていた。
俺とカイの間に挟まれたアルマが、楽しそうに今日の出来事を話している。
「あのね、きょうね、おにわでね、あおいバラさん、みたんだよ!」
「そうか、綺麗だったか?」
「うん!ちちうえと、パパみたいで、きれいだった!」
アルマの無邪気な言葉に、俺とカイは顔を見合わせて、微笑み合った。
青い薔薇。
それは、俺たちの愛の象徴。
やがて、アルマが可愛らしい寝息を立て始めると、カイがそっと俺の手を握ってきた。
「リヒト」
「なんですか?」
「……幸せか?」
「当たり前じゃないですか」
俺はカイの胸に頭を預けた。
彼の心臓が、とくん、とくん、と穏やかなリズムを刻んでいる。
「あなたと、アルマがいる。これ以上の幸せはありません。俺を、見つけてくれて、愛してくれて……本当に、ありがとう」
「俺の方こそだ。お前がいてくれるから、俺は生きていける」
カイが、俺の髪に、優しくキスを落とす。
陽だまりのように温かい、彼の愛。
俺は、この陽だまりの中で、愛する夫と、愛する息子と共に、永遠に生きていくのだろう。
アステル王国は、カイの力強いリーダーシップと、俺の前世の知識を活かした様々な提案によって、以前よりもずっと豊かで、平和な国になっていた。
俺は王城の厨房の特別顧問という、なんだか大層な役職をもらいながら、今も時々、厨房に立って後進の指導にあたっている。
そして、俺とカイの間には、三歳になる愛らしい息子、アルマが生まれていた。
アルマは、カイにそっくりの銀髪と、俺に似た翠の瞳を持っていた。
やんちゃで、甘えん坊で、そして、食べることが大好きな、元気な男の子だ。
「ちちうえ!だっこ!」
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その光景は、俺にとって何よりも幸せな日常だった。
「リヒト、ただいま」
「おかえりなさい、カイ。お疲れ様でした」
俺がカイに寄り添うと、彼はアルマを抱いたまま、空いている方の腕で俺の腰を抱き寄せた。
「今日は、アルマの好きなハンバーグですよ」
「本当か!やったな、アルマ」
「はんぶーぐ!やったー!」
カイとアルマが、声を揃えて喜ぶ。
その姿に、俺は思わず笑みがこぼれた。
悪役令息に転生し、破滅の運命に怯えていたのが、遠い昔のことのようだ。
ゲームのシナリオは、俺というイレギュラーな存在によって、大きく書き換えられた。
ヒロインは、結局、ゲームの攻略対象だった文官の青年と恋に落ち、幸せに暮らしているらしい。
誰も不幸にならない、優しい世界。
俺が望んでいたのは、まさにこんな未来だった。
夕食の後、俺たちは三人で、寝室のベッドに寝転がっていた。
俺とカイの間に挟まれたアルマが、楽しそうに今日の出来事を話している。
「あのね、きょうね、おにわでね、あおいバラさん、みたんだよ!」
「そうか、綺麗だったか?」
「うん!ちちうえと、パパみたいで、きれいだった!」
アルマの無邪気な言葉に、俺とカイは顔を見合わせて、微笑み合った。
青い薔薇。
それは、俺たちの愛の象徴。
やがて、アルマが可愛らしい寝息を立て始めると、カイがそっと俺の手を握ってきた。
「リヒト」
「なんですか?」
「……幸せか?」
「当たり前じゃないですか」
俺はカイの胸に頭を預けた。
彼の心臓が、とくん、とくん、と穏やかなリズムを刻んでいる。
「あなたと、アルマがいる。これ以上の幸せはありません。俺を、見つけてくれて、愛してくれて……本当に、ありがとう」
「俺の方こそだ。お前がいてくれるから、俺は生きていける」
カイが、俺の髪に、優しくキスを落とす。
陽だまりのように温かい、彼の愛。
俺は、この陽だまりの中で、愛する夫と、愛する息子と共に、永遠に生きていくのだろう。
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