『お前よりも好きな娘がいる』と婚約を破棄させられた令嬢は、最強の魔法使いだった~捨てた王子と解放した令嬢の結末~

キョウキョウ

文字の大きさ
11 / 36

第11話 蜜の中の毒 ※ヴァネッサ視点

しおりを挟む
 私は、隣で眠っている王子様を眺めながら、満足気に微笑んだ。とっても充実していて、自然と笑みが漏れてくる。

「これまでの私の人生、まさに幸運の連続だったわ。まさか、王子様のパートナーに選んでもらって、ここまで来れるなんてね」

 左手で放った魔力の光を眺める。その光は深い紫色で、部屋の隅々まで這うように広がっていく。そして、私は独り言を続けた。

「魔法学園への入学は、とっても簡単だった。魔法の才能も開花して、魔法の評価も得られた。私は神に愛されているのよね。フフッ」

 評価を得られるように手伝ってくれたのがアルフレッド王子だった。そんな彼との出会いを思い出して、私は小さく笑った。

 まさか、彼の方から近寄ってきてくれるなんて想像もしてなかった。これも本当に運が良かった。王子様に気に入られて、選んでもらうなんて。

 狙っていたわけじゃないけれど、彼の方から来てくれたから、ちゃんと利用させてもらう。遠慮は、いらないでしょ。

「でも、もっと自信を持てばいいのに。頼りない王子様で、本当に大丈夫かしら」


 ちょっと心配。権力者って、もっと傲慢で自信過剰な人が多いのかと思っていた。けど、そうじゃないのかしら。彼が、特別に変なだけ?

 まあでも、扱いやすそうではある。

 そんな彼が計画したから、失敗するのも仕方ないのかもしれない。婚約破棄を発表して、それに便乗して私がいじめられていたという情報を拡散する。それを王子様は失敗してしまった。

 まさか、アルフレッド王子の弟が出てくるなんて。そのせいで失敗してしまった。まあ、仕方ないこと。アルフレッド王子には、そういう才能がない、ということね。むしろ、弟のほうが才能豊かで自信と余裕があり、落ち着いているように見えた。

 でも、いいの。これは、私のチャンスでもある。ここで私が魔法の実力を示せば、もっと多くの人たちに認めてもらえるでしょう。明るい人生が待っている。

 幸い、エレノアというアルフレッド王子の元婚約相手は、魔法の実力に関して平凡らしい。そんな彼女を倒して、ついでに実力を示せば盛り上がるはず。

「悪役のエレノアを倒せば、私は注目を浴びる。そうしたら、アルフレッド王子も喜んでくれるはず。もっと私に惚れるかも。そう、私の思い通りよ」

 ということで、私はエレノアに魔法勝負を仕掛けるタイミングを伺った。おそらく魔法学園の授業中に実力を競い合う時間があるはず。その時に、私の真の力を示す。彼女を打ち砕いてやる。

「さあ、エレノア。勝負よ」

 私は、戦う前から自分の勝利を確信していた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい

神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。  嘘でしょう。  その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。  そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。 「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」  もう誰かが護ってくれるなんて思わない。  ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。  だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。 「ぜひ辺境へ来て欲しい」  ※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m  総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ  ありがとうございます<(_ _)>

お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました

柚木ゆず
恋愛
 侯爵令嬢のファスティーヌ様が自分に好意を抱いていたと知り、即座に私との婚約を解消した伯爵令息のガエル様。  そんなガエル様は「お前なんかに会いに来ることは2度とない」と仰り去っていったのですが、それから1年後。ある日突然、私を訪ねてきました。  しかも、なにやら必死ですね。ファスティーヌ様と、何かあったのでしょうか……?

平民を好きになった婚約者は、私を捨てて破滅するようです

天宮有
恋愛
「聖女ローナを婚約者にするから、セリスとの婚約を破棄する」  婚約者だった公爵令息のジェイクに、子爵令嬢の私セリスは婚約破棄を言い渡されてしまう。  ローナを平民だと見下し傷つけたと嘘の報告をされて、周囲からも避けられるようになっていた。  そんな中、家族と侯爵令息のアインだけは力になってくれて、私はローナより聖女の力が強かった。  聖女ローナの評判は悪く、徐々に私の方が聖女に相応しいと言われるようになって――ジェイクは破滅することとなっていた。

『婚約破棄はご自由に。──では、あなた方の“嘘”をすべて暴くまで、私は学園で優雅に過ごさせていただきます』

佐伯かなた
恋愛
 卒業後の社交界の場で、フォーリア・レーズワースは一方的に婚約破棄を宣告された。  理由は伯爵令嬢リリシアを“旧西校舎の階段から突き落とした”という虚偽の罪。  すでに場は整えられ、誰もが彼女を断罪するために招かれ、驚いた姿を演じていた──最初から結果だけが決まっている出来レース。  家名にも傷がつき、貴族社会からは牽制を受けるが、フォーリアは怯むことなく、王国の中央都市に存在する全寮制のコンバシオ学園へ。  しかし、そこでは婚約破棄の噂すら曖昧にぼかされ、国外から来た生徒は興味を向けるだけで侮蔑の視線はない。  ──情報が統制されている? 彼らは、何を隠したいの?  静かに観察する中で、フォーリアは気づく。  “婚約破棄を急いで既成事実にしたかった誰か”が必ずいると。  歪んだ陰謀の糸は、学園の中にも外にも伸びていた。  そしてフォーリアは決意する。  あなた方が“嘘”を事実にしたいのなら──私は“真実”で全てを焼き払う、と。  

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?

水空 葵
恋愛
 伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。  けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。  悪夢はそれで終わらなかった。  ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。  嵌められてしまった。  その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。  裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。 ※他サイト様でも公開中です。 2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。 本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。

婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません

黒木 楓
恋愛
 子爵令嬢パトリシアは、カルスに婚約破棄を言い渡されていた。  激務だった私は婚約破棄になったことに内心喜びながら、家に帰っていた。  婚約破棄はカルスとカルスの家族だけで決めたらしく、他の人は何も知らない。  婚約破棄したことを報告すると大騒ぎになり、私の協力によって領地が繁栄していたことをカルスは知る。  翌日――カルスは謝罪して再び婚約して欲しいと頼み込んでくるけど、婚約する気はありません。

処理中です...