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第28話 真実を語れど
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「やはり、お前はイジメを行っていたんだな!」
興奮した声で、アルフレッド王子が私を非難する。しかし、私は毅然とした態度で反論した。
「違います。私は嘘の呼び出しを受けて、いきなり不意打ちで魔法を撃たれたんです。防御して耐えていましたが、いよいよ耐えられなくなって反撃しただけです」
私は事実を伝えようとした。アルフレッド王子に対してではなく、後ろで見ている者たちに向けて。
話は聞いてくれたが、彼らの反応は気まずそうだった。きっと彼らは隠れて様子を見ていたはずなのに。タイミングよく最後の部分だけ見ていたなんて、ありえない。
誰か一人でも、私の味方になってくれないかと願って語ってみたけれど、助け舟を出してくれる人は一人も居ない。やはり、王子の権力に怯えているのね。そんな彼らに失望を感じずにはいられなかった。
これは困ったことになってしまった。一人で来てしまったのは失敗だったわ。
「この女を捕まえるんだ。ヴァネッサをイジメた罪を償わせる」
「だから、私はイジメていませんよ」
「うるさい! この目でしっかりと見たんだ。言い逃れは出来ないぞ!」
アルフレッド王子の指示を受けて、後ろの者たちは顔を見合わせる。どうするべきか、迷いがあった。
「さっさとしろッ!」
部下の頭を叩いて、動くように命令するアルフレッド王子。イラつきを他人へぶつけるように、過剰な暴力を振るう。本当に、彼は変わってしまったのね。
それから、ゆっくりと動き出す彼ら。嫌そうな雰囲気はあるけれど、王子の命令に逆らえないようだ。
いっそのこと、彼らを魔法で一掃してしまおうか。そうして、師匠と一緒に国外へ逃げるのもいいかもしれない。そこまで考えたけれど、私はその考えを止めておいた。
もしそんなことをすれば、私はヴァネッサやアルフレッド王子と同じようになってしまう気がして。彼らのようにはなりたくない。それに、家族に迷惑をかけるのも、やっぱり嫌だわ。
このまま捕まって、毅然とした態度でいるしかないのかもしれない。
覚悟を決めた私を見て、アルフレッド王子がニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。本当に、もう。
「待て」
その時、突然、別の誰かの声が広場に響き渡った。
「彼女を拘束するのは、止めてもらおうか」
聞き覚えのある声。そう、エドガー王子の声だ。
振り返ると、彼がこちらに向かって歩いてくる。そして、彼の周りに大勢の人たちが付き添っている。武装した兵士の姿もある。アルフレッド王子が連れている人数よりも多い。
まるで魔法のように、なんの音も立てずに現れたエドガー王子たち。その出現に、アルフレッド王子や彼の部下たちは驚いて、動きを止めた。
彼が来てくれると予感はあったけれど、本当に来てくれるなんて。彼の姿を見て、私の気持ちは楽になっていく。きっと、エドガー様に任せたら大丈夫。
「エドガー! 邪魔をするなッ!」
アルフレッド王子がエドガー王子の姿を見て怒りの声を上げる。その顔は、とても動揺して焦っている。
「無駄ですよ、兄上」
それを冷静に受け止めるエドガー王子。落ち着いた佇まいからは、威厳さえ感じられた。
こうして、王族二人が広場で向かい合ったのだった。
興奮した声で、アルフレッド王子が私を非難する。しかし、私は毅然とした態度で反論した。
「違います。私は嘘の呼び出しを受けて、いきなり不意打ちで魔法を撃たれたんです。防御して耐えていましたが、いよいよ耐えられなくなって反撃しただけです」
私は事実を伝えようとした。アルフレッド王子に対してではなく、後ろで見ている者たちに向けて。
話は聞いてくれたが、彼らの反応は気まずそうだった。きっと彼らは隠れて様子を見ていたはずなのに。タイミングよく最後の部分だけ見ていたなんて、ありえない。
誰か一人でも、私の味方になってくれないかと願って語ってみたけれど、助け舟を出してくれる人は一人も居ない。やはり、王子の権力に怯えているのね。そんな彼らに失望を感じずにはいられなかった。
これは困ったことになってしまった。一人で来てしまったのは失敗だったわ。
「この女を捕まえるんだ。ヴァネッサをイジメた罪を償わせる」
「だから、私はイジメていませんよ」
「うるさい! この目でしっかりと見たんだ。言い逃れは出来ないぞ!」
アルフレッド王子の指示を受けて、後ろの者たちは顔を見合わせる。どうするべきか、迷いがあった。
「さっさとしろッ!」
部下の頭を叩いて、動くように命令するアルフレッド王子。イラつきを他人へぶつけるように、過剰な暴力を振るう。本当に、彼は変わってしまったのね。
それから、ゆっくりと動き出す彼ら。嫌そうな雰囲気はあるけれど、王子の命令に逆らえないようだ。
いっそのこと、彼らを魔法で一掃してしまおうか。そうして、師匠と一緒に国外へ逃げるのもいいかもしれない。そこまで考えたけれど、私はその考えを止めておいた。
もしそんなことをすれば、私はヴァネッサやアルフレッド王子と同じようになってしまう気がして。彼らのようにはなりたくない。それに、家族に迷惑をかけるのも、やっぱり嫌だわ。
このまま捕まって、毅然とした態度でいるしかないのかもしれない。
覚悟を決めた私を見て、アルフレッド王子がニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。本当に、もう。
「待て」
その時、突然、別の誰かの声が広場に響き渡った。
「彼女を拘束するのは、止めてもらおうか」
聞き覚えのある声。そう、エドガー王子の声だ。
振り返ると、彼がこちらに向かって歩いてくる。そして、彼の周りに大勢の人たちが付き添っている。武装した兵士の姿もある。アルフレッド王子が連れている人数よりも多い。
まるで魔法のように、なんの音も立てずに現れたエドガー王子たち。その出現に、アルフレッド王子や彼の部下たちは驚いて、動きを止めた。
彼が来てくれると予感はあったけれど、本当に来てくれるなんて。彼の姿を見て、私の気持ちは楽になっていく。きっと、エドガー様に任せたら大丈夫。
「エドガー! 邪魔をするなッ!」
アルフレッド王子がエドガー王子の姿を見て怒りの声を上げる。その顔は、とても動揺して焦っている。
「無駄ですよ、兄上」
それを冷静に受け止めるエドガー王子。落ち着いた佇まいからは、威厳さえ感じられた。
こうして、王族二人が広場で向かい合ったのだった。
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