『お前よりも好きな娘がいる』と婚約を破棄させられた令嬢は、最強の魔法使いだった~捨てた王子と解放した令嬢の結末~

キョウキョウ

文字の大きさ
29 / 36

第29話 事件解決

しおりを挟む
 向かい合うアルフレッド王子とエドガー王子。その間には、見えない緊張感が張り詰めていた。

「邪魔だ。どけ、エドガー」

 そう言ってエドガー王子を睨むアルフレッド王子。その眼差しは弟を蔑むようで、敵意に満ちていた。

「退くわけにはいきません、兄上」

 それに対し、エドガー王子は冷静に答える。どっしりとした佇まいで、動じる様子はない。

「俺は、その女に用があるんだ。さっさと退け!」

 アルフレッド王子は、私を指さしながら言った。まるで物のように扱うその態度に、思わず眉をひそめてしまう。

「残念ながら、それは出来ません」

 きっぱりと言い切るエドガー王子。その言葉には、揺るぎない意志が感じられた。

「なぜだ! そいつは、ヴァネッサをイジメていたんだ! その罪を償わせないと」

 感情を爆発させるアルフレッド王子。その声に、恨みと憎しみに染まっている。私は彼女をイジメていないんだけど。彼は、本気でそう思っているみたい。

「……はぁ」

 そんなアルフレッド王子を見て、エドガー王子はため息を漏らした。それは、兄の幼稚さに呆れたような、失望したようなため息だった。

「さぁ、退け!」
「……」

 しばらく兄を見つめていたエドガー王子だったが、やがて背後にいる兵士たちに向かって命令を下した。

「アルフレッド王子を拘束してください。そこに倒れている女性も一緒に連行します」

 その言葉は、穏やかながらも強い口調で発せられた。まるで、絶対的な権力者のように。

「はぁ? 何を言っている。そんなこと許されるはずが――」
「兄上は、やりすぎました」

 動揺を隠せないアルフレッド王子に、エドガー王子が言い放つ。その眼差しは真剣そのもので、笑みの欠片もない。

「な、なにを言っている!? やめろっ! 離せっ!」

 取り押さえられながら、なおも抵抗するアルフレッド王子。必死に魔法を発動させようと集中するが、兵士たちの速さには敵わない。あっという間に両手を抑えられ、身動きが取れなくなってしまった。

 その間、アルフレッド王子の仲間たちは、ただ呆然と立ち尽くしていた。誰一人として、王子を助けようとはしない。おそらく、エドガー王子の威圧感に怖気づいているのだろう。

「俺を誰だと思っている! 俺は、王子だぞ!」

 捕らわれの身となっても、なお威勢のいい台詞を吐くアルフレッド王子。その声は、哀れにすら聞こえた。

「無視していいです。扱いは、ならず者を連行するのと同じ感覚でいいですよ」

 しかし、エドガー王子はそれを一蹴する。まるで、目の前にいるのが王子ではなく、ただの犯罪者であるかのように扱った。

「な、ならず者だと!? 俺を、そんな扱いなんて許すわけ――」

 騒ぎ続けるアルフレッド王子は、兵士たちに引きずられるようにして連れて行かれた。それを見送るエドガー王子の表情は、一切感情を漏らさない無表情だった。

 やがて、広場は静寂に包まれた。アルフレッド王子に従っていた仲間たちも、彼に続いて連行されていく。ただし、仲間たちの方は素直に言うことを聞いているようで、乱暴に扱われる様子はない。

 広場に残ったのは、私とエドガー王子、それと彼の数名の部下だけ。

 そんな中、エドガー王子が私に歩み寄ってきた。その優しげな表情に、私の緊張がほぐれていくのを感じる。

「助けに来るのが遅くなって、申し訳ない」

 そう言って、エドガー王子は頭を下げた。王子ともあろう人が、公爵家の令嬢とはいえ、私に頭を下げるなんて。なんだか、申し訳ない気持ちになってしまう。

「エドガー様! 頭を上げてください! 私は大丈夫です。怪我していないので」

 慌てて答える私。確かに、遅れはしたものの、エドガー王子のおかげで難を逃れられた。十分に助かった。感謝の気持ちでいっぱいだ。

「実は、あの2人には監視をつけていた。何か問題を起こしたらすぐ連絡が来るようにしていたんだ」

 そう打ち明けるエドガー王子。私は驚きを隠せない。

「そうだったんですか」

 どうやら、彼らは何か問題を起こすかもしれないと監視されていたようだ。それは知らなかった。

 あ、そういえば。思い出したことがあった。ここに来る前の彼女について。

「ここに来るように伝えに来てくれた生徒が居るんです。彼女のことも助けないと」

 そう言って、私はエドガー王子に頼んだ。アルフレッド王子から脅されていたあの子が心配だった。

「大丈夫だ。その子なら、こちらで保護している」

 エドガー王子の言葉に、安堵の息をつく。

「そうなのですか?」
「彼女は、俺にも知らせてくれた。事情を教えてくれて、君が危ないかもしれないと伝えに来てくれたんだ」

 あの子は別れた後、私のためにそこまでしてくれたのね。

「そうだったのですか」

 彼女が無事で本当に良かった。アルフレッド王子に脅されている様子だったので、心配になった。エドガー王子が保護しているというのなら、もう安心でしょう。

「彼女にも今回の件を証言してもらうつもりだ。だから、何も問題ないと思う」
「それを聞いて、安心しました」

 力強く宣言するエドガー王子。私が広場に来るキッカケになった子。でも、犯人の一人には含まないよう考慮してもらえそうなので、良かった。

「今回の件は、こちらで処理する。もしかしたら事情を聞きに行くかもしれないから、その時は正直に証言してくれ」
「わかりました。後は、お願いします」

 私は頷いた。事件のいきさつは、隅々まで話すつもりだ。真実を、ありのままに。

「それから、おそらく兄上とヴァネッサの嫌がらせは今後ないと思う。それも安心してくれ」
「はい」

 エドガー王子の言葉を聞いて、思わず笑顔になってしまう。彼らの嫌がらせの日々が終わり、平和な学園生活が送れそうだ。

 こうして、広場での魔法襲撃事件は幕を閉じた。事件の後に私の心に残ったのは、ほっとした安堵感と、エドガー王子への感謝の気持ちだけ。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました

天宮有
恋愛
「貴様のような醜い者とは婚約を破棄する!」  婚約者バハムスにそんなことを言われて、侯爵令嬢の私ルーミエは唖然としていた。  婚約が決まった際に、バハムスは「お前の見た目は弱々しい。なんとかしろ」と私に言っていた。  私は独自に作成した魔法により太ることで解決したのに、その後バハムスは婚約破棄を言い渡してくる。  もう太る魔法を使い続ける必要はないと考えた私は――魔法を解くことにしていた。

愛さえあれば他には何も要らない? 貴方の新しい婚約者は、そう思ってはいないみたいですよ?

柚木ゆず
恋愛
※12月17日、本編が完結いたしました。明日18日より、番外編を投稿させていただきます。  真に愛すべき人と出逢い、興味がなくなった。そんな理由で私は一方的に、ロズオルヤ伯爵家のジル様から婚約を解消されました。  そうして私達の関係はなくなり、そのためウチが行っていたロズオルヤ家への金銭的な支援が止まることとなって―― 「支援がなくなれば、現在のような裕福な暮らしが出来なくなってしまう――リリアンに愛想を尽かされると、考えたんだろう」 「確かにもう高価なものを贈れなくなってしまうが、問題はない。リリアンは俺からの愛さえあればいいと思ってくれている清らかな人なのだからな!」  ――そうすればジル様はまるでウチが嫌がらせをしているかのように語り、私やお父様をたっぷり嗤って去られたのでした。  そう、なのですね。貴方様は、何もご存じないのですね。  ジル様が絶賛されているその方は、実は――

虐げられ令嬢の武器は、完璧すぎる記憶力でした~婚約者の嘘も家の不正も、全部覚えてます~

法華
恋愛
侯爵令嬢のサラは、家では継母と異母姉に虐げられ、唯一の希望である婚約者のハイルからも冷たくあしらわれていた。そんなある日、彼が姉と密通し、「地味で退屈なサラを追い出す」と画策しているのを知ってしまう。全てを失った彼女に残されたのは、一度見聞きした事を決して忘れない"完璧な記憶力"だけ。 ――あなたの嘘、家の不正、過去の失言。さあ、私の記憶が、あなたの罪を一つ残らず暴き出します。

婚約破棄からの復讐~私を捨てたことを後悔してください

satomi
恋愛
私、公爵令嬢のフィオナ=バークレイはアールディクス王国の第2王子、ルード様と婚約をしていましたが、かなりの大規模な夜会で婚約破棄を宣言されました。ルード様の母君(ご実家?)が切望しての婚約だったはずですが?その夜会で、私はキョウディッシュ王国の王太子殿下から婚約を打診されました。 私としては、婚約を破棄された時点でキズモノとなったわけで、隣国王太子殿下からの婚約話は魅力的です。さらに、王太子殿下は私がルード殿下に復讐する手助けをしてくれるようで…

妹に簡単になびいたあなたが、今更私に必要だと思いますか?

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるルーティアは、ある時夫の不貞を知ることになった。 彼はルーティアの妹に誘惑されて関係を持っていたのだ。 さらに夫は、ルーティアの身の周りで起きたある事件に関わっていた。それを知ったルーティアは、真実を白日の下に晒して夫を裁くことを決意する。 結果として、ルーティアは夫と離婚することになった。 彼は罪を裁かれるのを恐れて逃げ出したが、それでもなんとかルーティアは平和な暮らしを手に入れることができていた。 しかしある時、夫は帰ってきた。ルーティアに愛を囁き、やり直そうという夫に対して彼女は告げる。 「妹に簡単になびいたあなたが、今更私に必要だと思いますか?」

「仕方ないから君で妥協する」なんて言う婚約者は、こちらの方から願い下げです。

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるマルティアは、父親同士が懇意にしている伯爵令息バルクルと婚約することになった。 幼少期の頃から二人には付き合いがあったが、マルティアは彼のことを快く思っていなかった。ある時からバルクルは高慢な性格になり、自身のことを見下す発言をするようになったからだ。 「まあ色々と思う所はあるが、仕方ないから君で妥協するとしよう」 「……はい?」 「僕に相応しい相手とは言い難いが、及第点くらいはあげても構わない。光栄に思うのだな」 婚約者となったバルクルからかけられた言葉に、マルティアは自身の婚約が良いものではないことを確信することになった。 彼女は婚約の破談を進言するとバルクルに啖呵を切り、彼の前から立ち去ることにした。 しばらくして、社交界にはある噂が流れ始める。それはマルティアが身勝手な理由で、バルクルとの婚約を破棄したというものだった。 父親と破談の話を進めようとしていたマルティアにとって、それは予想外のものであった。その噂の発端がバルクルであることを知り、彼女はさらに驚くことになる。 そんなマルティアに手を差し伸べたのは、ひょんなことから知り合った公爵家の令息ラウエルであった。 彼の介入により、マルティアの立場は逆転することになる。バルクルが行っていたことが、白日の元に晒されることになったのだ。

婚約破棄が、実はドッキリだった? わかりました。それなら、今からそれを本当にしましょう。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるエルフィリナは、自己中心的なルグファドという侯爵令息と婚約していた。 ある日、彼女は彼から婚約破棄を告げられる。突然のことに驚くエルフィリナだったが、その日は急用ができたため帰らざるを得ず、結局まともにそのことについて議論することはできなかった。 婚約破棄されて家に戻ったエルフィリナは、幼馴染の公爵令息ソルガードと出会った。 彼女は、とある事情から婚約破棄されたことを彼に告げることになった。すると、ソルガードはエルフィリナに婚約して欲しいと言ってきた。なんでも、彼は幼少期から彼女に思いを寄せていたらしいのだ。 突然のことに驚くエルフィリナだったが、彼の誠実な人となりはよく知っていたため、快くその婚約を受け入れることにした。 しかし、そんなエルフィリナの元にルグファドがやって来た。 そこで、彼は自分が言った婚約破棄が実はドッキリであると言い出した。そのため、自分とエルフィリナの婚約はまだ続いていると主張したのだ。 当然、エルフィリナもソルガードもそんな彼の言葉を素直に受け止められなかった。 エルフィリナは、ドッキリだった婚約破棄を本当のことにするのだった。

私は真実の愛を見つけたからと離婚されましたが、事業を起こしたので私の方が上手です

satomi
恋愛
私の名前はスロート=サーティ。これでも公爵令嬢です。結婚相手に「真実の愛を見つけた」と離婚宣告されたけど、私には興味ないもんね。旦那、元かな?にしがみつく平民女なんか。それより、慰謝料はともかくとして私が手掛けてる事業を一つも渡さないってどういうこと?!ケチにもほどがあるわよ。どうなっても知らないんだから!

処理中です...