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しおりを挟む(パラダイス再び……!)
魔法具を売っているお店は多数立ち並んでいるが、ここはその中でも最大手。
広い店内には所狭しと色々なデザイン、大きさ、種類の魔法具が並べられている。
魔法具だけではなく、魔法陣を書くための紙や魔法に関する書物などもたくさん扱っているようだ。
しかもここはオーダーメイドも承っているらしく、自分の手に馴染むように一からデザインしてくれるらしい。
色も魔法具に付ける石、魔法石の色も自由自在。
多少値段は張るが、一度は作ってみたいなあオーダーメイド。
まあ魔法石だけなら既製品でも交換出来るけど。
ちなみに魔法石だけは購入する時に改めて入れてもらう仕組みになっている。
どの石を付けるのかわからないというのもあるし、不埒な考えの輩を防止する為でもある。
「オーダーメイドに興味あるの?」
「もちろん、一度は作ってみたいですよねえ」
「エルの魔法具はオーダーメイドじゃないの?」
「婚約が決まった時に貰ったものだからわからないんです」
「そっか、王子様とお揃いなんだっけ?」
「不本意ながら」
この機会に変えたいけど、やっぱり手に馴染んだものは手放し難い。
悩むなあ、でも新しいのも欲しいなあ。
「別に何個持ってても良いんじゃない?」
「!」
リュイさんに言われてなるほどと思った。
そうだよな?
良く考えたら一つじゃなくても良いじゃないか。
文房具と一緒だ、いくつ持っていても問題はない。
技術もどんどん進歩しているし、今使っているもの以上に手に馴染むものがあるかもしれない。
「まあせっかくだから色々見てみようか」
「はい!」
魔法といえば杖だよなあ。
憧れたなあ魔法学園を舞台にした児童文学のあれ。
あれは飾り気も何もない普通の杖だったけどめちゃくちゃ欲しかったのを覚えてる。
ここにも杖の形をしているものがあるが、どれもキレイな細工がしてあるものばかり。
魔法石が埋め込まれていれば例えそれがどんな形でも魔法具として使えるのだから地味でも問題はないと思うんだけど……まあどちらでも良いか。
「そういえばリュイさんは腕輪のやつでしたよね?」
「うん、竜達の世話をする時に邪魔にならないようにね」
そう言いながら右手に付けた腕輪を見せてくれる。
確かにこれなら邪魔にならないかも。
店内には他にも指輪やイヤリング、ピアスやネックレスなどアクセサリー系のも充実していた。
あああこういうのも好きなんだよなあ。
アクセサリーってガラじゃないけど指輪から放たれる魔法とか最高だな!
握る必要もないし手をかざすだけで良いんだもんなあ。
あ、時計もある。
「何か良いのあった?」
「これカッコイイなあって」
「ほんとだ、カッコイイねえ」
さっきまで見ていたやつを指差す。
真ん中にいくにつれて太くなっている皮のバンド、時計部分はシルバーだろうか、文字盤は白い貝のような素材で出来ている。
シルバーの部分はバンドと連結していて、その連結部に魔法石を模した透明のガラスが嵌められている。
(あ、やばい、これ結構好きだなあ)
時計タイプのものはその他にも色んな種類がある。
時計としても使えるし中々優秀な魔法具だ。
でもリュイさんが使ってるタイプのやつも捨てがたい。
うーん、悩むなあ。
「悩んでるね」
「すっごい悩んでます」
「エルが悩んでるから俺も新しいの欲しくなってきちゃったなあ」
「お、買っちゃいます?」
「とりあえず全部見てからかな。それよりエル、ちゃんと値段も見て悩んだ方が良いんじゃない?」
「あ……」
値段。
デザインに気を取られてすっかり忘れてた。
バカ野郎値段が一番重要じゃないか。
気に入った時計型のものの値段を見ると……
「ご、五万……」
値段はピンからキリまであるとはいえ、これは中々手を出し難いお値段である。
会社員時代だって五万もするもの買うには相当な覚悟が必要だった。
それを学生の今、果たして出せるものか。
否、出せるはずがない。
側近の息子だろって?
舐めるなよ、金銭感覚だけは幼少期からこれでもかと叩き込まれているのだ。
無駄遣いではないが、今使っているものもあるのに新たにこんな金額のものを欲しいと言い出せるはずがない。
「……今回は、やめておきます」
「うん、思ったより高かったんだね」
「かなり」
「意外と高いよねえ。これはまだマシな方じゃない?オーダーメイドだと最低でも十万はかかるって話だし」
「じゅ、十万!?」
ひええ、恐ろしい。
オーダーするとなると一生物だな。
むしろ高すぎて使うの勿体なくて使えないかもしれない。
高いの怖い、でも憧れる。
(……バイトでもしようかな)
気に入った魔法具を買う為のバイトをするのも悪くない。
そう思い、中を一周して大満足のまま店を後にした。
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