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しおりを挟む学園では年に一度、魔法技術と剣術を競う大会がある。
授業の成績によりクラスからそれぞれ五人の代表を決める。
一学年に五つのクラスがあり、それが三学年あるので全部で75名。
剣術と合わせると150名が大会に参加する事になる。
大会は全部で五日間。
予選で半数以上が消え、残りの30名で本戦を争う。
学園でも目玉の大会であり、期間中は学園をあげてのお祭り騒ぎ。
街からも学生達の保護者や関係者、見学の人達など大勢が見学にやって来る。
(文化祭と体育祭を同時開催する感じだな)
最初の一日はそれぞれの予選。
150人もいるからいくつもの闘技場、鍛錬場を使い、時間ごとに一度に行われる。
二日目から本戦はトーナメント形式での試合だ。
三日目も同じく本戦。
四日目に準々決勝、準決勝が行われ、最終日の五日目に魔法技術も剣術も同時に決勝が行われる。
学園内には屋台が溢れ、学生が作った魔法具の販売、竜の背中に乗れる試乗体験など色々な催しが開かれる。
昨年の優勝者は魔法技術がダリア、剣術は卒業してしまった先輩だ。
その時まだ入学したばかりだったというのに優勝してしまうなんてどうなってるんだダリアの奴。
掛け持ちしてたらどっちも優勝してたりして。
ちなみに『エル』は成績がふるわず代表にすら選ばれなかった。
何をしていたかというと、大会中のダリアの補佐に徹していた。
しかし今年は……
「エル、代表決定おめでとう!」
「ありがとう」
なんと、代表に選ばれてしまった。
授業中頑張った甲斐があった。
昔から好きだったんだよなあ、漫画でよくあるなんとか武道会とかなんとかトーナメントとかいうやつ。
少年漫画好きの血が騒ぐよね!
ユーンもわかるのか、自分の事のように翼を大きく広げて喜んでくれている。
キュイキューイ!
「ユーンも喜んでくれるのか?ありがとー!」
キューイ!
冷たい身体をぎゅっと抱き締める。
代表にはダリアも当然選ばれている。
あとの三人はくりくり頭のアルマンドとインテリ眼鏡のリース、そして紅一点真っ赤な髪が素敵なアリス。
この五人がクラスの成績優秀者らしい。
昨年優勝者、準優勝の人物は予選を免除され本戦からの参戦となるのでダリアは予選免除だ。
「デレクとヒースも代表なんだろ?」
「俺達は剣術の方な」
剣術の方はデレク、ヒース、そしてダリアの取り巻き騎士見習いのキット、残り二人はなんとベアトリス嬢といつも一緒の双子のリリーとシシーだ。
意外にも剣術の腕前はかなりのものらしい。
でも確かに良く見たら締まった身体をしている。
「二人で決勝争いしたりして」
「ありえなくはないよな」
「お互い遠慮はいらないしな」
「うわあ、すっごい自信」
「そんな事言って、エルだってもしかしたら優勝争いするかもよ?」
「え?俺?」
そりゃ優勝出来れば嬉しいけれど、ダリアもいるし他にもかなり強い人達がたくさんいる。
猛者ばかりが揃っているのだ、予選を突破出来ても三日目までいけるかどうか。
「エルなら大丈夫だろう」
「……王子、気配を消して後ろに立つの止めてもらえませんかね」
「消したつもりはない」
いつの間にか背後に立っていたダリアにびくりと肩が震える。
何さりげなく肩抱いてるんだよこら。
そっと回された手を摘まんで下ろす。
俺だから良いけどそれ女の子にやったら普通にセクハラだからな。
……いや、ダリア相手なら女の子も喜びそうだな。
ていうか俺なら大丈夫だってどういう事だ。
そう聞きたい俺の視線に気付いたダリアがふわりと微笑む。
おおう、美形の微笑みの破壊力が凄い。
「ここ最近のエルの成績は申し分ない。予選くらいなら余裕で突破するだろう」
「おお、王子のお墨付きなら大丈夫そうだな」
「確かに最近のエルの魔法凄いもんなあ」
口々に褒められると嬉しい。
嘘を言っているようには見えないから本心なのだろう。
「あはっ、みんなにそう言って貰えると嬉しい」
「……ッ」
自分でもだらしないと思うくらいに頬を緩めるとダリアが口元を覆い勢い良く顔を逸らす。
何だよその反応、俺の笑顔は見るに堪えないってことかこのやろう。
「あ、エルの笑顔がクリティカルヒット」
「罪な男だなエル」
「は?」
「余計な事を言うな!」
「うはは!ご乱心だ」
「いやあ、王子といえどもやっぱり普通の男なんすね」
何やら頬を染めているダリアを見てデレクとヒースがくすくすと笑っている。
こいつら本当にここ最近仲良いよな。
デレクとヒースと仲良くなったのは俺が先なのに少し悔しい気がする。
「どうした?変な顔になってるぞ」
「俺の顔は元々変です」
「何を言ってる、ずっと可愛いままだが?」
「いや、うん、ちょっと黙って下さい」
変な顔と言ったり可愛いと言ったり忙しい男だ。
可愛いと言った瞬間二人がニヤニヤしだしたのが妙にむかつく。
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