元魔王の俺が人間と契約したら何故か恋人が出来た件

めがてん

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第3章―契約者たちと

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神の案内で連れて来られた場所は、街の外れにあった、だだっ広い空き地だった。

『はい、では皆さんご注目~。前方に見えますのが~、これから倒していただく【邪魔】になりま~す!』

天満の手の上にある小さな御神体が示した方向には黒い人影のようなものがうじゃうじゃと集まっていた。

「え、何あれ。コ○ンの犯人?」
「どっちかっていうとショ○カーみたいじゃないですか?」

黒い人影を見た的場と上谷がそんなことを言っていた。

「あれが【邪魔】なの?」

天満がそう聞くと、神は「そうだよ~」と言った。

『あれがこの世界に発生した【邪魔】で、君たちを呼ぶまでは倒しようがなかったから、とりあえず空間を歪めて出られないようにして、集められるだけ集めておいたの。ちなみに人外の皆が今住んでる建物は元々この空き地に建ってたんだけどね、人も生き物もあまりいないこの土地が丁度良かったから建物は移して、【邪魔】を転送して集めておく場所にしたんだ!』

成程、だからあの建物は異様にボロかったのか……。

『これからは基本、世界中に発生した【邪魔】をオレが見つけ次第この場所に転送するから、君たちに一日一回ここにきてもらって退治するって感じだね。その方が世界中を移動して【邪魔】退治しなくていいから楽でしょ?』
「まあそうだな」

【邪魔】自体はこの街のみならず、世界中に発生するようだから、いちいち発生した場所に俺たちが移動するよりは、集めておいてもらってその場所で退治した方が楽だ。契約者たちも皆学生だから早々移動できるものでもないしな。

『基本の【邪魔】退治はそれでいいんだけど……問題は、人や生き物にとりついた【邪魔】の処理だね。なるべく【邪魔】は発生したら即この場所に送るようにしてるけど、時折この空間を抜け出して生き物や人にとりつくことがある。三上君をいじめてた男の子みたいにね』
「……」

神のその言葉に、隣に立つ三上がぴくりと反応していた。

『とりついてすぐなら、魔王君がやったみたいに引きずり出して消滅させられるけど、長い事とりついたままだと、【邪魔】と生き物が融合してしまって、退治が難しくなる。完全に融合してしまった場合は……オレも世界にどういう影響を及ぼすかわからないから、【邪魔】がとりついた生き物を見つけた場合は優先して退治してほしい』
「【邪魔】がとりついた生物はどうやって見分けるの?」

結城がそう聞くと、神は「見ればわかるよ」と続けた。

『魔王くんは一度見たからわかるよね?』
「ああ。【邪魔】がとりついてた奴は、黒いオーラのようなものを纏っていた。雰囲気も普段の人間とは違っていたし……見れば確かにわかると思う」
『そういうこと~。でもとりついたばっかはオーラが出ないこともあるから注意ね。だから【邪魔】の気配が近くにあったら、封印具や制御具が反応するようにしたから、それも参考にしてね』

【邪魔】の気配は俺たちの首に巻かれているチョーカーや契約者たちのブレスレットでもわかるのか。それならより見つけやすいだろう。

「それじゃあ、私たちの当分の仕事は……一日一回ここに来て【邪魔】退治と、街で【邪魔】にとりつかれた人や生き物が居ないか確認することになるわけね」
『堕天使ちゃん、そのとおり!』

成程、これなら契約者たちも生活をあまり壊さず俺達の【邪魔】退治に付き合えるだろう。

『それじゃ早速、あそこにいる【邪魔】を退治してもらおうか!契約者の皆、制御具に触れて、【解除】って唱えてみて』

契約者たちが神に言われた通りにすると、俺達の首に巻かれていた【封印具】が光り出した。
この状態は見覚えがある。この前三上と契約したときになった状態だな。

『チョーカーが光っているその状態が、封印が一段階解かれた状態だよ』
「一段階って……まだこれじゃ完璧に封印が解かれたわけじゃないの?」
『元勇者くん、それは契約をしてもらうときに言ったよね。封印は契約している人間との信頼関係の深まりによって段階ごとに解かれていくんだよ。君たちはまだ契約したばっかりだから封印解除は一段階目だよ。封印をさらに解きたければ、契約者の皆ともっと絆を深めてね』
「ああ、そっか……。そういえばそんなこと言ってたね」

神の言葉に、結城は困ったように頬を掻いていた。

『ま、でも君たちなら一段階目でもあそこにいる【邪魔】程度なら倒せると思うよ。それじゃ、退治よろしく!』
「……まあ、力が使えるなら大丈夫でしょう……やるわよ」

天満は溜息を吐きながらも持っていた御神体を的場へ渡し、俺達へそう言った。

「まあ魔王討伐よりは簡単かぁ」
「【邪魔】はどんな味がするんすかね~?」
「狼谷……お前、あれ喰う気か……」

結城が肩を回しながら前に出て、狼谷はじゅるりと涎を垂らした。そしてそんな狼谷を見た新田が顔を引き攣らせていた。
特段美味くなさそうだが……良くあれを見て食べたいと思えるな。

「――聖剣エクスカリバー」

そして前に出た結城がそう唱えると、奴の手に聖なる力を纏わせた剣が現れた。……俺を殺した聖剣ではないが、やはり聖なる力が宿ったものはあまり見たくないな……トラウマが刺激されそうだ。

死神の鎌デスサイズ

さらに新田が懐から大鎌を引っ張り出してきたので俺は目を見張った。

「……そんな大きさの鎌、どうやってそこに入ってたんだ?」
「……死神はデスサイズを好きな大きさに変形できるんだ」
「ああ、成程」

そういえばハサミにもしてたし大きさなんて変えられて当然か……。

「準備できた?」
「早くやろうっす!!」

そんな声がして振り向くと、天満の背中には漆黒の翼が、狼谷には頭に狼の耳と尻に尻尾が生えていた。
天満の翼はわかるが……狼谷は封印が解除されるとそういう感じになるのか。

「きゃー!瑠美お姉さまの堕天使モード素敵ー!!」
『あっ、ちょっ……そんな強く握らないで!この御神体簡易版だから壊れちゃう!』

そして天満の姿を見て興奮した的場に強く握られたらしい御神体から、そんな焦った声が聞こえた。
どんだけ強く握ったんだ……?

「それじゃあ陣形は……戦闘スタイル的に、俺と狼谷が前衛で、新田が中距離支援、天満と藤間が後方支援でいいかな?」

結城がそういうのに意義を唱えた奴は居なかった。

そして俺達は【邪魔】を退治すべく奴らへと向かっていった。

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