恋模様

naomikoryo

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矢崎涼①

9:バイト初日③

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倉庫に戻ると、前を歩いていた陽子が、
「まったくも~」
と言いながら大きく息を吐いた。
そして涼の方へ振り返ると、
「訳分かんなくてごめんなさいね。」
「そんな・・・陽子さんの力になれってことですから任せてください。」
胸を張って見せた。
「あっ、うん・・・そうね。そういうことなのよ。」

倉庫の真ん中あたりで周りを見渡すと大きなスチール棚が3つあった。
それぞれ4段になっており天井まで柱は伸びて固定されていた。
そして奥の壁に隣接して棚自体は1.5mぐらいの間隔で置かれていた。
棚には様々な大きさの段ボール箱が置かれていて何かアルファベットと数字が記入されていて、どうやらその順番に置かれているようだ。
一番手前の棚と左外へのドアの間には小さな4人掛けのテーブルとイスが置かれており、そのテーブルのすぐ後ろの壁にホワイトボードが掛かっていた。
どうやら人の出勤管理をしてるようで、1週間分の日が横列で時間で縦になっていて、シフト表と似ているが大きく違うのは1日の横軸の中に『役割』で更に分けられていた。
この『役割』は4つあり、それぞれ【レジ・受付】【レストルーム】【搬入・搬出】【休憩】となっていた。
これを決めているのは陽子さんであり、自分は基本はフリーでいて何かの時にはどこにでも入れるようにしているということだ。
基本、男子バイトは【搬入・搬出】がメインであり涼もほとんどはこの役割になっている。
この役割の難しいところは、書店内の在庫調整を兼ねているところだそうだ。
本の種別ごとに決められた冊数を補充しておくことが必要であり、しかも売れ行きや世間の評価具合で変化させているようだ。
これは事務室の置いてあるパソコンにレジのシステムが連動されており管理はされているようだが、このパソコンを扱えるのは店長と陽子しかいない。
給与関係などは自宅のパソコンでやっているためこの事務室のパソコンはパートさんでもバイトでも使って構わないのでが、みんな機会は苦手らしく触らないようだ。
また、この倉庫の左奥隅にもPCデスクがあり昔のブラウン管モニターとセットになったパソコン一式が置いてあった。
これはどうやら古いOSで、レジのシステムとはもう連動させられなくなっているということらしい。
(じゃあ、休憩の時にちょっと見てみようかな)
倉庫のテーブルで大まかな仕事と店内の説明が終わると12時近くになっていた。

「もうすぐ最初の休憩さんが戻ってくるから、そうしたら紹介しますね。」
「はい。」
(そんなに難しそうではないけど、とりあえず失敗しないよう最初は確認しながらだな。)
「あと、食事支給についてですが、この専用食券をお渡ししておきます。」
渡された食券をパラパラと中を見てみると、表は『三上書店食券』と印刷されハンコが押してあり、裏は『矢崎涼』と印刷されてあった。
1枚5cmx3cmぐらいのそれが5枚つづりになっていた。
「レジに行かないでお弁当コーナーの方にこれと選んだお弁当を渡せばそれで済んじゃうから。」
「便利ですね!」
これは陽子のアイデアで、これによって弁当を買うための時間も短縮できてみんな喜んでいる。
「食事補助は500円までなので、お弁当コーナーの人が実際に買ったお弁当の金額を裏に記入して、あとで給料時に相殺します。」
「そうですか。」
「逆に安いお弁当を買ってもその分を給料に追加はしません。ただ、食事補助が20回分あったとすると20かける500円で10,000円になります。そのうち10回が400円のお弁当で10回が600円のお弁当だった場合は丁度10,000円になるので相殺はありません。」
「最後に実際に買ったお弁当の金額を全部足して補助分と相殺するというわけですね。」
「そうです!」
「すごく優しい仕組みですね。体調によって食べる量が変わったりしますからね。」
「そう、そう思うでしょ?」
陽子がパッと目を見開いて言った。
(うわ~可愛いな~、って年上なんだから可愛いって言っちゃまずいよな。気を付けなきゃ)
涼は小さい頃から割と思ったことを口に出してしまうことが多かった。
かといって、女性に対してこんな風に思ったことはあまり記憶にないので、とにかく気を付けなくては思った。

それから午後2時までの間に今日のパートさん全員と挨拶も終わり、実際に書店内の棚への補充やパソコンでの在庫確認などを教わった。
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