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矢崎涼①
13:バイト初日終了
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午後9時
結局書店営業は時間通り行ったが陽子の指示でその後の準備については翌朝でよいということになった。
みんな帰り支度を済ませ、親の迎えで帰る者と陽子さんが送っていく者とに分かれた。
最初は歩いて帰れるからと断ってはみたものの、40cmぐらい積もっている周りの田んぼを見て、素直に送ってもらうことにした。
(このみちゃんはお迎えなのか)
書店前でこちらに手を振っている姿を見て手を振りかえすと、なにやら物凄いベンツがこのみちゃんの前に停まり、運転していた人が降りて後ろのドアを開けてそこに乗り込んでいった。
(はっ??)
びっくりしていると、
「このみは木下病院の院長の娘さんなのよ。」
と涼を呼びに来た陽子が言った。
「そうなんですか。」
と言いながら、陽子の方に振り返り、
「すいません送ってもらうなんて。」
「いいのよ、危ないからね。先に横山君の家の方に回るけど、いい?」
「時間は全然大丈夫ですから。」
「じゃあ、二人とも乗って。」
と言われ、近くの都立国立高校3年生の横山健二と一緒に後ろの席に乗り込んだ。
20分後、駅からさらに先に行ったところで車は止まった。
隣の横山に一言二言声をかけてみたが会話は続かなかった。
「横山君、人見知りだからね。」
陽子さんが言って、それっきり10分くらい無言だった。
「じゃあ、また明日よろしくね。」
「はい、ありがとうございました。」
とだけ陽子に言って横山は車を降りた。
(確かにこのみちゃんの言うように真面目な感じでろくに喋らない子だな)
「じゃあ、次は矢崎君の所ね。どの辺りになるの?」
「え~と、駅からメガマートに向かう途中の今宵川沿いで・・・」
「コインランドリーの近く?」
「そ、そうですね。すぐ近くですね。そこで大丈夫です。」
「わかったわ。」
と言い、車が走り出した。
「どう?書店での仕事は?」
「今日はお客さんが少なかったらしいので何とも言えませんが、おおまかな事は分かりました。」
「そう。・・・じゃああとは慣れてもらうだけね。」
「そうですね。」
・・・
少し沈黙が流れて、
「このみとは仲良くなったのね。」
ボソッと言った。
「はい?・・・あっ、このみちゃん。明るくて良い子ですね。」
「そうなの。あの子は普段はなんかボーっとした感じなんだけど、仕事はきちんとしてるのよ。」
「そうですね!初めはこんな言葉づかいで、と思ったんですけど、お客さん来たらちゃんと応対してて、・・・びっくりしました。」
「去年の春に、本が好きだからって面接に来たんだけどこんな感じで接客されても、って思ったんだけど、いざやらせてみたら違ったのよ。」
「そうなんですか?」
「何をやらせてもすぐ覚えて、・・・まだ二年目なのに新人教育も任せちゃってるくらいなの。」
「それでですか。」
「そう。分かり易かったでしょ?」
「そうですね。確かに。」
ちょっと沈黙が流れて、
「あんな感じの子が矢崎君のタイプなの?」
「えっ?」
(何を言い出したんだろう)
「う~ん、今まで彼女なんていたことなかったから何とも言えませんが、」
(ど~する?とりあえず触りだけ言っておくか?)
「年上でしっかりとして、それでいて可愛い人がいいです。」
(言ってしまった!!)
「そう、・・・」
「まだまだ若いから、恋なんてこれからいっぱい出来るんでしょうね。」
(この人は鈍感なのかもしれないな~?)
鈍感な涼は思った。
結局書店営業は時間通り行ったが陽子の指示でその後の準備については翌朝でよいということになった。
みんな帰り支度を済ませ、親の迎えで帰る者と陽子さんが送っていく者とに分かれた。
最初は歩いて帰れるからと断ってはみたものの、40cmぐらい積もっている周りの田んぼを見て、素直に送ってもらうことにした。
(このみちゃんはお迎えなのか)
書店前でこちらに手を振っている姿を見て手を振りかえすと、なにやら物凄いベンツがこのみちゃんの前に停まり、運転していた人が降りて後ろのドアを開けてそこに乗り込んでいった。
(はっ??)
びっくりしていると、
「このみは木下病院の院長の娘さんなのよ。」
と涼を呼びに来た陽子が言った。
「そうなんですか。」
と言いながら、陽子の方に振り返り、
「すいません送ってもらうなんて。」
「いいのよ、危ないからね。先に横山君の家の方に回るけど、いい?」
「時間は全然大丈夫ですから。」
「じゃあ、二人とも乗って。」
と言われ、近くの都立国立高校3年生の横山健二と一緒に後ろの席に乗り込んだ。
20分後、駅からさらに先に行ったところで車は止まった。
隣の横山に一言二言声をかけてみたが会話は続かなかった。
「横山君、人見知りだからね。」
陽子さんが言って、それっきり10分くらい無言だった。
「じゃあ、また明日よろしくね。」
「はい、ありがとうございました。」
とだけ陽子に言って横山は車を降りた。
(確かにこのみちゃんの言うように真面目な感じでろくに喋らない子だな)
「じゃあ、次は矢崎君の所ね。どの辺りになるの?」
「え~と、駅からメガマートに向かう途中の今宵川沿いで・・・」
「コインランドリーの近く?」
「そ、そうですね。すぐ近くですね。そこで大丈夫です。」
「わかったわ。」
と言い、車が走り出した。
「どう?書店での仕事は?」
「今日はお客さんが少なかったらしいので何とも言えませんが、おおまかな事は分かりました。」
「そう。・・・じゃああとは慣れてもらうだけね。」
「そうですね。」
・・・
少し沈黙が流れて、
「このみとは仲良くなったのね。」
ボソッと言った。
「はい?・・・あっ、このみちゃん。明るくて良い子ですね。」
「そうなの。あの子は普段はなんかボーっとした感じなんだけど、仕事はきちんとしてるのよ。」
「そうですね!初めはこんな言葉づかいで、と思ったんですけど、お客さん来たらちゃんと応対してて、・・・びっくりしました。」
「去年の春に、本が好きだからって面接に来たんだけどこんな感じで接客されても、って思ったんだけど、いざやらせてみたら違ったのよ。」
「そうなんですか?」
「何をやらせてもすぐ覚えて、・・・まだ二年目なのに新人教育も任せちゃってるくらいなの。」
「それでですか。」
「そう。分かり易かったでしょ?」
「そうですね。確かに。」
ちょっと沈黙が流れて、
「あんな感じの子が矢崎君のタイプなの?」
「えっ?」
(何を言い出したんだろう)
「う~ん、今まで彼女なんていたことなかったから何とも言えませんが、」
(ど~する?とりあえず触りだけ言っておくか?)
「年上でしっかりとして、それでいて可愛い人がいいです。」
(言ってしまった!!)
「そう、・・・」
「まだまだ若いから、恋なんてこれからいっぱい出来るんでしょうね。」
(この人は鈍感なのかもしれないな~?)
鈍感な涼は思った。
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